い い 表 現 を 見 つ け よ う 〜読書の時間より〜
岡 嶋 大 輔

 私の学級は、読書好きな子どもが多い。朝の読書の時間や、毎週木曜日の図書室利用の時間をみんな楽しみにしている。そして、黙々と本の世界に浸っている。
 ある日、ある子どものこんな日記を学級に紹介したことがある。親戚の人が赤ちゃんを連れてきたときの様子で、その赤ちゃんのこと。
『ほっぺたが、イチゴ大福のようにプクーッとしていました。』
 この、『イチゴ大福のように』がとてもいいね、と私の感想を言うと、その子は、
「その言葉は読んだ本の中に出てきて、それを覚えていただけのこと。」
と、照れを隠しながら言った。
「読んだ本のいい表現を自分の文章に生かすと、どんどんいい文章が書けるようになるね。」
と、私は付け加え、一度いい表現を見つけるという視点で本を読んでみようと投げかけ、授業をすることにした。

『しぼんだ風船のようにしょぼんとしました。』
『松井さんには、あたたかく聞こえました。』
『自転車がさけびました。』
と、次々に、自分がいいと思う表現を見つけてくる。
「先生、なんだか、言葉の宝さがしをしているみたいでおもしろいね。」
など、何人かの子どもが感想を言ってきた。探すという活動自体も楽しいが、それ以上に、プロの描く飾った言葉の世界に触れるという知的な楽しさを感じているようである。
 そして、みんなの見つけたいい表現をいくつかピックアップし、その良さを話し合った。その中で、
『まるでもぎたての青リンゴみたいに、みずみずしくて、すがすがしい朝』
という表現が、人気を集めた。

 それではということで、「朝」「昼」「夕方」「夜」のいずれかを飾った言葉で表現してみることを1週間後までの宿題にした。
『少し寒くて、お日さまの日差しが語りかけてくるような朝』
『もぎたてのオレンジをしぼって流したような夕方』
『犬が無気味にほえる、ふるえそうな気持ち悪い夜』
 それぞれ、その日その時の自分の感情や気持ちを重ね合わせて表現しているように思える。発表しながら、その時の様子も話せたら話していくようにした。
 感じることの豊かなこの時期、それを言葉で表現することに、読書は大きく役に立っているのだとあらためて感じる今日この頃である。  
(甲賀町立佐山小)