「 木 竜 う る し 」 の 録 画 を 通 し て
伊 庭 郁 夫

 私は、学生時代演劇部に籍を置いていたことがある。人前で演じるまでの反復練習は3カ月に及んだ。スタッフとキャストが一体となっての総合芸術の創造には、言葉で言い尽くせないほどの感動と充足感があった。
 さて、人形劇「木竜うるし」の学習では、仲間と表現し創造することの楽しさを味わわせたい。そして、ビデオに録画し、自分の姿を客観的に見つめる場を持とうとした。
 人形劇「木竜うるし」は、藤六と権八の人間模様が描かれている。学習の大きな流れは、次の通りである。
 (1) 藤六と権八の性格とその根拠を考える。
 (2) 1の場面と5の場面で性格や考え方の変化はあるか。あるとすれば、どこでか。
 (3) 各班(4、5人)ごとに、学習計画を立て練習に取り組む。
 (4) ビデオに録画し、メッセージカードを書く。

 この学習で配慮したのは、次の4点である。
1.必ず一人ひとりが声を出す出番を作る。
 つまり、二場面以上選ぶことで、藤六と権八が交代するなどの工夫ができる。7班ある中で、二つの班は1から5の場面を全部通した。
2.劇の仕方を工夫する。
 「朗読劇にする」「ペープサートを使った劇にする」など班で選択する。また、ペープサートの場合「各場面ごとに藤六と権八を作る」「手足が動く藤六と権八をペープサートで作る」「木竜を作る」「ふちのそばを描く」「ふちの底を描く」など選択したり共同で作るなどした。
3.ビデオに録画する。
 7班全部をビデオ撮りした。1、2場面を練習した班と3、4、5場面を練習した班を合わせるなどして作品作りをした。時間を見つけて、子どもたちに見せている。
4.メッセージカードを送る。
 発表後に、「工夫していたところ」「気をつけるともっとわかりやすくなるところ」をメッセージカードに記入し相互評価をして、班や個人に送る。
 客観的に自分の声や動きを知ることは、大変重要である。そして、一人がうまくなることで、周りが上達することがよくある。一人の子どもの臨場感あふれる演技で、爆笑が起こったり、相手も本気で会話している雰囲気が伝わってきたりする。発表が終わると思わず拍手が起こる。この高まりあいや認めあいが、劇の大きな魅力である。
(安曇川町立安曇小)