本棚    今どきの教育を考えるヒント
清水義範 著 BK1
講談社 1999.10. 1500円

今どきの教育を考えるヒント
 雑誌「現代」に連載されたエッセイをまとめたもの。
 著者は愛知教育大学卒。「だからといって別に、私が教育について考える義務を負っているわけではない。…しかし、私は…ずっと教育のことを気にかけてきた。」(あとがきから引用。以下も)

「教育とは、動物としての人間を、社会的存在としての人間に形成するすべての作業のことである。それがあるからこそ人間は、文明と文化を持ち得る。だからこそ、人間の文明と文化が気になる者は、教育を気にせずにはいられないのである。」

「なるべく大きな視点で、あわてずゆっくりと教育の原点を考えるようにした。学校教育のことも考えるが、親子関係のことも考え、我々が作りだしているこの社会の問題にまで目配りするよう心がけた。もし我々の教育が今おかしくなっているのだとするなら、それは我々の社会がおかしくなっていることの反映にほかならないと思うからである。」

「教育にとって、何より重要なのは”慈しむ心”であろうと私は思っている。次世代を慈しみ、人間を慈しむことが、教育の根本になければならないと。」

 今、学校にはさまざまな問題がつきつけられている。それらの問題を学校教育だけの狭い視野で考えていてはいけないと気づかされる本である。(常諾真教)