書 き 初 め の 学 習 か ら
北 島 雅 晴

 私は、字を書くことに全くの自信がない。6年生になると、私より字のきれいな子が出てくる。その子をうらやましいと思いながらも、書写の指導がまともにできないことを申し訳なく思っている。
 そんなことを思いながらも、今回の書き初めは、一人ひとり自分で言葉を決めて書くこととした。
 ・今年一年、自分が大切にしたいこと
 ・自分が好きな言葉
といった視点から考える。誰ひとり同じにならないように、自分らしい言葉を選ぶように働きかけておいた。
  塞翁が馬  内柔外剛  七つの海  早寝早起  平常心  判断力
 全員の言葉が出揃ったところで少しだけ話し合いをした。
「この言葉はどんな意味ですか。」
「どうしてこの言葉を選んだのか教えてください。」
「この言葉は少しありふれていると思うけど、どうですか。」
言葉の意味や選んだ理由が答えられなかった時は、もう一度考えてみるように指示した。

 2学期の終わりに、一度練習する時間をとった。今回は一人ひとりが違った文字なので、お手本となるものはない。書写の得意な先生に助けてもらおうか、地域の方にお願いしようかとも考えたが、ここはひとつ自分で書いてみようと決心した。お手本にはならないお手本ではあるが。
「先生は書写が得意ではありませんが、もし希望があればお手本にはならないけど書きます」
と思い切って宣言をした。
「先生、お手本を書いてください。」
「4文字目がうまく入らないのだけど、どうしたらいいですか。」
とたずねに来る子があるたびに、書くことにした。
「先生、上手。」
と、ほめてくれる子もいるので、
「ありがとう。先生の字はへただけど、文字のバランスは参考にできると思う。」
「ここをもう少しこうしたら、ちょっとはよくなったかもしれない。」
とごまかしながら、楽しんで書いた。ただ、参考にならないお手本でも、字配りを考える参考にはなったようである。全体のバランスが整った子も出てきた。

 自分の不得意なこと、自信がないことは避けて通りたいのだが、そうはいかないことも多い。自分の精一杯の力を出してやっていれば、違った子どもの姿も見ることができる。指導はできないけど、たまには同じ土俵でやってみるのも楽しいものである。
(草津市立草津第二小)