ス リ ム 化 と 豊 か さ 〜読者を育てる〜
好 光 幹 雄

作品の良さを語り合おう(白いぼうし)〜交流の中で自分の読みを深めていく学習づくり〜」が、さざなみ国語教室岡嶋さんの提案。読みを豊かにしたり、作品の良さを交流する楽しさに気付いたりしてほしいとの願いからの実践。 焦点を「良さ」に絞りスリム化した学習は全7時間である。
 一次 「白いぼうし」に出会う。
 二次 「白いぼうし」を読み深める。
 三次  学習を生かす。(他の作品を読む)

 作品の良さは三点に絞られている。
 @話の内容や展開の「良さ」
 A登場人物の性格や人柄から感じる「良さ」
 B情景などを描く表現の「良さ」

 提案の意義は二点ある。
 一つは、文学的文章の学習の改善を試みた点である。重箱の隅をつつくような学習や一教材で何でもかんでも指導しようとするブルドーザー的な学習からの脱皮である。スリム化し学習の発展を見通した計画はこれからの文学的文章の指導のあり方を示唆している。
 二つ目は、物語を学習するのではなく、物語で読者を育てようと試みている点である。「白いぼうし」をではなく、「白いぼうし」で作品の「良さ」に気付かせることが、他の作品を読む場合により楽しく作品を読み味わうことができる読者を育てることにつながっているからである。
このように、読者としての子どもの立場に立って、読みの視点をしぼり交流する積み重ねが、より豊かな読者を育てることになる。

 課題や疑問としては、次のようなことが挙げられた。
 今回は作品の「良さ」がテーマであり、更にその「良さ」が三つに絞られていた。この点で、読みを限定しているのではないかとの指摘があった。他にも作品の「良さ」があるのではないか。「良さ」が一つ一つあるのではなく、いろいろな要素が入り混じり重なり合って作品の「良さ」が生まれるのでないか。また、「良さ」に気付くことが深く読むことにどうつながるのか。
 これらの疑問や課題は当然である。しかし、この学習を通して、子ども自身がこのような疑問や課題意識を持ってくれればと願っている。教師が示した「良さ」の三点に子どもの読みを限定しようとするものではなく、こんな「良さ」も発見したよと子どもが呟くような学習でありたい。実際、「色のことは、自分でもう少しこだわって読んでみたい。」「○○ちゃんが色のことを言ってくれて、なるほどと思った。」という子どもの感想は、「良さ」という視点で物語を自覚的に読んでいる姿を示している。深く読むとは、このように今までになかった読みが自覚的に自分の中に広がることではないだろうか。
(大津市立堅田小)