作 品 の 良 さ を 語 り 合 お う
岡 嶋 大 輔

 私の担任している4年生の学級は、読書の好きな子どもが多い。自分だけの読みにとどまらず、自分とは違った友だちの読みに触れて読み方を豊かにしたり、同じ作品について良いと思うところを語り合う楽しさに気付いたりしてほしいと願って今回、『白いぼうし』を扱った。

 まずは、初発の感想を大切にして語り合うことにした。
 ワークシートに書いたメモを見ながらでいいので、事前に決めておいた5人の相手に一人ずつ自分の感想を紹介していくのである。

 はじめは、ワークシートのそのままを言っている子どもが多いが、慣れてくると、共感したり、付け加えたり、受けて答えたり、友だちの感想を紹介したりして、話も少しずつふくらんでくる。
「わたしはな、ふしぎな話やなあと思ってん。ここんところ、女の子が急にいなくなったやんか、はじめ、お化けちゃうかなと思ったけど、読んでいくと、ぱっ とちょうになって外に出たんかなあって思うようになってん。もう一つは…。」
 一対一であるということがそうさせるのか、話し言葉ならぬしゃべり言葉だということがそうさせるのか、自分の思いが語られていく。
「うん、わたしも思った。わたしはな、女の子がちょうちょになって、窓のすきまがあって、そこからにげたんちゃうかなあって思ってん。ほんで、他のちょうに出会って、無事帰ってこれてよかったねえって…略。」

 次の時間に、それぞれがどんなことを語り合ったかを、学級全体の場で出し合った。たくさん出たが、それぞれを次の三つに意味づけ、作品の「良さ」を語っていく視点を示した。
 (1) 話の内容や展開の「良さ」
 (2) 登場人物の性格や人柄から感じる「良さ」
 (3) 情景などを描く表現の「良さ」
 そうして、もう少しこだわって読みたいことを決めて一人で読んでいくことにした。
 女の子がちょうではないかというある子どもは、そう思わせるのはどこかという読みをしていった。
 ある松井さんのしぐさを優しいと感じた子どもは、松井さんの人柄にこだわった読みをしていった。
 色づかいの良さに気付いたある子どもは、色に限らずいい表現ということを頭に置いた読みをしていった。初発の感想から、さらに広い視野で読み深めている。

 そして、作品の「良さ」について語り合った。今度は、同じこだわりを持ったものどうしで語り合うようにした。
「わたしな、夏みかんのかき方でいろいろいい表現っていうのを見つけたんやけど、ここの『こんなににおう』って書いてあるんやけど、『こんなに』におっているっていうことは、すごくにおいがプンプンしているっていうことやし、しんしの人が聞くぐらいやから、においがすごいことがよく分かると思てんけ ど。あと、…。」
 この子は「もぎたて」や「まるで、あたたかい日の光をそのままそめつけたような、見事な色」という表現が、いい表現、きれいな表現であると語っていく。相手の子どもは、つなげて「すっぱい、いいにおいが、風で辺りに広がりました。」もいい表現だと語る。
 語り合うには、テーマが必要であるが、そのしぼり方が難しい。狭すぎても広すぎてもいけない。その点、先の三つの視点をテーマにして語り合ったのは適当だった。

 その後、違う文学作品で少人数で語り合った。子どもの中で、読書を楽しむ方法が一つ増えてくれたのなら幸いである。
(甲賀町立佐山小)