「受信者」から「発信者」へ 〜舞鶴「国語教師の会」稗田先生の実践に学ぶ〜
伊 庭 郁 夫

 稗田先生の提案の仕方と内容が大変よかった。提案内容が頭の中のスクリーンに浮かんでくるような鮮明さであった。教材は、大島健甫さんの『手と心で読む』である。

 提案の第一は、「受信者」として、教材と対話しながら読み進める点にある。
 研究発表のテーマ「受け止めよう、大島さんの思い」からもそのことが伺える。大島さんとは、目の不自由な筆者のお名前である。説明文でありながら、会話文があり、語りかけるように書かれている。この教材文の特性を生かし、筆者の思いに寄り添って読むのである。
 指導過程は、大変綿密である。
「文字への思いの事前アンケート」「題名読み」「初発の感想」「対話読み」「まとめ」更に「広げる」活動へ発展していく。その中に、「目で読む」ことと題名の「手と心で読む」という対比が意識化されている。
 この学習を通して、子ども達は筆者の生き方が、別人のように大きく変化したことにも気づく。
 また、対話読みをすることで、「さぐって」と「さわって」の違いに思いをめぐらす場面が印象的である。ポンと簡単に「さわる」のに対し、「さぐる」は点字のある場所そのものから探し求めるという指摘には思わずうなずいてしまった。

 第二は、「発信者」として「ニュースの時間です」という単元と関連させながらの提案である。ここでは、子どものやる気を前面におし出されている。
 「盲導犬ニュース」「手話グループニュース」「車いすニュース」など、グループで効果的に伝える学習である。
 特に「大島さんニュース」は、意気込みがすごい。自分たちで点字の打ち方を覚えて、大島さんに点字の手紙を書こうというものである。分かりにくいといけないので、カセットに声の手紙を録音して一緒に送るという配慮も忘れない。大島さんから返事が来たときの子ども達の喜びが目に浮かんでくるようである。  新しい学習指導要領で「伝え合う力」がキーワードになっている。そのポイントの一つが、伝え合おうという熱い思いであることを教えられた。

 なお、「竹の会」の川端健治先生による指導助言も心に残った。子どもと一緒に学ぼうという姿勢、対話読みの有効性、子どもへの要求の仕方について話があった。
 そして、最後に一言。「すばらしい実践であることにちがいない。」同感である。
(安曇川町立安曇小)