職 員 室 国 語 教 室 「 失 礼 し ま す 」
中 嶋 芳 弘

 「おっちゃん、花すきなんか。」
 入学したばかりの1年生にとって、担任でないわたしたちは「おっちゃん、おばちゃん」である。それが、1学期の終わりともなると、「先生、お花好きですか。」と変わってくる。担任の居ないときにクラスを訪れる先生とわかったから、校内のいろいろな場で声を掛けてきて、人間関係もできてきたから。しかし、この変化の一番の理由は「担任の指導があったから」であろう。

 わたしは、堅苦しいのは苦手である。しかし、相手に敬意を表す話し方や場に応じた挨拶の仕方は教えられる教師でありたいと思う。次は、廊下から挨拶もなく職員室に入ってきた児童とわたしの会話である。
C あんなあ、〇〇ちょうだい。
T 先生に頼まれてきたの?
C うん、そうや。
T えらいな。でも、ちょっとやり直してね。職員室に入ってくるときは?
C あ、そうか。
C 失礼します。
T はい、どうぞ。
C ええっと。〇年〇組の〇〇ですが、担任の〇〇先生から頼まれて来ました。
いくらか教えることもあって、
T はい。何でしょう。
C 〇〇をもらってきてくださいと言われたので来ました。
T ご苦労様ですね、落とさないように持っていってくださいね。
C ありがとうございました。失礼します。

 職員室から離れた教室から、担任に頼まれて〇〇を取りに来た児童に、こまごまと教えるのは何となく気が重い。しかし、その児童の教室を「我が家」とすれば、他の教室や職員室は「よその家」であり「我が家」での学びを表す格好の場、つまり、総合的な学習の場である。国語科や家庭科、道徳、特別活動で学んだことを実際に生かしてみるにはちょうどよい場である。職員室を訪れる児童個々に応じて教えていきたいと思う。
 とはいえ職員室にいるわたしとしては、
「しっかり挨拶ができましたね。」「とても気持ちの良い話し方ですね。」
と、声を掛けてやりたいのが本音であるし、担任に
「〇〇君、とてもはっきりとお話ができてりっぱでした。」
と、伝えたいと思ってもいる。担任をしていた時、丁寧語や敬語の学習の中で、文作りをするだけでなく、マイクを通して疑似校内放送に取り組ませたことや状況設定をして指導役と先生役になって会話をしてみたことを思い出しながら。
(彦根市立旭森小)