本棚    教師のためのからだとことば考
竹内敏晴 著 BK1
ちくま学芸文庫 1999.1. 950円
教師のためのからだとことば考

 「からだ」と「ことば」そして「こころ」が別々のものではないということが、いろいろな具体例を通して平易に説かれている。

 要約して紹介するのが難しいのだが、例えば、「日本人の習性として、会話はほとんど言いっぱなし、すれちがいであり、相手に働きかけてこれを変え、あるいはその過程でみずからが変わってゆくという志向をもたない」「ということは、演劇だけでなく、教育の分野においてこそ最も致命的なことではありますまいか。」「授業中に必死で話をしていても、だれひとり聞いていなくて、だれにも声がつたわっていない」ということが起こる。

 また、こんな例も。草野心平の「春の歌」を音読する前に、30分くらい冬眠の説明をする。子どもたちは机の下にもぐりこんだりしながら、土の中、降り積もる雪、寒い冬から春が来るまでを想像する。その後で読む「ホッ、まぶしいな」「ホッ、うれしいな」の読み声のすばらしさ。

 20年も前に書かれたものであるが、決して古びてはいない。話すことを仕事にしている我々にとって、自分の「話し声」や「話し方」「ことば」を振り返ってみるきっかけになる本である。(常諾真教)