本棚    笑うカイチュウ 〜寄生虫博士奮闘記〜
藤田紘一郎 著 BK1
講談社文庫 1999.3 467円
笑うカイチュウ

 カイチュウもジョウチュウもどうも気味が悪い。私とて好きではない。できるだけ具体的なイメージを描かないようにして読んだが、語られている話はおもしろい。
 例えば、花粉症やアトピー性皮膚炎と寄生虫との関連。「わずか30年ほどの間に、日本人の寄生虫感染率は70%から0.2%に落ち、スギ花粉症の患者が10倍に増えた」。 寄生虫にかかっている人の体内には抗体が作られているので、アレルギー症状が出にくくなるという。
 また、古代遺跡から出た寄生虫卵から、古代人の食生活やトイレの様子がわかるという話。カイチュウは子孫を残すためだけに生きているという話。

 日本の大学から「寄生虫学」の講座がなくなり、寄生虫を知らない医者が誕生している。しかし、一方では有機栽培野菜やペットブーム、グルメ志向や海外旅行の増加から、寄生虫に感染する人は近年増えているという。

 第1章 カイチュウ復活、知らぬ医師
 第2章 寄生虫が語る僕たちへの教訓
 第3章 ペットかわいや寄生虫は怖い
 第4章 家庭より、やはり野におけ野生動物
 第5章 食のタブー忘れたグルメの罠

 医学の話題が中心であるが、寄生虫から見た現代日本の社会批評でもある。(常諾真教)