学 校 へ も ど り ま し た
廣 瀬 久 忠

 学習船「うみのこ」の勤務を解かれ、学校へ戻っている。
 とにかく一日があっという間に終わってしまう。県内の5年生と先生方とのつながりはあったものの、学校を離れていた3年間のギャップが否応なしに襲いかかってくる。まさに「今浦島」である。
 体に染みついていたはずの新学期準備のあれこれが忘却の彼方なのである。しかも学級担任ではなくなった。
 前任の先生から引き継いだ膨大なフロッピーを全て読むことから始まるのだからいくら時間があっても足りない。データを読みながらイメージを立ち上げるが細部まではイメージできない。やおら先生方に聞くことになる。
 特に横に座っておられる教頭先生に聞いてしまう。それでなくても忙しい新学期事務を邪魔していることが心苦しい。さざなみの同人でよく知っていたあのT先生とは言え、顔のこわい教頭先生は近寄りがたい存在である。
 とにかく自分の理解を先生方に確かめながらの毎日である。日付が変わらないうちには家路につくことが、このところの私のささやかな願いである。
 これまでの学校の事情を充分理解できぬまま先生方にお願いすることばかりだから、かなり迷惑をかけている。「かなり」というのは私の感覚。実際は「甚だ」であるのだろう。それが分かっていないのだから始末に負えない。気持ちばかり焦っている自分に気づく。
 先生方もこの頃は、
「廣瀬先生、もうそろそろ……」
と、声をかけてくださる。有り難いことである。

 ただ、うれしくて仕方がないことばかりの毎日である。
 新1年生の教室準備。真新しい机が届き、職員作業で包みを解いたり、高さを調整したりしているとき、思わずにこにこしているのである。教室に机が並んでいるだけでうれしいのである。学校へ戻ってきた喜びが沸々と湧き上がってくる。ここに8日から子どもの笑顔と歓声が満たされるのかと思うとまたにんまりする。
 さて、4月8日。子どもたちの登校は、早い。児童昇降口の前の掲示板に全校のクラス発表が貼り出されているからだろう。走り寄って、自分の名前を探している。歓声を上げる子。きっと仲良しの友だちと一緒のクラスになった子だろう。自分の名前を見つけて「あった」のあと沈黙が続き、やがて少し不安げな顔になる子。仲良しの子と離れたのか。「新しいクラスでよい友だちを作ってね」とその子を見つめた。子どもの夢がふくらむときである。
(石部町立石部南小)