求める心(3)
吉 永 幸 司

 「難しい本を読んでみたい」「何かが起こりそうで楽しい」というのが、教材「宇宙の仲間を求めて」を読んだ子どもの感想である。
 独りよがりではあるが、ポイントとなる部分での立ち止まりという簡便な方法ではあったが、「求める心」を刺激したことは確かである。が、それはがそのまま、読書活動につながるかどうかは疑問である。
 「科学って面白そうだ」「宇宙のことが知りたくなった」という話題に心を動かされたような印象を与える感想もあった。このような意味の感想を述べた子は、星座のことは詳しかったし、文章がしみ込むように心に入り込んでいたようであった。
 「難しそうだが何かを求めていたい」という類の感想と「科学というのはおもしろい」という感想とでは明らかに質が違う。その違いは、その子の持っている知識であり、知りたがる方向である。

 教材のあと、科学を対象にした本の題名と簡単な内容を紹介したコラムがある。どの本が今、読みたいかということで挙手をさせた。結果は次のようになった。
 「生物の消えた島」(田川日出夫)は28人、「黒土がもえた」(大竹三郎)10人、「本はこうして作られる」(アリキ)5人、「新版野尻湖のぞう」(井尻正二)27人、「天気を調べる」(原嶋宏昌)1人、「おきて」(岩合光昭)7人、「赤ちゃんのはなし」(エッツ)5人というような結果になった。
 この結果は明らかに、「宇宙の仲間を求めて」の影響を受けていることが分かる。「いるかいないか分からない宇宙人に手紙を出す」という発想や宇宙人の存在がはっきりしたらどのようなことになるのかという科学的な物の見方が、子どもの心を捉えていったのであろう。(この授業の後、図書館で読書という形態での発展となる)

 子どもたちの読書力からいえば、もう少丁寧な形で、指導計画を立てておかなければ、力として身に付かない甘さは感じる。しかし、「読んでみたい」という思いを引き出すという観点からいえば、あまり深入りをしない方が効果的な場合もある。
 「話し合いの学習だと、知っていることを言い合うだけで面白くない。でも、自分の力でどんどん前へ進める学習は、好きなように出来るから楽しい」という感想を述べた子があった。逆に、「何を読んでいいかわからない」と突き放す子もいた。教室の実態は多様である。前者の子の場合は、求めるものがはっきりしたといえる。後者の場合は、漠然とではあるが、今までと違う読書の世界がありそうということを感じたのが成果であろう。この幅を認めることが大切であると考えている。
(大津市立仰木の里小)