「大造じいさんとガン」 二つの指導過程
森  邦 博

 「自分で見つけた課題を、進んで追究することができるようにする」のねらいで「大造じいさんとガン」の指導を5年生の2学級で行うことになった。
 同じねらいの指導であったが、展開は少し違った。

<A学級での指導過程>
 (1) 全文を読む。
 (2) 一人読みの課題を決める。
 (3) 課題に沿って一人で読み、その成果をまとめる。
 (4) 学習後の感想を書く。

<B学級での指導過程>
 (1) 全文を読む。
 (2) 感想を交流し、学習課題を決め、学習計画をたてる。
 (3) 課題の沿って一人またはグループで読み、その成果をまとめる。
 (4) 課題追究の成果を発表し合う。

 A、B両指導案とも、自分なりの追究課題を持つこと、課題に沿って自分なりの追究過程を記録に残す学習活動を取り入れた指導過程である。
 (1)は二クラスとも全文を読むという指導過程である。が、実際の展開は随分違っていた。(違ってしまったと言い換えた方が正しい)
 A学級での導入で、範読しながら立ち止まり、内容について質問したところ、子どもたちの反応が鈍かった。一部の子どもに発言が偏ってしまい、発表が続かないもどかしさがあった。自分の考え・感想はありながらみんなの前に出すことを逡巡している様子である。
 そこで(2)では、一人一人で自分の読みを追究させる活動の方が適していると判断したのであった。活動の評価も、できるだけ個別的にきめ細かくすることに心がけた。

 一方B学級では、一人の発言に「付け加えて」「少し違って」「それもあるけれども」「○○さんと同じで」「○○さんの意見と○○さんの考えを言い換えると」などと、豊かな話し言葉が多く出された。話し言葉の育ちが見られたのである。
 担任に尋ねると、前単元で「ディベート」をして活発な話し合いの場面があったということである。 この学習体験が次の学習場面で生きていたのである。
 (2)の子どもたちの感想を分類して、学習計画を立てる話し合いの場面でも、子どもたちは活発に話し合った。そして、自分たちで「追究してその成果の発表会をしよう」という計画を立てたのであった。

 学習活動(3)は、両学級とも「自分のみつけた読みの課題を自分なりに追究し、その成果を自分なりの表し方でまとめる」ことになった。両学級とも子どもは真剣に活動したが、B学級の子どもたちは「発表」場面を意識した分、相手へのわかりやすさを意識したまとめになったことを報告しておきたい。
(大津市立青山小)