ブックトークをしよう ―斉藤隆介作品を読もう―
川 那 部 隆 徳

 これまでの話しことば教育は、伝統的に、大勢の前ではっきり自分の考えを述べる独話能力の育成を目標に指導される傾向が強かった。これからは他者との間で、ことばを媒介としてことばを介して情報や、意見、気持ちを分かち合いつつ理解を共有し、目的を達成する能力が求められている。

 「モチモチの木」(3年・光村)は、5つの場面から構成され、筋の展開のおもしろさだけでなく、幻想的な情景描写、臆病でありながら勇気ある行動をやってのけた主人公、語りを生かした特異な表現などに、子どもたちは心ひかれながら読み進めていくと思われる。子どもたちの感想を大切にしながら学習を構成していきたい教材である。
 また、「八郎」「ソメコとオニ」「三コ」「半日村」等、斉藤隆介の他作品を読むことによって、子どもたちなりに感想をもたせ、斉藤文学の〈やさしさ〉にふれさせたいものである。

 本学習では「ブックトークをしよう」という設定で、斉藤隆介の作品を読み、各自の感想、気持ちを交流し、それぞれの登場人物や場面設定の似ているところや異なるところを話し合う過程で、コミュニケーション能力を培うと同時に、斉藤文学の〈やさしさ〉に気づかせたい。

【学習指導計画】
 ○第一次(3時間)
  「モチモチの木」を読み感想をもつ。
 ○第二次(3時間)
  各自の印象に残った場面について、感想を交流し、読書案内形式でまとめる。
 ○第三次(4時間)
  斉藤隆介のいろいろな作品を読み、各自の好きな作品の読書案内を書き、交流する。

 「モチモチの木」を範読した後、単元の導入段階において斉藤隆介の作品を子どもたちに提示したところ、すぐに読んで欲しいという反応を示した。
 そこで、「半日村」の読みきかせをし、教室にコーナーを設けて斉藤隆介作品を自由に読めるようにした。「モチモチの木」の学習に並行して、帯単元的に斉藤隆介の作品を読むことによって、豆太と他の主人公を比較しながら各自の感想を深めていったことがうれしい。これを単なる感想を紹介するだけの話し合いでなく、コミュニケーションとして成立させるための工夫が課題である。
(栗東町立大宝小)