求 め る 心
吉 永 幸 司

第42回日本学生科学賞中学生の部で内閣総理大臣賞の福田さん(中学1年)の研究は「ペグは地面に垂直にうて」であった。「家族と長良川にキャンプに行き、河原に日よけのシートを張ろうとした。説明書では、ペグ(杭)は45度に地面に打つこととなっていたが、一本だけ失敗して垂直に打ち付けてしまった。ところが、綱を張ってみると、45度のペグは抜け、残ったのは、垂直のペグのみ。」と研究の動機が紹介されていた。角度と強度の関係を物理的に解明をするために実験を始めたとも。
 同じく、高校の部で、内閣総理大臣賞を受賞した富山高校自然科学部は「水面に石を投げると、スキップするように跳ねる水切り現象。誰もが経験をした遊びだが、なぜ、形を保てない水面が、堅い床のように石を跳ね返すのか。あるいは、床が石を跳ね返すのとは異なる原理に基づく現象なのか」その仕組みを解明したと紹介していた。
 この二つの受賞の記事を読みながら、この人たちの「なぜだろう」「どうしてだろう」という求める気持ちは、いつ頃から育ったのかに興味をもった。

受賞の対象となったものは、日頃の生活の中で、少し気をつけていれば気が付くことであるし、疑問に持つことである。しかし、その疑問を大切にして、追求をしていこうとしたところに今回の受賞がある。
 「総合的な学習の時間」が求めている子ども像を具体化すれば、この研究をした人たちの姿である。
 「求める心」は「出来ましたか」「わかりましたか」では育たないということを実証しているのではないかという気持ちで科学賞の紹介記事に見入った。

宇宙の仲間を求めて」(5年光村)の指導で、子どもに求める心を育てることを意識して次のような指導を試みた。
(1) 教材文を丁寧に読み、「どうなるのだろう」という気持ちをもたせる。
(2) 「どうなるのだろう」「なぜだろう」に答える文を作り、「そうだったのか」「意外だ」という部分を作り出す。
 例えば、「七夕の彦星として知られているアルタイル星に住んでいるかもしれない『アルタイル星人』に、わたしたち地球人を紹介するためのメッセージを、電波に乗せて送るというものです。」の文であれば、「メッセージ」には何を書いたのかを手がかりに、伝えたいものを予想したり、伝える方法を考えさせたりした。簡単な方法ではあったが、子どもが乗ってきた。「わかりましたか」の問いより興味を持った子どもたち。「なぜだろう」は一つのキーワードである。

(大津市立仰木の里小)