そ の 子 ら し い 絵 本
岡 嶋 大 輔

 2年生2学期の国語学習のしめくくりとして、クラスの子ども一人ひとりが絵本作りに取り組んだ。 それまでに、朝の読書の時間や、週に一度の図書室で過ごす時間などで、絵本に慣れ親しんでいる。その絵本を自分で作るということで、どの子どももやる気満々である。

 私は、子どもの創作の手がかりとして、8種類の紙芝居を用意した。それぞれの紙芝居について、想像が多岐に広がりそうなもの、登場人物が1〜3人程度のもの、登場人物の表情が豊かなもの、といろいろ考えながら4〜5枚の絵を選んだ。
 合計30数枚の紙芝居の絵を見せた後、どの種類の紙芝居の絵を使うか選択するようにした。これもいい、あれもいい、とそれぞれの絵について想像がふくらみ、決めかねて迷う子どももいたが、一人ひとりが気に入った絵を選べた。 その後、コピーした絵をならべかえたり、付け加えたりしながら話のおおまかな流れを考えた。簡単に登場人物の名前や性格、話のあらすじをメモし、題名を考えた。
 題名については、クラス全員の考えたものを一覧表にし、友達の題名のいいところを交流しあった。『○○のはなし』という単純なものから『○○ききいっぱつ』にかえるなど、題名だけで読みたくなるように工夫できるようになった。 

 いよいよ文章を書いていく時。文章の力を鍛えるというよりは、想像したことを楽しく文章にするということに重きを置こうと考えていたので、少々文章が拙くてもうるさく言わないでおこうと考えていた。だが、思った以上に子どもの文章力はすごかった。
「とんとむかしのことじゃった…。」と語り口調で書く子ども。「ポンきちは、にこにことうれしそうに言いました。」と表情豊かに書く子ども。「まあまあ、おいしそうないちごだこと。」と、会話文が自然な感じで書く子ども。絵にないことでも、絵があるかのように書く子ども…。それまでのその子どもの読書の成果がそこにある。

 そして、絵本の中に、それぞれの子どもの生活がどこかにじみ出ている。例えば、
「お母さん、どんぐりがこれだけしか見つけられなかったの。」
「いいのよ、あんまり帰りがおそかったからしんぱいしたわ。ミー子がぶじだったらいいの。」
と、この子どもの家では、このような暖かい会話が飛び交っているのだろう。
 子どもは、今持っている全ての力で自分の全てを表現しているのだと感じられた絵本作りであった。
(甲賀町立佐山小)