子どもと学習計画案を作り出す
西 村 嘉 人

「これは先生から、六年ろ組の皆さんへの『新聞のコラムを読もう』という学習についての提案プリントです。学習のねらいや計画が書いてありますから、読んでこの計画に賛成か反対かの意見を言えるようにしてください。」
子どもたちが怪訝な顔をして私を見つめている。
「計画案ですからこれをやりなさいという指示ではありません。学習する皆さんがこの提案を受けて実行するかどうかを検討してほしいのです。」
と付け加えた。

 インフォームド・コンセント。このようなことは学校でも必要ではないかと考えていた。子どもが学びの主体者であるのだから、教師がどのような意図で学習を計画し、どのような力が付くと見通しを立てているのかを知るのが当然ではないかと考えたのである。
「新聞のコラムは読むだけでもかなり難しいから、コラムを読んで話をするというのはとても無理だとも思います。」
「コラムを読むことは、読む力が付いて良いことだと思いましたが、読む時間をもう少し長くとっていかないと考えられないと思います。」
「教科書の文章より難しいのだから、僕はしんどいと思います。」
「読めない漢字が多くあるし、それに文字も小さくて読みにくいから進んでやろうという気になれないです。」

 子どもたちから厳しい意見が出てくる。それではと、
「これからコラムを読んでみるから、とにかく聞いてみてください。」
と最近集めているコラムから一つを紹介した。さらに、
「みんなの意見を採り入れて再提案をしますから、そのことを含めて検討してください。」
と話した。
 ・読みやすいコラムを選んで学習材料とすること。
 ・教師がプリントして、常用漢字にはルビを打つこと。
 ・コラムを読む時間を長めにとって、話す時間を減らすこと。
 子どもたちが指摘した部分を変更しての提案である。
「それなら、できそうな気がする。」
「新聞のコラムを読むことが国語の力を付けることになるのだから、がんばって取り組みます。」
「先生、いつまでも意見を聞いてないで、やるかやらないか手を挙げて判断したら。」
という意見まで子どもたちから出てきた。結果は全員賛成である。
 これからが大変なのは、覚悟の上である。
(滋賀大学教育学部附属小)