かえるくんは いつ すわったの
好 光 幹 雄

 「お手紙」(アーノルド・ローベル作・絵 みきたく訳 光村2年下)を紙芝居やペープサート劇にしようという活動を通して授業を試みた。指導のポイントは紙芝居や劇をするのに不可避な場面分けをどうするかを考えさせることによって、お話の細部に配慮した読みを楽しみながらしようというもの。
 このお話のはじめに二枚の挿絵がある。しかし、歩いて来たかえるくんがお話のどの個所でがまくんのそばにすわったかは書いていない。これは、紙芝居をするとしたら、どこで絵を差し替えるのか、劇ではどこでかえるくんがすわるのかの動作の問題でもある。
 そこで、かえるくんの会話文に注目させた。

 がまくんは、げんかんの前にすわっていました。
 かえるくんがやってきて、言いました。

 「どうしたんだい、がまがえるくん。きみ、かなしそうだね。」
 「うん、そうなんだ。」
 「今、一日のうちのかなしい時なんだ。つまり、お手紙をまつ時間なんだ。そうなると、いつもぼくは、とてもふしあわせな 気もちになるんだよ。」

 「そりゃ、どいうわけ。」
 「だって、ぼく、お手紙もらったことないんだもの。」

 「一どもかい。」
 「ああ。一ども。」
 「だれも、ぼくに、お手紙なんかくれたことがないんだ。毎日、ぼくのゆうびんうけは、空っぽさ。お手紙をまっているときがかなしいのは、そのためなのさ。」
ふたりとも、かなしい気分で、げんかんの前にこしを下ろしていました。


 かえるくんが腰を下ろしたのは、Aの前、A、AとBの間、B、BとCの間、C、Cの後、の七か所の何れかである。どこでかえるくんがすわるかによって、当然会話文の間の取り方、読む速さも変わってくる。劇をする際に工夫が活かされる箇所でもある。二人の役になり会話文を読みながら動作化することで、会話文と動きにあれこれ思いを巡らす授業ができた。
 正解はないが、グループ毎にその思いを巡らすことで子どもは作品の細部を全体との関わりの中で深く読むことを身に付けていく。「そのときのかえるくんの気持ちは? がまくんの気持ちは?」などと問う必要はどこにもない。

 活動の多様化に目を向け、自主性、興味関心・意欲を大切にした授業は子どもを生き生きとさせる。しかし、何を指導するのかを指導者がきっちりと把握していなければ、それによって育つものは乏しい。紙芝居やペープサート劇をして本当に良かったという授業を心掛けたい。
(大津市立堅田小)