▼改札口の若い駅員が大声で「おはようございます」と声をかけている。ほとんど返答がない。それでも駅員のあいさつは続く。少し関心があり、「何人くらい、返事が返ってきますか」と聞いた。確かな答えはなかったが、ごくわずかということだろう。

▼駅員は「形式的に言っている間は、反応ありません」と言った後で、「でも、何か言ってもらえると、うれしいです。コミュニケーションが成立したみたいで」とつけ加えていた。

▼この話を知人にしたら、あいさつの後「どこへ」とか「ごくろうさま」と言われると、何か言いたくなるという感想を聞かせてくれた。それは、少し知り合いになった駅員との対応だという。
▼言葉は心を伝えるという側面から考えると、二つの場面での駅員との対応は興味深い。

▼廊下を歩いていると、子どもの方から「おはようございます」と手を振ってくることがある。声をかけた後、あいさつをする子もいる。そして、避ける子もいる。たった一言の「おはよう」が、人間関係の深浅を示すということか。
▼時々「おはよう、珠美さん、今日は元気ですか」「今日は、いい顔をしているね」という言い方で関わっていくと、次にあった時の子どもの表情が明るいことに気づくこともある。言葉は生きているという思いが強くなる。

▼JRの自動改札が急ピッチで進められている。(吉永幸司)