言 葉 遣 い に つ い て
三 上 昌 男

「先生、ホチッキス貸して。」
「先生、画用紙ちょうだい。」
日常、教室で子どもたちが、私に使う言葉である。
 先日、岡山大学で開催された西日本国語問題研究協議会に参加した。そこで、国語審議会の「敬意表現」にかかわる報告を聴いた。
敬意表現とは、狭い意味の敬語を含む敬意に関わる表現の総称である。多くの人は、よい人間関係を求め、円滑なコミュニケーションを望んでいる。それを行うためには、相手や場面にふさわしい様々な配慮の表現が必要である。国語審議会としては、敬意表現が個々人の自己表現として用いられ、コミュニケーションを円滑にするという認識の下に、多様な敬語の使い方を敬意表現全体の中で論ずる必要があると考えている。
説明では、敬意表現の多様な例を挙げ、次期の国語審議会で敬意表現の標準を示す予定であることを述べられた。
 国語審議会の分類によると、先ほどの「貸して」は、丁寧さの程度が「親しさ+ややぞんざい」で、改まりの程度が「打ち解けて、ややくだけている」となる。また、「ちょうだい」は、丁寧さの程度が「親しさ+丁寧」で、改まりの程度が「打ち解けている」となる。ちなみに、丁寧さの程度が「非常に丁寧」で、改まりの程度が「非常に改まっている」表現は、「お借りしてもよろしいでしょうか」「いただけませんか」となる。
 学級の子どもたちは、私に親しみを感じ、打ち解けた言葉遣いをしてくれているわけだが、丁寧さに欠ける表現を改める指導が必要だと思う。

 子どもたちへのアンケート調査の結果が、研究協議の中で紹介された。子どもたちは、学年が進むにつれ、まわりの目が自分の言葉遣いに厳しくなっていくことを肌で感じているようである。また、親や先生から、言葉遣いについて叱られることが多く、ほめられることが少ない実態が報告された。
 国語科の実践事例として、説明文教材を使った報道番組作りの学習を紹介された。ニュースキャスターとゲストが登場する番組台本作りを通して、敬語の使い方を学ぶ学習展開を工夫された。

 世論調査によると、実社会では、正しく敬語が使えなかったり場に応じた話し方ができなかったりすることに悩む人も多い。人間関係の希薄化が指摘される中で、子どもたちが敬意表現を学ぶ場としては、学校、とりわけ国語の授業の役割が大きくなっていると言えるのではないだろうか。相手や場にふさわしい言葉遣いができることは、求められている「生きる力」として重要である。
(近江八幡市立金田小)