巻頭言
ス ノ ー ボ ー ド と 私
西 澤  徹

 この2月から私はスノーボードを始めた。いわゆる「ボーダー」の仲間入りをしたのである。新しもの好きな私だが、ちょっぴり不安も胸に余呉高原のゲレンデに向けて出発した。
 私にコーチしてくれる先生が二人いて、二対一の恵まれた条件である。基本的なことを教えてもらい、いよいよ動き出す。
「おっ、スキーよりも楽だぞ。」
 左足は板に固定されているものの、右足は自由だ!と思ったけれど、やはり歩きにくい。何とかリフトに乗って、気分は壮快。ペアリフトの上から下を見ると、やたらと座り込んでいる人が目につく。
「今にすぐわかりますよ。」
 リフトを降りると滑り出す。やはり恐怖感が出てくる。最初は横滑りという方法で滑ることに。
「うまい、うまい、最初からこれだけできたらすごいですよ!」
「そうかぁ。」
 やはりほめられるとうれしくなる。もっとやりたくなる。生徒になったような気持ちである。簡単なターンまでできるようになり、あっと言う間に2時間が過ぎた。

「また、行きましょうよ。このペースで行ったら、もっとうまくなりますよ。」
 ほめられ、おだてられて、すっかりはまってしまった私。今度は岐阜県のダイナランドへ出発。前回の復習もまずまず。さあ、上達あるのみ!
 しかし、やはりそんなに甘くはなかった。どうもターンが上手く行かない。特に左回りがなぜかできない。二人のコーチもあれこれアドバイスをしてくれたが、そのうち一人は自分の練習に行ってしまった。なんだか情けなくなってくる。いくら教えてもらってもできない辛さ。もう笑顔にも力がない。座り込んでばかりである。
「まあ、焦らないで。」
「うんうん。自分でなんとかやってみるわ。」
 とうとう一人になってしまった。もう頼れるのは自分だけだ。とにかく回数をこなしていくしかないんだ。何度も滑っているうちに、すーっと曲がれた瞬間が。
「できた。」
 この幸せな瞬間のために、苦しい時間があったのだ。
「できたじゃないですか。」
 いつの間にか見ていてくれたのだ。 学習の場面で、ほめて、おだてて、繰り返しやり、できたという成就感が大切なんだと、スノーボードは教えてくれた。
 視点が変わると、何かが変わる。
(彦根市立東中学校)