2000年9月に、「Windows Me」が発売された。「ミレニアムエディション」と読む。
「Windows 98SE」からのバージョンアップ版で正式なパッケージとして発売された。2000年に登場したことから「ミレニアム」の名前が付けられている。
Windows バージョンは 4.10.2222A から 4.90.3000 に更新されている。
今までの「Windows 9x」との最大の違いは、「MS−DOS」が切り離された、ということである。Windows終了時の「MS−DOSモードで再起動」の選択項目はなくなり、FDのフォーマットでも「システムを転送する」項目が無くなった。
ただ、完全に無くなったわけではなく、従来の「MS−DOS」であるリアルモードでの起動が無くなったのである。従って「スキャンディスク」等もプロテクトモードで実行される。
これは、来るべき「Windows NT」系と「Windows 9x」系の統合のための布石であり、「Windows ME」に完全対応したアプリケーションは必然と、16bit リアルモードを含まない事になる。完全 32bit 化される事により、「Windows NT」との統合時にアプリケーション側での対応をスムースに行うためである。
「Windows 9x」系の不安定さを少しでも改善すべく、「システムの復元」が新たな機能として追加されている。起動時や任意に、その時のシステムの状態を保存しておき、何か問題が発生した場合は、その保存した時の状態を呼び出してシステムを復元させる、というものである。保存状態は複数持つ事が出来る。
アイコンのデザインも一新され、先に発売された「Windows 2000」と共通になった。「Internet Explorer 5.5」が統合され、メディアプレーヤも「Medea Player 7」となり、マルチメディア機能も強化された。「動画編集ツール」も標準で付属されている。
OSの起動時間を大幅に短縮するため、起動プロセスの見直しが行われている。「MS−DOS」の切り離しもその1つである。「Windows ME」に完全対応したパソコンやマザーボードでは、最短で24秒で起動が完了するという、驚異的な時間短縮を実現した。
OSのWindowsを司る部分は殆ど変更されていないが、一部の 16bit 部分が切り離されたためか、多少動作が安定している。「Windows 98SE」と同様「インターネット接続の共有」も引き継がれている。
デスクトップでのデザインが一新された意外は「Windows 98」と特に変化は無く、「マルチメディア系の機能強化版」と言った感じである。
一部の販売店では「発売記念イベント」が行われたが、一般では冷ややかな反応であった。マスコミ関係も報道するのみで特に騒ぎ立てるような事はなかった。
一足先に発売された「Windows 2000」(同年2月発売)とは、「Windows 9x」系と「Windows NT」系とを統合した最初のOSになるはずだったが、一世代先延ばしになり、急遽「Windows 98SE」の後継が必要となった。それが「Windows ME」である。
従って次のOS(Windows XP)までの「場繋ぎ」的存在であり、Microsoft 社からも「初心者から中級者向けのOSであり、上級者には Windows 2000 を勧める」とまで言われてしまった。「Windows 9x」系の最後を飾るには辛い立場のOSかもしれない。
「MS−DOS」の仕様が変更されたため、純粋な「MS−DOS」としての起動ディスクが作成出来なくなっている。「Windows の起動ディスク」は作成出来るが、この時に起動される「MS−DOS」はすでに仮想メモリーマネージャーを含んでおり、純粋な「MS−DOS」システムではない。これは「MS−DOS」の本体である、「IO.SYS」と「MSDOS.SYS」に仮想メモリーマネージャーが組み込まれてしまったためで、自作PCユーザーには非常に不評であった。マザーボードやグラフィックボード等のBIOS(バイオス)のアップデートには、特に何も組み込まれていないリアルモード起動が出来る「MS−DOS」が必要だった。
これに対しての Microsoft 社の回答は「自作PCユーザーや Windows 98SE 等からの移行ユーザーは、その時の MS−DOS 起動ディスクを持っていた方がいいかもしれない。」というものである。
緊急時に必要だった「MS−DOS起動ディスク」は自作PCユーザーにとっては重要度の高いものであり、「Windows ME」への移行ユーザーはそれほど多くなかったようである。