「トコロジー」を楽しむ(3)!!―秋編
前回は大和葛城山(以下葛城山)の"春の恵"みについて"トコロジー"的に触れてきた。今回から、いよいよ「秋の恵」みに入ろうと
考えたが、いや、まだその前に、山はいっぱいの自然に恵まれているのだ。まず初夏の6月に入ると、いたるところで"キイチゴ"の
実が成るのである。これを取り上げずにはいられない。4月初め頃より、白い花が"下向き"に咲き出すが、あまり目立たない。
字のごとく、実は透き通った黄色で、食べると、ほのかな自然の甘みがあり、美味しい。ただ、食べた後、口に"ざらざら"とした
種の様なものが残る。木は低木で採り易いが、棘を持ってるので、むやみに手を伸ばすと、刺される。かなり"鈴なり"の状態なので、
しばしば登山の足を休めて、夢中になって、口に運ぶのが、楽しみの一つである。
もう一つ、時期を同じくして"桑の実"がある。この木は頂上付近で、ただ1本しか見つけていないが、養蚕を行わない最近では
”お目にかかれない”代物となった。熟してくると、実は黒色となり、そのまま食べても甘酸っぱくて、美味しい。両方とも
”野イチゴ”の類で、小さい粒が多数集合して、1つの実を形成する。また栽培もされていて、”果実酒”や”ジャム”としても売られている。
秋に入ればやはり"ムカゴ"の実である。山芋(自然薯)の茎の葉の付け根に出来る丸い実だが、これが地上に落ちて、発芽して
繁殖する。このムカゴと言う言葉だが自然薯の固有名詞だと思っていたが、そうではないらしい。漢字では"零余子"と書くが、
他の植物でも茎や葉っぱが変形して"栄養繁殖器官"となる物を言うらしい。これが地上に落ちて、新しい生命体を生む。我々が
以前から言ってきた"ムカゴ"は正式には"自然薯の零余子"となる。ムカゴの出来る主なものに茎からでは山芋、長芋など、葉っぱ
からはオニユリ、ノビル、ニンニクなどがある。一般的にはやはり山芋、長芋類の物を指す。
細い茎に付いている”ムカゴ”を見つけて採るのであるが、かなり"落ちやす"いので、帽子や袋などで受けながら一工夫するなど
、中々苦労するところである。偶然に道端などに巻き付いている茎なら、道の上に落ちている"ムカゴ"を探した方が楽で、
多くさん採れることもある。食べ方は、色々あるが、"焼"くか"蒸"す、"茹"でるなどの処理が必要である。味は"モチモチ"
してあまり癖がなく、根っこの味に似ている。主に"ムカゴめし"にして食されるため秋の"季語"にもなっている。
最近は電子レンジで4−5分”チン”して食べるのが手軽で、秋の味覚の醍醐味を楽しむことができる。
10月に入れば"アケビ"が成り出す。葛城山でも麓の方に良くみられる。茎はつる状で木々に"巻き付き"かなり高いところ
まで伸びる。花は4−5月頃に咲き、色は淡紫色で綺麗。雄雌同株でありながら、花は別々であり、しかも受粉は"蜂"とか
"ハエ"などが媒介しているらしいが、よく分かっていない。受粉した雌しべは棒状に10cm位まで成長して、10月中頃
には熟して"淡紫色"に色づく。さらに時間が経てば皮の線に従って割れ、多数の黒色の種を囲んでいる、甘いゼリー状の物と
一緒に落下し、種々の動物の餌となって運ばれる。この落ちる前に我々は頂くことになる。年々木が伸びて、低い所では実を
付けず、採るのに困るが、そこは工夫次第で、これも楽しみの一つである。味は独特の甘みがあるが、種の方が多いのであまり
食べた感じがしない。なお、皮も天ぷらにしてたべられる。独特の苦味があって、むしろこちらの方にはまっている。野生の
アケビ、以外に栽培種のアケビも最近出回ってをり、色も薄紫色の綺麗な色をしているが、まだ買って食したことは無い。
もう一つ、やはり10月の半ば過ぎになると"ヤマグミ"が完熟して小さな赤い実を付ける。せいぜい5〜6mmの
丸い果実を無数に付け、所謂鈴なりの状態となる。葛城山では、頂上付近で何箇所か見られる。食べると種の周りの果肉が
甘味いが少なく、渋みも付きまとう。なお”グミ”には春に実をつける"ハルグミ"(ナワシログミ)もあり平地でも良く見
られ、粒も大きい。どちらもよく知られているので安心して食べられる一つである。ヤマグミの漢字は"山茱萸"であるが、
これはサンシュユとも読めるが、こちらは春先に咲く”黄色”い花の名前であり、紛らわしい。
その他にも"ヤマボウシ"の実や俗に言う”クロモモ”(クロマメノキ)などがあるが、これらは葛城山では、頻繁にお目
にかかれないため、まだ食べた事が無い代物である。また、秋と言えば"キノコ"だが、10年程前に"ミドリのトラスト"主催
の「葛城山のキノコ散策」に参加したことがあるが、かなりの種類のキノコが見つかったが、食べられるものは"一つも"無かった。
その体験もあり、またキノコの”毒性”を見分けるのが大変難しいため、食べるのは敬遠している。しかし面白い"ホコリタケ"もあ
り、少し刺激を与えると、"てっぺん"の小さい穴から”ガス状”の胞子をまき散らす、奇抜なアイデアを持った"キノコ"で、葛城山の
下山途中で見つけ、”つついて”て遊んだこともある。
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