*夏の葛城山!!
春、秋、冬と続けば、やはり夏にも触れなければならないだろう。夏が最後になってしまったのは、やはり話題性に乏しいと思っているからでもある。どうしても夏の暑い時期は登るのを敬遠するためで、登れば頂上は、下界より10℃ほど低いと判っていてもである。そのため見て回る機会も少なくなり、一見乏しいかのように思い込んでいるのではないだろうか。この少ない話題の中から幾つか触れてみたい。
葛城山の夏といえば、やはり名物のツツジが終わった頃から徐々に始まるであろう。しかし、その頃は葛城山の最も花の少ない時期である。しかし登山道では"ニガナ"などの黄色い花が目立つようになり、6月に入れば「ササユリ」が一気に咲き出して、賑やかさを取り戻してくれる。日本特産で我が国を代表するユリである。その独特の匂いから花が咲いたことを知ることもある。葛城山のササユリは淡いピンク掛かった鮮やかな色合いが特徴で、その名も葉っぱが笹に良く似ていること、笹群に自生することに由来する。またタネを落として発芽するまで、2年を要し、さらに花を咲かせるまで7年以上も掛かると言われていて、カタクリに似てこれも厄介な代物である。しかし近くの陶器山でも今年1輪だけ見られたが、近年その数がめっきり少なくなった。葛城山でも年々その数を減らしていて、絶滅危惧種に準じる種となりつつある。
7月に入ればもう一つの「ヤマユリ」が咲く。こちららは大輪(20cm位)の花をたわわに付ける。そのため丈夫で高い茎に支えられている。白い花びらに赤褐色の斑点があり、匂いも強いのが特徴である。こちらは主に山地に自生し、その地の名前を付けて(吉野ユリ)などと呼ばれることもある。葛城山でも、いたるところで見られたが、近年その数が減り絶滅危惧種に指定されている。自生している山地が笹の群生に押され辛うじて生き延びている場所が増えているが、その笹を刈り取って、保護に乗り出しているようだ。
夏の葛城山で、どうしても触れておきたいものに「ナンバンキセル」がある。これは葉緑素を持たない、寄生植物で、
ススキなどのイネ科の植物の根に寄生し、7〜8月頃に発芽、成長し、地上に現れ開花する。葛城山は"ススキ"の名所でもあり、
いたる所で見られそうだが、むしろ寄生している株は稀である。これを見つけるため、茂ったススキを、かき分け、その根本を調べ、
運が良ければ見つかることもある。そのため見付けた時の喜びはひとしおである。花は筒状の独特な形で"キセル"に似ているため、
南蛮人がマドロスパイプをくわえた姿に見立て、その名が付いたと言われている。この花は、万葉集にも「おもい草」の名前で登場し
ており、古くから親しまれている花である。"うつむきかげん"に咲く姿は可憐で美しい。以前、ある"俳句の会"の人達を葛城山に
案内したことがあるが、この”ナンバンキセル”に感動されていたことが、今だに印象に残っている。
少し変わったとところでは"オカトラノオ"がある。丁度7月初め頃から日当たりの良い場所に咲き出し、花の少ない、この時期には
"賑わい"を添えてくれる貴重な花である。白い小さな花が沢山集まり、房状の穂を作り、その曲がった姿が、獣の尾っぽに似てい
ることから"オカトラノオ"の名になったと言われている。いずれにしろ、これらの名前は妙を得ていて感心させられる。
8月も半ばを過ぎれば、秋の気配が漂い、特に葛城山では、1週間以上も早くやってくる。そのため、僅かの期間だが
両方の花々を楽しむためには、せっせと登るしかない。今まで5回にわたって葛城山の草花について自分なりの、僅かな
体験も含めて、触れてきたが、これは、ほんの一部に過ぎないと思っている。まだまだ未知な部分もあり感心のある方は、
おおいに足を運んでみて下さい。
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