週末恒例・大人の五体投地
| 2002年6月16日(日) 「小咄その7・怪談…腰骨」 ある若い男が交通事故にあって瀕死の重症を負い、病院に担ぎ込まれた。 かろうじて命には別状なかったものの、 顔の下半分がぐちゃぐちゃに崩れ、特に口の辺りは形成不可能かと思われた。 医者「これは…もう移植手術しかないな…」 何時間にも及ぶ手術の末、男の顔はとりあえず元通りになった、かに思えた… 一月ほどが経ち、順調に回復を見せた男の包帯の取れる日がいよいよやって来た。 男「看護婦さん、私に口をくれた人ってのはどんな人だったんですか?」 包帯を外してもらいながら男は看護婦に問いかけた。 看護婦「あ、ええ…それは…」 男「教えてください!お願いします。 私は残りの一生をかけてその方の遺族にお礼をしたいんです!」 看護婦「…わかったわ…でも、ワタシが言ったってことは秘密ですよ…」 そう前置きし、看護婦は身の毛もよだつような話を始めた… 数週間前… 男が担ぎこまれたとほぼ同時に、 ある女性がすでに死体となってたまたま同じ病院に搬送されてきたのだった。 その女性の死体は顔のすべてが見る影もなく潰れていたものの、 それ以外は奇跡的に傷一つなかった… 美しささえ感じるほどであったと言う。 かたや男の移植手術は一刻を争うものだった。 他に適当なドナーがなかったため、 医者はやむなくその死体のある一部を切り取って男の口にあてがったのだ。 男「ある一部って…まさか…!!」 看護婦「そう、下の口、よ。…でも喋れるし、食べ物もちゃんと食べれるわよ」 男「…そう、ですか…」 そう言う男の顔が複雑な表情に曇るとともに、 淫猥な笑みをわずかに浮かべたのを看護婦は見逃してしまった。 翌朝…男は自分のベッドの上で、死体となって発見された。 何故か下着まで取り去った下半身の上に、 顔から突っ伏すようにして事切れていた男の死因は… 腰椎骨折、だった… |