足の指の間が痒くなる心意気
2003年5月19日(月)「新しもん好き」 |
関西人の一般的な特質として、「新しモン好き」という側面がある。読んで字のごとく「新しいモノ」がダイスキだということ。 そんな関西に新しいモンが海を越えてやって来て、去っていった。そう、台湾からの「SARS」である。 SARSとおぼしき台湾人医師は大阪市内から京都、丹後、四国、淡路と関西一円の非常に広範囲を迷走し、各地にウィルスと風評を撒き散らしつつ国外へ。 その非常識な医者の宿泊したホテルや旅館は大事を取って自主休業だし、利用したバスもしばらくは運用を控えると言うし、その運転手は入院してるし、その家族は10日間は自宅に缶詰だそうだし、きっといるだろう彼の子どもは、まず間違いなく学校でいじめられるだろう。 これだけ広範囲を迷走したSARSキャリアーの大胆な行動に、驚きと恐怖、そして怒りを禁じ得ない。USJなどでは何十万人もの人たちと接触があった可能性もある。 しかしそこは関西人だ。新しいモノが大好きなわたしたちのイチビリ精神は、きっと月曜日の病院のロビーを、かつて無いほどの熱狂と興奮で埋め尽くすだろう。そして彼らは口々に訴えかける。瞳をきらきらさせながら。 「先生、ゆうべから熱がおまんねん。これてやっぱりSARSとちゃいますやろか?」 「センセ、こないだからなんや身体がだるぅて……SARS?」 「もう足がカユぅてカユぅて! SARSやったらどないしょ?!」 「いやぁ、お隣のお婆ちゃん、こんにちは。元気? え?SARS? まぁ偶然。わたいもSARSですねん」 そこには悲壮感なんか一切無い。もちろん彼ら患者の多くは、医学的な根拠によって片っ端からSARSであることを否定されていくことだろう。だがそれは彼らのアイデンティティの否定にも等しい。その証拠にもし万が一、自分以外にSARS感染者が関西で発見されたなら、彼らの心のどこかには「うらやましい」という感情が芽生えているはずだ。ナニもそこまで思わなくても、と思うのだが。 しかし新しければなんでも良いのか? 関西人よ! ……どうかこのテキストがシャレで済みますように。 |