ネフローゼ症候群について

注意・・・疾病についての検査・治療等は自己判断せずに、必ず医師の診断・指示を受けてください。

ネフローゼ症候群とは

腎臓は血液から不要な物を尿にしていく「尿の製造工場」ですが、ネフローゼ症候群は何らかの原因により、蛋白の濾過(ろか)装置が故障してしまうもので、本来は体の中に戻さなければいけない蛋白を尿の中にどんどん捨ててしまうため、体の中の蛋白が極端に減っていってしまう病気です。
腎臓の病気ですが、高血圧や血尿などはありません。
小児と成人とでは、診断基準が違いますので、下記をご参考ください。

小児ネフローゼ症候群とは

小児に多くみられるのは、「特発性ネフローゼ症候群」と呼ばれるもので、好発年齢は5歳前後です。
症状はひどい「むくみ」が特徴で、むくみが目立つのは、「まぶた」「手足」「陰嚢(いんのう)部」などです。
症状が進むと腹水などもたまって体重も増えてきます。
尿検査をすると尿蛋白が多く出て、血液検査では蛋白の量が減ります。

治療はステロイドの投与が中心となり、長期間の治療が必要になります。
原則として、最初の発症の時には入院が必要です。
同じネフローゼでも少しずつタイプがちがうものがあります。(分類を参照にしてください。)それぞれのタイプで治療方針も変わるので、ステロイドの効果が出ない時には、腎臓の組織を一部採取する腎生検が必要になります。
最も頻度の高い「微小変化型」と呼ばれるものでは、ほとんどがステロイドの効果が良好です。ただ、ステロイドをやめると半数くらいが再発します。それでも微小変化型であればほとんどは成人までには治癒します。

症状
<軽度>むくみ、体重増加(むくみによる)、下痢、腹痛、食欲不振
<重度>腹水・胸水(腹腔や胸腔に水がたまる)、腹部膨満感、呼吸困難、咳や痰
 
診断基準 (成人)
  1. 尿タンパク量が3.5g/日以上
  2. 血清総タンパク量が6.0g/100ml以下
  3. 血清総コレステロール量が250mg/100ml以上
  4. むくみ

     (但し、3.4.は必須ではありません。


  
診断基準(小児)・・・学童幼児乳児とでは基準が違います。
  1. 蛋白尿:1日の尿蛋白は3.5g以上ないし0.1g/kg/日、または早朝起床時第一尿で300mg/100ml以上の尿蛋白が持続します。
  2. 低蛋白血症
       血清総蛋白量として:
         学童幼児6.0g/100ml以下
          乳児5.5g/100ml以下
       血清アルブミン量として:
         学童幼児3.0g/100ml以下
          乳児2.5g/100ml以下
  3. 高脂血症
       血清総コレステロール量として:
          学童250mg/100ml以上
          幼児220mg/100ml以上
          乳児200mg/100ml以上
  4. むくみ


<注意>
1. 蛋白尿、低蛋白(アルブミン)血症は、ネフローゼ症候群診断のための必須条件です。
2. 高脂血症、むくみはネフローゼ症候群診断のための必須条件ではないですが、これを認めればその診断はより確実となります。
3. 蛋白尿の持続とは3〜5日以上をいいます。

分類・・・この疾病は、1次性2次性に分類されます。

1次性……原発性糸球体疾患に由来し、原因としては糸球体腎炎が多い。

  1. 微小変化群・・光学顕微鏡上で有意な病変を見出せない特発性のもの。小児に多い。
  2. 膜性腎症・・成人に多い。
  3. 巣状糸球体硬化症・・巣状局所性の糸球体硬化
  4. 膜性増殖性糸球体腎炎・・メサンギウム領域の細胞と基質の増生ならびに糸球体基底膜の肥厚を示すもの 

2次性……全身症状が糸球体に波及したもの。

         ・糖尿病性腎症  ・慢性関節リウマチ  ・腎アミロイドーシス
         ・ループ腎炎   ・悪性腫瘍  ・妊娠中毒症  ・紫斑病性腎


 
治療方針・・・原疾患により治療方針が異なる為、腎生検を行い確定診断する必要があります。

<緊急を要する治療>

  1. 全身性浮腫(むくみ)・・・利尿剤・献血アルブミンの静脈注射
  2. 深部静脈血栓症・・・血栓溶解療法・抗凝固療法

<一般的治療>

  1. 安静・減塩(食塩摂取量7g/日以下)・飲水制限
  2. 蛋白尿やナトリウムの貯留を軽減するため、血圧が正常でもアンジオテンシン阻害剤(ACEI)又は、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を投与
  3. 利尿剤でむくみの改善
  4. 高血圧・高脂血症に対する治療(血圧値と蛋白尿量ほぼ相関するため)
  5. 低蛋白食事法・・・蛋白:0.8g/kg/日、エネルギー:30-35kcal/日、塩分:5.7g/日
  6. 副腎皮質ステロイド・免疫抑制剤(シクロスポリン)・抗血小板薬の使用
   
蛋白質検査用の尿試験紙について
通院治療中などに、ご家庭で尿蛋白を調べるための試験紙を用いることがあります。
ここでは、バイエルメディカル鰍フ
「アルブスティックス」という商品を例にとって、検査方法について解説します。


  
(検査方法)
  1. 乾いた清潔な採尿容器(紙コップなど)に新鮮な尿を採取します。
  2. 検査紙を容器より取り出し、直ちに密栓してください。新鮮な尿中に試験部分を完全に浸してください。そして、試薬が溶け出さないうちに、すぐに引き上げます。
  3. 採尿容器(紙コップなど)の縁に試験紙の端を軽く当て、余った尿の雫を取り除きます。なお、試験部分より試験薬部分が尿中に溶け出し、それが手につくのを防ぐため、試験紙は常に水平に持つように注意してください。
  4. 容器側面が比色表になっていますので、試験紙の色と見比べて判定します。
    試験紙を比色表に近づけて慎重に判定してください。その際、比色表に尿がつかないように注意してください。
    試験紙を尿中の浸してから2分以内であればいつでも判定することは出来ますが、最適な判定時間は60秒です。
(注意事項)
  • 試験紙の感度が低下しないように「湿気」「直射日光」「熱」を避けて密封して保存してください。
  • 使用期限がラベルまたは外箱に記載されていますので、使用期限を過ぎたものは使用しないでください。
  • 使用しない試験紙は必ず容器中に保管してください。試験紙を他の容器に移し変えると試験紙の品質が劣化したり、反応性が低下することがあります。
注意・・・疾病についての検査・治療等は自己判断せずに、必ず医師の診断・指示を受けてください。

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