余談(41)
雨宿りのつもりでモールに入ったら、なんだか面白いのが居た。ツリ目で背が高いのと、タレ目で背が低いの。っていっても、ツリ目の方が頭一つ分飛び出てるってだけで、タレ目の方もチビって訳じゃない。あれだ、相対的ってやつ。
……で、その凸凹な二人組、何が面白いのかっていうと………、うーん、説明が難しいなぁ。
取り敢えず、最初にその二人組が目に入ったのは、ツリ目の方が「腹減った」と騒いでたからだった。一階の案内板の前で、B1のフードコートか7Fのレストラン街かどっちかに行きたい、って主張を、そりゃもう第三者にも分かりやすく態度に表していた。それを、タレ目が「アンタ子供じゃないんだからもうちょっと静かに出来ないんですか」とか言ってて、見た目はタレ目の方が年下に見えるのに、もしかして年上か同い年?って思ってたんだ。
一階の話はそこまでで(携帯が受信したメールを読んでる間に二人は居なくなってた)、そのあとオレも時間を潰す為に7Fのカフェに入ったら、なんとそこにさっきの二人が居た。多分、なんか食べたいツリ目と食べたくないタレ目の妥協点が "カフェ" だったんだろーな。ちらっと横目で見ると、パスタとサンドのプレートを食ってるツリ目の向かいのタレ目はコーヒー飲んでて、オレの推理が正しいことを物語っていた。
なんか喋ってるのが、切れ切れに聞こえてくる。聞き耳立てるのも趣味悪いかなと思いつつ、やっぱり気になったので聞いていたら、いくつかのことが分かった。
まず、ツリ目の名前は『モトキ』でタレ目の方は『タカヤ』というらしい。最近の子はあまり男同士で名前呼びをしないみたいだと思ってたけど、そうでもないのかな。『モトキさん』『タカヤ』って呼び合ってるところからすると、やっぱりタレ目の方が年下らしい。……先輩後輩とかか?
そう思っていたら、なんか喋った後(この辺は聞き取れなかった)、スパーン、といい音がして、タレ目の方がツリ目の頭を叩いた。そりゃもう見事に自然な腕の振りで、一瞬のためらいもなく、だ。
……あれ? んじゃ先輩後輩じゃないのか? オレは考えた。普通、後輩は先輩の頭を叩いたりしないものだ。その逆は有り得ても、だ。ということはあの二人……
(1) 実は同い年
(2) 実はタレ目の方が年上
(3) 実は幼なじみで気安い
(4) 実は漫才コンビでタレ目がツッコミ
(5) 実は…………………
うーん、しっくり来ないなぁ。オレとしては(4)の実は漫才コンビ、ってのが一押しなんだけど。……そりゃないか。
あ、もしかして、親同士が再婚して兄弟になった、とか。って、んなわけないか。どんだけドラマチックなんだよ、その設定。
……と、タレ目がツリ目の襟首に手を伸ばすのが目に入った。ぐいっと胸ぐら掴んで引き寄せる。え、ちょ、もしかしてそうは見えないけどいじめっ子といじめられっ子!? いやちょっと待て、喧嘩は駄目だ暴力反対!………と思ってたら、こぼれたミートソースを拭いてあげている。……あれ? なんだろう、ちょっと甲斐甲斐しいんだけど、タレ目。
そうこうする内に、食べ終わったツリ目が窓の外を見て、「雨やんでるぜ」と言って席を立った。雨宿りだったんだな、あの二人も。……そのわりにツリ目はガッツリ食ってたけどな。
そーいやオレも雨宿りの時間つぶしで入ったんだった。あの二人が気になって、コーヒーもすっかり冷めちまってる。アイスコーヒーは美味いのに、冷めたコーヒーはなんでこんなに不味いんだか。
会計を済ましている二人組を見るともなしに見ながら、冷めて苦くなったコーヒーを啜った。オレもそろそろ行くかな、と時計を………見ようとしたところで、オレは固まった。
ツリ目がタレ目の手を引いて店を出て行ったのが目に入ったんだ。いや、ちょっとまて、なんで手ぇつないでんのお前ら!
固まった拍子に気管に入ったコーヒーに盛大に咽せながら、遠ざかる2つの背中を呆然と見つめた。
あの二人、どういう関係なんだ一体!
……で、その凸凹な二人組、何が面白いのかっていうと………、うーん、説明が難しいなぁ。
取り敢えず、最初にその二人組が目に入ったのは、ツリ目の方が「腹減った」と騒いでたからだった。一階の案内板の前で、B1のフードコートか7Fのレストラン街かどっちかに行きたい、って主張を、そりゃもう第三者にも分かりやすく態度に表していた。それを、タレ目が「アンタ子供じゃないんだからもうちょっと静かに出来ないんですか」とか言ってて、見た目はタレ目の方が年下に見えるのに、もしかして年上か同い年?って思ってたんだ。
一階の話はそこまでで(携帯が受信したメールを読んでる間に二人は居なくなってた)、そのあとオレも時間を潰す為に7Fのカフェに入ったら、なんとそこにさっきの二人が居た。多分、なんか食べたいツリ目と食べたくないタレ目の妥協点が "カフェ" だったんだろーな。ちらっと横目で見ると、パスタとサンドのプレートを食ってるツリ目の向かいのタレ目はコーヒー飲んでて、オレの推理が正しいことを物語っていた。
なんか喋ってるのが、切れ切れに聞こえてくる。聞き耳立てるのも趣味悪いかなと思いつつ、やっぱり気になったので聞いていたら、いくつかのことが分かった。
まず、ツリ目の名前は『モトキ』でタレ目の方は『タカヤ』というらしい。最近の子はあまり男同士で名前呼びをしないみたいだと思ってたけど、そうでもないのかな。『モトキさん』『タカヤ』って呼び合ってるところからすると、やっぱりタレ目の方が年下らしい。……先輩後輩とかか?
そう思っていたら、なんか喋った後(この辺は聞き取れなかった)、スパーン、といい音がして、タレ目の方がツリ目の頭を叩いた。そりゃもう見事に自然な腕の振りで、一瞬のためらいもなく、だ。
……あれ? んじゃ先輩後輩じゃないのか? オレは考えた。普通、後輩は先輩の頭を叩いたりしないものだ。その逆は有り得ても、だ。ということはあの二人……
(1) 実は同い年
(2) 実はタレ目の方が年上
(3) 実は幼なじみで気安い
(4) 実は漫才コンビでタレ目がツッコミ
(5) 実は…………………
うーん、しっくり来ないなぁ。オレとしては(4)の実は漫才コンビ、ってのが一押しなんだけど。……そりゃないか。
あ、もしかして、親同士が再婚して兄弟になった、とか。って、んなわけないか。どんだけドラマチックなんだよ、その設定。
……と、タレ目がツリ目の襟首に手を伸ばすのが目に入った。ぐいっと胸ぐら掴んで引き寄せる。え、ちょ、もしかしてそうは見えないけどいじめっ子といじめられっ子!? いやちょっと待て、喧嘩は駄目だ暴力反対!………と思ってたら、こぼれたミートソースを拭いてあげている。……あれ? なんだろう、ちょっと甲斐甲斐しいんだけど、タレ目。
そうこうする内に、食べ終わったツリ目が窓の外を見て、「雨やんでるぜ」と言って席を立った。雨宿りだったんだな、あの二人も。……そのわりにツリ目はガッツリ食ってたけどな。
そーいやオレも雨宿りの時間つぶしで入ったんだった。あの二人が気になって、コーヒーもすっかり冷めちまってる。アイスコーヒーは美味いのに、冷めたコーヒーはなんでこんなに不味いんだか。
会計を済ましている二人組を見るともなしに見ながら、冷めて苦くなったコーヒーを啜った。オレもそろそろ行くかな、と時計を………見ようとしたところで、オレは固まった。
ツリ目がタレ目の手を引いて店を出て行ったのが目に入ったんだ。いや、ちょっとまて、なんで手ぇつないでんのお前ら!
固まった拍子に気管に入ったコーヒーに盛大に咽せながら、遠ざかる2つの背中を呆然と見つめた。
あの二人、どういう関係なんだ一体!