余談(28)
なんかね、日向に干された布団になった気がする。
そう言ったのは水谷だった。
あ、分かる分かる! と同意したのは田島で、花井は分かるけど同意したくはない、って表情で。
そのはす向かいで、栄口が、夏に布団干すと、暑くて眠れないよね、なんてちょっと所帯くさいことを言っている。
何のことかというと、一日日向でボールを追いかけ回していた自分たちの話なのだけれども。
夜、色々あって(この辺の事情は割愛)元希さんと一緒に寝てるんだけど、なんかこう、暑苦しくて目が覚めてしまった。
体が冷えるからクーラーはあまり好きじゃないし、何より元希さんの肩が冷えるのもマズイから、なるべくつけたくはないんだけど、それにしても我慢の限界ってもんがある。
今日は暑かった。そして、今夜も存分に暑い。
夜になっても下がる兆しもない気温に辟易して、それでも、と窓から顔を突き出してみると、臨家のクーラーの室外機のせいで、ムワッと暖かい空気が流れてきて、むしろ外の方が暑いんじゃ…、といった様相だ。
それで仕方なく、クーラーをつけて寝たんだけど、どうにも寝苦しくて、疲れているはずなのに目が覚めてしまった。
ちなみにクーラーは28℃。
これでもかなり涼しく感じるのだから、外気温のほどは推して測るべし、って感じだ。
……で、どうして寝苦しいのか。
クーラーのおかげで室温は快適なのに、なぜか暑い。
そして、昼間の会話を思い出した。
「なんかね、ひなたに干された布団になった気がする」
そう言ったのは水谷だった。
今日も雲ひとつないくらいに晴れ渡っていて、日差しとそれに暖められた空気とで二重に暑い。
水谷が唐突に変な話を振るのはいつものことだったけど、今日の発言はまた意味が分からなかったので無視しようかと思っていたら、田島が同意したので、いったいなんだろうとそっちを向いた。
栄口が、夏に布団干すと、暑くて眠れないよね、などと言っている。
ああ、なるほど。
ひなたで干した布団はフカフカしていい匂いがして気持ちいいけど、夏にそれをやると、なんかこう、布団が吸収して蓄えた熱で、暑くて夜寝れなくなるっていう、あれか。
で、それがどう水谷の台詞と結びつくのかというと、どうやらひなたを走り回って存分に熱を吸収したオレたちは、ひなたの布団みたいに熱を蓄えてて、夜になっても暑いってこと、らしい。
うん。その感覚は分からなくもない。
なんかこう、のぼせたって言うよりは程度も軽いんだけど、体がカッカして寝苦しいっていうのは覚えがあるし。
で、自分ではわかりにくいんだけど、ひなたを走り回ってたオレたちが、太陽の匂いって言うのかな、あの、干した布団みたいな匂いがするのも知っている。
気持ちいいんだけど、寝苦しいことも。
………というわけで、現在のオレはたいそう寝苦しいワケなのだ。
なんせ、自分だけならまだしも、隣に大きいのがノビノビと寝そべっているのだから。
元希さんは、この人もオレたちと同じくらいにひなたを駆け回って、めいっぱい太陽熱を吸収した体で、すやすやと眠っている。
気持ちよさそうに寝ているけど、その横でオレは暑くて寝苦しい。
元希さんの、球児とは思えない長めの髪が額に張り付いているのをかきあげてやって、額が汗ばんでいるのに気がついた。
ああ、やっぱりこの人も、暑いんだな。
ベッドの上は2人の球児、お互いにひなたの布団みたいに熱い。
でもまあ、眠らないと明日の練習が持たないし、と、またその隣に寝ころんで、ふと気がついた。
隣の頭から、かすかにひなたの匂い。
自分ではわかりにくいけど、ひなたを走り回ってたオレたちは太陽の匂いがする。
オレも同じ匂いがするのかな、と思って、でもやっぱり自分では分からなくて、明日起きたら訊いてみよう、と思いながら、目を閉じた。
そう言ったのは水谷だった。
あ、分かる分かる! と同意したのは田島で、花井は分かるけど同意したくはない、って表情で。
そのはす向かいで、栄口が、夏に布団干すと、暑くて眠れないよね、なんてちょっと所帯くさいことを言っている。
何のことかというと、一日日向でボールを追いかけ回していた自分たちの話なのだけれども。
夜、色々あって(この辺の事情は割愛)元希さんと一緒に寝てるんだけど、なんかこう、暑苦しくて目が覚めてしまった。
体が冷えるからクーラーはあまり好きじゃないし、何より元希さんの肩が冷えるのもマズイから、なるべくつけたくはないんだけど、それにしても我慢の限界ってもんがある。
今日は暑かった。そして、今夜も存分に暑い。
夜になっても下がる兆しもない気温に辟易して、それでも、と窓から顔を突き出してみると、臨家のクーラーの室外機のせいで、ムワッと暖かい空気が流れてきて、むしろ外の方が暑いんじゃ…、といった様相だ。
それで仕方なく、クーラーをつけて寝たんだけど、どうにも寝苦しくて、疲れているはずなのに目が覚めてしまった。
ちなみにクーラーは28℃。
これでもかなり涼しく感じるのだから、外気温のほどは推して測るべし、って感じだ。
……で、どうして寝苦しいのか。
クーラーのおかげで室温は快適なのに、なぜか暑い。
そして、昼間の会話を思い出した。
「なんかね、ひなたに干された布団になった気がする」
そう言ったのは水谷だった。
今日も雲ひとつないくらいに晴れ渡っていて、日差しとそれに暖められた空気とで二重に暑い。
水谷が唐突に変な話を振るのはいつものことだったけど、今日の発言はまた意味が分からなかったので無視しようかと思っていたら、田島が同意したので、いったいなんだろうとそっちを向いた。
栄口が、夏に布団干すと、暑くて眠れないよね、などと言っている。
ああ、なるほど。
ひなたで干した布団はフカフカしていい匂いがして気持ちいいけど、夏にそれをやると、なんかこう、布団が吸収して蓄えた熱で、暑くて夜寝れなくなるっていう、あれか。
で、それがどう水谷の台詞と結びつくのかというと、どうやらひなたを走り回って存分に熱を吸収したオレたちは、ひなたの布団みたいに熱を蓄えてて、夜になっても暑いってこと、らしい。
うん。その感覚は分からなくもない。
なんかこう、のぼせたって言うよりは程度も軽いんだけど、体がカッカして寝苦しいっていうのは覚えがあるし。
で、自分ではわかりにくいんだけど、ひなたを走り回ってたオレたちが、太陽の匂いって言うのかな、あの、干した布団みたいな匂いがするのも知っている。
気持ちいいんだけど、寝苦しいことも。
………というわけで、現在のオレはたいそう寝苦しいワケなのだ。
なんせ、自分だけならまだしも、隣に大きいのがノビノビと寝そべっているのだから。
元希さんは、この人もオレたちと同じくらいにひなたを駆け回って、めいっぱい太陽熱を吸収した体で、すやすやと眠っている。
気持ちよさそうに寝ているけど、その横でオレは暑くて寝苦しい。
元希さんの、球児とは思えない長めの髪が額に張り付いているのをかきあげてやって、額が汗ばんでいるのに気がついた。
ああ、やっぱりこの人も、暑いんだな。
ベッドの上は2人の球児、お互いにひなたの布団みたいに熱い。
でもまあ、眠らないと明日の練習が持たないし、と、またその隣に寝ころんで、ふと気がついた。
隣の頭から、かすかにひなたの匂い。
自分ではわかりにくいけど、ひなたを走り回ってたオレたちは太陽の匂いがする。
オレも同じ匂いがするのかな、と思って、でもやっぱり自分では分からなくて、明日起きたら訊いてみよう、と思いながら、目を閉じた。