余談(25)
味のしなくなったガムを未練がましく噛み締めながら、隣を歩く半分低い頭に向かって話しかける。
「なぁ、途中のコンビニで……」
味のしなくなったガム、いつもの緑のキシリ、二粒分を噛みながら、そのせいでちょっとくぐもった声で。
そしたら、隣のこの生意気な年下は、ムッと顔を顰めて、ホントに一発で分かるくらいイヤそうな顔をして、
「いつまで噛んでんですか、そのガム。大体、人と話すのにガム噛みっぱなしってシツレイじゃないですか?」
……なんて言いやがる。
くそ、ホント生意気なヤツ!
でもまぁ、ガム噛んだままじゃ喋りにくいのは事実だしなぁ。タカヤはそんな事で怒りすぎだとは思うけど。
「元希さん、聞いてます?」
「聞いてねーよ」
「……聞いてるじゃないですか。いい加減、そのガム捨てたらどうですか」
そもそもオレがキシリを愛用してるのは歯のためなんだけど、だったらなんでこんな味が無くなるまで噛んでいるのか。
別に味のないガムを噛むのが好き、なんて言う変わった嗜好は無いんだけど、有り体に言えば、面倒くさいというか、タイミングがつかめないと言うか。
なんかこう、口を動かしてると落ち着くっていうか、集中できるっていうか、そういうのってあるだろ?
ガムを捨てても、口がさみしくてつい次のガムを口に入れちまうから、なんつーか、こう、勿体ないって言うの?
まるっきりチェーンスモーカーみたいにガムを噛むのもアレだし、色々めんどくさくて、ガムを捨てるタイミングが難しくて、つい。
隣のチビは、拗ねたように口を尖らせている。
実際には拗ねてるなんて可愛らしいもんじゃないんだけど、目尻の垂れた大きな目が顔つきを甘く見せているから、見てくれだけなら子どもっぽくて可愛らしいかもしれないと思った。
にしても、この、口を尖らせた顔はよく見かける。
なんでコイツはオレといるときはこうも不機嫌なんだか。
つい、とくちびるを尖らせて、のぞき込むとふいっと顔を逸らす。
なんだっけ、このカンジ。
オンナノコが口笛吹いてるのをみて、その尖らせたくちびるを、キスしたくなるかたちって言うみたいな。
ああ、そっか。
「なぁ、タカヤー」
ポケットに突っ込んであったクシャクシャの紙を取り出して、口の中のガムを捨てた。
タカヤはまだ機嫌が悪いのか、こっちを見ようともしないで、やっぱり口を尖らせている。
のぞき込むようにして、ちゅ、と、かすめる程度に。
「……っ!な、なにしてんだよ!?」
「えー、なにって、そりゃもちろん、キ……」
「言わんでいいです!」
一瞬にしてゆでだこみたいになったタカヤを見て、上機嫌で笑った。
なんだ、タイミングって難しくないじゃん。
これなら口もさみしくないし。
必死になって口を袖口でこすっているタカヤを見たら楽しくなって、もう一度笑ったら、握ったこぶしでポカリとやられたんだけど。
.........
タカヤにチューしたいなぁって思ったらガムを捨てるタイミング。
「なぁ、途中のコンビニで……」
味のしなくなったガム、いつもの緑のキシリ、二粒分を噛みながら、そのせいでちょっとくぐもった声で。
そしたら、隣のこの生意気な年下は、ムッと顔を顰めて、ホントに一発で分かるくらいイヤそうな顔をして、
「いつまで噛んでんですか、そのガム。大体、人と話すのにガム噛みっぱなしってシツレイじゃないですか?」
……なんて言いやがる。
くそ、ホント生意気なヤツ!
でもまぁ、ガム噛んだままじゃ喋りにくいのは事実だしなぁ。タカヤはそんな事で怒りすぎだとは思うけど。
「元希さん、聞いてます?」
「聞いてねーよ」
「……聞いてるじゃないですか。いい加減、そのガム捨てたらどうですか」
そもそもオレがキシリを愛用してるのは歯のためなんだけど、だったらなんでこんな味が無くなるまで噛んでいるのか。
別に味のないガムを噛むのが好き、なんて言う変わった嗜好は無いんだけど、有り体に言えば、面倒くさいというか、タイミングがつかめないと言うか。
なんかこう、口を動かしてると落ち着くっていうか、集中できるっていうか、そういうのってあるだろ?
ガムを捨てても、口がさみしくてつい次のガムを口に入れちまうから、なんつーか、こう、勿体ないって言うの?
まるっきりチェーンスモーカーみたいにガムを噛むのもアレだし、色々めんどくさくて、ガムを捨てるタイミングが難しくて、つい。
隣のチビは、拗ねたように口を尖らせている。
実際には拗ねてるなんて可愛らしいもんじゃないんだけど、目尻の垂れた大きな目が顔つきを甘く見せているから、見てくれだけなら子どもっぽくて可愛らしいかもしれないと思った。
にしても、この、口を尖らせた顔はよく見かける。
なんでコイツはオレといるときはこうも不機嫌なんだか。
つい、とくちびるを尖らせて、のぞき込むとふいっと顔を逸らす。
なんだっけ、このカンジ。
オンナノコが口笛吹いてるのをみて、その尖らせたくちびるを、キスしたくなるかたちって言うみたいな。
ああ、そっか。
「なぁ、タカヤー」
ポケットに突っ込んであったクシャクシャの紙を取り出して、口の中のガムを捨てた。
タカヤはまだ機嫌が悪いのか、こっちを見ようともしないで、やっぱり口を尖らせている。
のぞき込むようにして、ちゅ、と、かすめる程度に。
「……っ!な、なにしてんだよ!?」
「えー、なにって、そりゃもちろん、キ……」
「言わんでいいです!」
一瞬にしてゆでだこみたいになったタカヤを見て、上機嫌で笑った。
なんだ、タイミングって難しくないじゃん。
これなら口もさみしくないし。
必死になって口を袖口でこすっているタカヤを見たら楽しくなって、もう一度笑ったら、握ったこぶしでポカリとやられたんだけど。
.........
タカヤにチューしたいなぁって思ったらガムを捨てるタイミング。