余談(18)





季節柄、と言う事で、花見に行った知り合いから、土産だと言って桜茶をもらったのだが。
オレとしては、お茶よりも桜餅とかのが良かったんだけど、こっちの方が日持ちするからって言われて、でも桜茶って花の塩漬けみたいなヤツだから、今年の桜じゃないよな、って思うと、ちょっといい気がしない。
でもって、飲んだ事無いものだし、自分で淹れるのは面倒くさいしで、夜にタカヤんとこに押し掛けて飲む事にした。

で、その夜。
タカヤんちで晩飯いただいて、食後にタカヤに桜茶淹れさせて、リビングに移動して二人して啜ってみたんだけど、オレ、コレあんまり好きな味じゃない……。
隣でタカヤはわりと普通の顔して飲んでるけど、そもそも桜ってお茶にするもんなのか?
……と思ってたら、台所で米を研いでいたらしいおばさんがこういった。

「あんたたち、桜茶なんか飲んで、結婚式でもするの?」

ぶほっ、と音がして、隣のタカヤが派手に咽せたのが分かった。
つーか、なんで桜茶で結婚式?

「結婚式では、"お茶を濁す"から茶葉は使わないのよ」

ゴホゴホゴホッて、タカヤ、大丈夫か?
背中をさすってやると、涙目のタカヤか顔を上げて、あんまり顔の似てない(性格はわりと似てるとおもうんだけど)母親にむかって、

「結婚式は昆布茶だろ!」

って言った。
そもそもオレには、結婚式に茶葉禁止、ってのすら初耳だったんだけど。
もしかして常識なの? でもタカヤって、わりと年寄り臭い知識持ってるしなぁ。

「関東では昆布茶だけど、関西では桜茶が多いんだって」

へー。
それを知って桜茶飲むと、あんまり好きじゃないこの味も、まあいいか、って思えるよな。



「…………ってことがあったんだけど、秋丸、桜茶が結婚式って知ってた?」
「オレは昆布茶しか知らなかったよ」
「つか、あんときの咽せたタカヤの顔が真っ赤でさぁ、サルみてーだったのな!」
「オレ、隆也くんてサルに似てないと思うけど……」
「そーいや、タカヤのやつ、なんであんなに咽せたんだ?」
「………(隆也くん、榛名ってこんなヤツだけど、ホントにいいの?)」