余談(14)





ブルペンで隣に座って、元希の荒れ球を捕っている後輩が、面を外して汗を拭った。
隆也は、最近タケノコみたいに急激に伸びている。
いやいや、身長じゃなくて、技術が、だ。
肩慣らしのキャッチボールを念入りすぎるほどにする元希は、いつもはブルペンからあがるのが一番最後だけど、今日は珍しく一番最初に投球練習を終えたみたいだ。
何せ今日は、ダッシュをするのがイヤだって言って、隆也を(無理矢理)付き合わせて先にキャッチボール始めたたもんな。
面を置いた隆也が立ち上がって、元希はダウンで何球か軽いボールを投げている。
18.44離れていた距離が少しずつつめられて、最後には腕を振らずに手首のスナップだけで投げるような距離まで近付く。
そうして更に何球か。
ダウンまで念入りに行うこれが、元希の投げ込みのスタイルだ。
っし、終わり終わり! と言った元希が、手の中のボールを隆也に渡して、二人連れだってブルペンから出て行く。
なんかこう、身長差があるせいか、デコボココンビだ。わりと気は合ってるんじゃないかとオレは思ってんだけど。
と、ネットの向こうの隆也がホッペタからアゴにかけてを、練習着の袖口で拭った。
わかる、わかるぞ、隆也。マスク外した後って、気持ち悪いっつーか、なんかこう、アセモとかできそうだよな。
蒸れて顔汗はすっげぇかくし。

「あー、顔、しょっぱい……」

それも分かる。
唇なめたりしたら、ジャリジャリしてしかも汗でしょっぱいんだ!
この気持ち悪さ。ソッコーで顔洗いたいね、おれは。
……なんて考えたたら。

「ホントにしょっぱいのな!」

「うわ、ちょ、元希さん、顔舐めないでください!」

……おい、ちょっと待て、元希。
お前、いくらなんでもそれはナイだろ。
と、こっちも投球練習を終えたオレのピッチャーが近づいてくる。

「あいつら仲良くなったなぁ」

いや、お前もそんな感慨深げに笑ってる場合じゃねぇから。




隆也、顔舐めたりする元希はまるっきり大型犬だけどな、もしかすると犬じゃなくてオオカミかもだから、気を付けろよ。
……って思ったけど、捕れるようになってから元希と仲の良い隆也には言えなかった。
ちゃんと言っといたほうが良かったかなぁ……。











.......

シニアでモトタカ、先輩捕手視点。
あと、とにかく顔はしょっぱいです。