余談(1)





「あべー、レガース!」

「あ、わりぃ」


打順が回ってきたらプロテクターを全部はずして、終わったら全部付けなおして。
捕手は結構大変です。
特に、自分の打席でスリーアウト目のときや、出塁しててチェンジしたときには、ダッシュでベンチに戻って、レガース付けてプロテクター付けて、メット被って面を着けないといけない。
「これって、2番目と3番目が交差?」

「うん。留めるトコ外側でな」


特に面倒なのが、レガースで。
4本あるベルトを、上から順に付けていくのだけれど、このとき2番目と3番目は交差させるようにする。
知らないと、全部平行に付けてしまうけど、それだと動いているうちにずれてしまうから。

で、守備は既にボール回してるわ、投手はマウンドに登っているわで、急かされるキャッチは、大抵ベンチの誰かにレガース付けるのを手伝って貰うわけである。 (普通は控え捕手がそのあいだに投球練習に付き合っている)

幸か不幸か西浦高校では、ベンチにいるのは監督マネジを除けば西広くんだけなので、


「いつもありがとな、西広」

「ううん、気にしないでよ。ほら、三橋が待ってるよ、頑張ってね!」


……というふうに、いつも西広が阿部を手伝っていた。
傍若無人のきらいのある阿部も、人の良い西広に対しては丁寧な対応をする。
御礼だって言っちゃうぐらいだ。


「はい、出来たよ!」

西広が、穏やかな造作の目元を細めて、阿部の背中をポンポンと二度叩くのが合図。

おう! と一声、捕手は面とミットを掴んで、投手の正面へと走っていった。









そんなこんなで、某日、西浦高校の廊下にて。




「あっれー? な、栄口。アレって阿部と西広?」

「ん? あ、ホントだ」

「珍しい組み合わせだなー」

「何の話してんだろーね」

「……数学とか?」

「数学ねぇ。…あ、笑ってる」

「もしかして、阿部に虐げられてるのって、オレだけ?」

「さあ、どーだろね」

「ひどっ! ちょっとは否定してよ!!」




……そんなこんなで、阿部と西広は、以外と仲が良かったりする。












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レガースを留める4本のベルトは、後ろから見ると


×


ってカンジになってますヨ。
んでもって、急いでるとなかなか留められなかったり。