どーもこんにちわ。文貴です。
暑さも厳しい今日この頃ですが、みなさんはどうお過ごしですか?


……なんて挨拶してるような場合じゃなくてだね。
ほら、オレって学生じゃん?
で、今は午前の10時ぐらいだから、必然的に、授業中でワケなんだよね。
しかも、なかなか怖いと評判の数学教師の数Aなんだよね、今。
正直、数列とか言われてもサッパリで、a+1、a+3、a+5……、て2個ずつ増えてんのは分かるんだけど、そんなんは小学生でも分かることで、じゃあ何がサッパリなのかっていうと、式を立てることだったりするんだけど……。
あぁ、もう! なんでこの世に数学なんてあるんだよ!


「じゃあ類題26を……窓際の列いこうか」


っと、窓際の列って、つまりオレも?


「ちょうど6問あるから、前から順に一人一問ずつ黒板に板書してもらう」


えーと、じゃあオレは4問目か。……えーと、えーと、……
えー……、と、……あー、わっかんねぇ!
いやもう、何がなんだかサッパリなんですが。
誰かオレに答えを教えてくれー!

と思ったら、阿部が数学が得意っていうヘンタイだったことを思いだした。
ナイスだオレ!良く思いだした!

「なー、あべー…」

……と思ったら、オレの後ろの席で、阿部が爆睡していた。
くっそー、どーしよ。起こしても大丈夫かなぁ?
阿部、寝起き悪そうだしなぁ……って、あれ?阿部ってオレの後ろの席なんだから、5問目当たってるよな?
ものすごーく、大胆に寝てらっしゃるんだけど、大胆にもほどがあるって言うかなんて言うかね。
頼むから、そーゆーのは配球だけにしといてくれよ。阿部のリードって、大胆でしかも性格悪すぎて、全然打てないんだけど。
いやいや、今は野球じゃなくて、数学だろ。
阿部は当てられている以上、どっちみち起こさないといけないんだし、起こして訊かないとオレの四問目もわかんないんだし。
よーし、起こすぞぉ……


「阿部、あーべー!」

ちょっと揺すったぐらいじゃ起きないな。よし、鼻つまんでやる!

「あべー、起きないとやばいよー。起きてオレに問4を教えてくれー」

きゅ、って鼻をつまんでやった。
そしたら、なんでか眉をひそめたままの険しい顔で寝てた阿部が、んん…、って唸った。
こう、普段迫力のある阿部だから、寝顔が幼いとかあどけないとか、そーゆー可愛げぐらいあってもいいと思うんだけどね。
…にしても、起きないなぁ。そろそろヤバイんだけど……


「はい、じゃあ前に出て黒板に答え書いて!」


……ほらね。
あーも、まったく、


「阿部、起きろ!」


あぁ、ほら。教師に爆睡がバレちゃったよ。
でも、教師に怒られても起きない阿部って、尊敬に値すると思うよ。
あ、教科書丸めてる。頭叩くのかなぁ?


バコン!


あー、やっぱり。

で、頭叩かれた阿部は、びっくりするくらい瞬間的に、パチッて眼をあけたんだけど、その凶悪な顔は何とかならないの?
起こした先生も、ちょっとビビってるよ。


「クッソ、点取れなかった……!」


ん、点? テストで悪い点取る夢でも見たのかな、って、阿部に限ってそれはないか。
筋金入りの野球バカだもんね。
点っていったら、阿部の場合はやっぱ野球でしょ。
負ける夢でも見たのかな。
もの凄い負けず嫌いなのに。


「なに、オレ当たってんの?何番?」

「問5だよ。ついでに問4も教えてくれると助かるんだけど」

「あん?そんなん自分でやれ」


あ、阿部ったらヒドイ!
って、もう書きに行くの!?問4オレに教えてからにしてよ!


「問4な、例題の3つ目のと同じタイプのだから」


例題の?
3つ目ってこれかな?
あー、何となく分かりそう。サンキュー阿部!




そーゆーカンジで、オレは不正解ながらも何とか惜しいところまでできて、まあお咎め無しってコトになりました。
ありがとね、阿部。
で、阿部は爆睡してたにも関わらず、サラッと答えを書いて、ツルッと正解していて、数学教師は何となく悔しそうだったんだけど。
花井も、なんか理不尽だって言ってたしね。
でも、夢でまで野球してる阿部って、ホント野球バカだよね。
どーせ夢で見るなら、勝ち試合にしときゃいいのに。甲子園出場とか。


「いや、桐青から点取れない夢見てな」

休み時間に桐青のデータ読んでたから。って、阿部さん。
アンタはデータ読んだらそれを夢でシミュレートできるんデスカ?


ホント、お前の頭ん中って、いったいどうなってんのよ?

















.................


水谷くんは、ひたすら阿部へのツッコミ役ですよ。
栄口くんだと、もう慣れと諦めですべて許しちゃうから。
榛名サンだと、阿部がツッコミ役だから。
花井と一緒に、阿部の一挙一動にハラハラさせられてたらいいよ。