じゃーなー、お疲れサン。
はい、お疲れ様です。
ってな感じに、声が飛び交って、一人、また一人と更衣室から人が減っていく。
もう外も大概暗くなってるし、片して着替えて、オレも早く帰んねーと。
なんて考えながら、ふと気がつくと、更衣室には元希さんとオレの二人だけ。
………だから、なんでだよ。
成り行きまかせ、雲まかせ
結局オレは、ここ最近がいつもそうであるように、例によって元希さんと二人で帰ることになった。
つっても、基本的にお互いチャリ通なんで、別に荷物持たされるとかそういう横暴はない。
ちょいちょいコンビニに寄ったり、その辺のファミレスに入ったりしないでもないけど、そーいうときには、なんでオレこの人とつるんでんの?と思ったりもする。
あぁ、今日も、ほら。
「タッカヤ〜、コンビニ寄ろーぜ。オレ、肉まん食いたい」
このコンビニは、ここ最近の定番寄り道コースだ。
寄るのはいいし、アンタが肉まん食いたいのも良いけど、
「奢りませんよ」
先手を打って、一言釘を刺す。
そしたら元希さんは、子どもみたいに口を尖らせた。
「えぇ〜、タカヤのケチ……」
「ケチとか何とか以前に、後輩にたかるのやめてくださいよ」
えー、じゃあ自腹で買うから、コンビニ寄ろ。なんて言ってる元希さんの斜め後ろに自転車を止めて(だってこの人、オレの返事も聞かずに既にコンビニにチャリ停めてるし)、はいはい、ってな感じで自動ドアをくぐった。
あー、オレ、この人甘やかしすぎ。
テキトーに雑誌コーナーで時間つぶしながら、光反射して店内を写すガラスと、その中で動くエースピッチの姿を、見るともなしに見ていた。
こーして、ちょっと離れてみると、彼が整っているのが分かる。
身長高いしー、きれいに筋肉ついてて力強い。
つーか、元希さんとオレって、なんかおかしい取り合わせじゃねぇ?
取り敢えず同い年には見えないし、クラブの先輩後輩ってのが一番しっくりなんだろーけど、普通そういう乗って、同学年でつるむだろ。
そもそも、なんでオレ元希さんと一緒にかえってんの?
練習中もずっと組んでんだし、いい加減飽きてもよさそーなもんなのに。
わっかんね。
ガラス越しに、お目当てのモン買って上機嫌で俺を呼ぶ元希さんの姿が見えて、置いて帰ったりはしないんだ、って、変なことにちょっと安心して、雑誌を置いて元希さんの元に向かった。
離れたところから見た元希さんと、その横に想像のオレの姿は、なんかおかしいと思ったけれど、駆け寄ってしまえば、これ以上なく落ち着いてなじんでいる気がした。
だって、キャッチャーに、ピッチャーのそば以外に居場所なんてあると思えないし。
なんとなく、これでいいか、と思ってしまった。