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スイカ割り

佐樹:作


夏が来た。今年も夏が来た。熱い暑い夏が来た。

夏になると、恒例の行事がいくつもある。

花火大会に、そうめん流し・・・・

海に行くと、ビーチバレーに、砂埋め地獄・・・・

そして、スイカ割り・・・・

毎年、夏になると海岸のあちこちではスイカ割り大会が繰り広げられる・・・・・・

綺麗に割られたスイカはみんなで食べられるが中にはグシャグシャで砂まみれになって廃棄されるものもある。

もったいない話だ。

スイカの神様がいたら怒るだろうなぁ〜と僕は思っていた。

とか、思いつつも、夏の風節であるスイカ割り大会に僕も参加していた。

みんな空振りしたりしていたが、中には綺麗に割るやつもいて結構盛況だった。

やがて、僕の順番が来たとき、一つの大きなスイカが用意された。

今年一番の大物らしい。

僕は、目隠しをされて三回廻された。

その間、僕は心の中で「ごめんね・ごめんね」を繰り返していた。

やがて廻され終わり棒を持たされた。

ふらつきながら棒を高く振りかぶるとスイカの気配を感じながら歩み寄った。

何を隠そう僕はスイカ割りの名人だった。

いつも100発100中でスイカを真っ二つに割っていた。

今年もそのつもりで挑んだのだが・・・・・・

 

「えいっ!」

狙いをつけた僕は思いっきり棒を振り下ろした。

棒はスイカの中心部に見事命中した・・・・・・筈だったが、何故か割れなかったのだ。

その後、何にも挑戦し命中させていたがスイカが割れる事はなかった。

僕は、もう一度だけ挑戦した。

「南無参!」

僕は念じながらスイカに挑んだ。

叩き終わった僕は目隠しを外しスイカを見つめた。

ひびが入っていきやがて二つに割れようとしていた。

そのときだった。

「誰?私を起こしたのは?」

と、小さな声が聞こえた。

そしてスイカから白い蒸気なようなものが上がって空に消えていきスイカが真っ二つに割れた。

その中は、真っ赤な果肉が・・・・・・は、なかった。

空っぽで中身のないスイカだった。

みんな吃驚していたがそれが最後のスイカだったから大会が終了となってしまった。

そして、割られたスイカは配られ食され最後のスイカもゴミとして片隅に集められた。

やがて夜を迎え・・・・・・

 

「私のおうち・・・・・・壊されちゃった・・・・・・」

白い霧状のものがゴミのスイカの周りを回っていたが・・・・・・

やがて、一軒の家へと向かっていった。

 

その家では、先ほどスイカ割りの青年が寝ていた。

「今日の最後のスイカは何だったんだろうか・・・・・・」

そう、微睡んでいたとき、窓に何かの気配を感じて振り向くとそこにスイカがあった。

「??????」

起きあがってみてみると、それは形・大きさ・色と申し分のない一品ものだった。

近付いてそのスイカを捕ろうとした瞬間、フワッと浮き上がった。

やがて、スイカは形を変え小さな少女の形をした精霊に変わった。

「あなたね!私のおうちを壊したのは!責任を取ってもらうわよ!」

「何の事だ?」

「覚えが無いと言うのね!」

「それよりおまえは何だ!」

「私?私はスイカの精よ!」

「スイカの精?するとあのスイカが・・・・・・」

「やっとわかったようね!あれが私のおうちでもあり妖精界への入り口!それをあなたが壊したのよ!だから責任を取ってもらうわよ!」

「そんな・・・・・・」

彼女は大きく息を吸い込むと僕に向かって吹きかけた。

すると、彼女からいくつものスイカの種が飛んできて僕の身体はスイカの種だらけになってしまった。

そしていくつかの種を飲み込んでしまった。

暫くすると体中に吹きかけられた種は消えてしまっていた・・・・・・そして彼女は言った。

「もうじき始まるわよ!

  飲み込んだ種がそろそろ発芽するわよ!そうしたら・・・・・・」

僕は最後まで彼女の言う事が聞けなかった。お腹が猛烈に痛み出したからだ。

「始まったようね!」

僕はトイレに行こうとしたがすでに身体が言う事を聞かなくなっていて動けなくなっていた。

暫く藻掻いている内に痛みは治まってきたものの、今度は猛烈に身体中が熱くなっていった。

「楽しみだわねっ!」

そうして僕の身体に変化が始まった。

動けなかったが目は普通に見えていたから自分の変化の一部始終を見つめる事になってしまった。

まず最初に始まったのが、全身の色素の変化だった。

真っ黒に日焼けしていた肌がいったん白魚のごとく白くなりそして薄緑色へと変化していった。

そして、身長が縮んでいき、着ていた浴衣がダブダブになってしまった。

と、同時に胸のあたりがむず痒くなったかと思うと膨らんでいった。

やがて、お尻がふくよかになるとともにウエストは締まっていった。

そして、股間の膨らみが段々と無くなっていきペッタンコになると、今度は中に何かが進入していく感じがした。

やがて、お腹の中を這いずり回る感じが二つに分かれて暫くすると止まった。

そして、僕は動けるようになった。

立ち上がって鏡を見ると、そこにはうす緑色をした女性が映っていた。

「これが僕?」

「そうよ、それが今のあなた・・・・・・でもそれで終わりじゃないのよ!」

そういうと、彼女は再び白い霧となると僕の身体にまとわりついて・・・・・・やがて股間の穴から僕の体の中へと入っていった。

そして、数分もたたない内に僕のお腹は見る見る膨らんでいった。

そして、猛烈な痛みが始まった。

僕は声も出せず痛みと戦った。やがて痛みが下がっていき僕の股間から何かが出ようとしていた。

 

やがて・・・・・・

私は一つのスイカを産んだ。それは僕だったものが叩き割ったものとそっくりの一級品だった。

そして、声が聞こえた。

「これでやっと帰れるわ!」

そして、そのスイカは幻のように消えていった。

そして私の身体は・・・・・・

元に戻る事はなかった。ただ薄緑色から白魚のような色の肌にはなっていたが・・・・・・

私は思った。

「もう、スイカ割りはできないわね!」と・・・・・・

 

 


夏の風物詩を書いてみました。如何でしょうか・・・・・・・皆さん、食べ物を粗末にすると罰が当たりますわよ!・・・・・・・・

 

 

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