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開かずの扉

作:逃げ馬


 

 奥寺優一と大木俊彦は、高校一年生。二人は、幼馴染でこれまで、幼稚園から高校までずっと一緒の学校へ行っていた。

 小柄で、身長が165cmしかなく、華奢で、一目見ると、女の子のように見える優一、学校の女子からは、「かわいい」とは言われるが、いわゆる“もてる”タイプではない。それに対して、俊彦は大柄でその身長は、185cmを超えクラスでは、“ノッポさん”と呼ばれていた。それでいて、面倒見が良く、顔も悪くないため校内ではいわば“もてる男子”の部類に入っている。全く対照的な二人だったが、何故か気が合い、16年間親友でいる。

 二人は、高校の水泳部の主力選手だった。彼らの通っている城南大学付属高校は、県内有数のエリート校だけあって、クラブ活動も盛んで水泳部も室内温水プールで毎日練習していた。

 

 その日も、二人は、夕方まで学校の水泳部でハードな練習をしていた。

 部活が終わると、いつものように帰り道にあるハンバーガー・ショップに行くと、練習でお腹のすいた二人は、ハンバーガーをぱくついていた。いつものように、二人でいろいろな話をしていると突然、俊彦が、「おい・・・今何時だ?」

「えっ?」

優一は、店の壁に掛けてある時計に目をやった。

「650分・・・いけない!」

「どうしたんだ、優一?」

優一は、あわただしく、かばんを肩に掛けながら、「今日は、7時からモー娘の、特番をやるんだよ。忘れてた!」

慌しく席を立とうとする優一につられて、俊彦も席を立って優一に続いて店を出た。

「今から帰っても、もう始まっているぞ!」

走って帰ろうとしている優一の後ろから、俊彦が言う。

彼らの家までの間には、古い大きな工場があった。その大きさは、反対側にある彼らの家まで走っても20分は、かかるほどだ。

「こうなったら、工場の中を突っ切るしかないね!」

優一が、息を切らせながら言った。

「おい・・・それはまずいだろ!」

俊彦の言葉に、

「子供のころは、よく入ったじゃないか・・・あの、“開かずの扉”の所から抜け出したら、5分で行くよ!」

そう・・・二人は子供のころから、あちこちで遊んでいた。川の堤防や、町の公園、そして、この町の真ん中にある広い工場だ・・・。

工場の彼らの家側には、小さな扉がある。この古い鉄製の扉は、どんなことをしても開かなかった・・・それで二人は、“開かずの扉”と呼んでいた。

工場の門の前にくると、二人は守衛室の陰に隠れ、中を覗いた。

守衛室の中には、初老の警備員が椅子に座って新聞を読んでいた。

「いつものやつだな・・・。」

優一は、子供の頃からそうしていたが、守衛室の道路側の窓に、小さな石と、空き缶を投げると、素早く反対側に廻った。

『カーン・・・』

警備員は、顔を上げると、道路側に歩き出しドアを開けると外に出た。

その頃には、もう二人は工場の敷地内を全力疾走していた。

「ハハハハハッ・・・・。」

 二人は、笑いながら構内を駆け抜けると“開かずの扉”のある塀まで来た。

「ハア・ハア・ハア・ハア」

二人は、塀にもたれて呼吸を整えた。

「さあ・・・どうする?」

俊彦が聞くと、優一は、

「子供の頃と違って、廃材を置いてないな・・・扉を開けよう。」

「開くのか?」

「なんとかなるさ!もう僕らも子供じゃないしな・・・。」

優一は、扉を必死に内側に引こうとするが、錆付いた扉はびくともしない。

「押すんじゃないのか?」

俊彦が、周りを見ながら言うと、優一は、体重をかけて必死に押す。

「早くしないと辻ちゃんを見れないよ!」

優一が笑いながら言う・・・。

「こら、貴様ら何をしている!!」

「やばい!!」

警備員が、こちらに来る。

優一は、少し後ろに下がると扉に体当たりをした。

「えいっ!!」

『ガシャン!!』

扉が勢いよく開き、優一がくぐった。その瞬間、俊彦の視界には優一のくぐった扉が光ったように見えた。次の瞬間、古いコンクリートで出来た周りの塀が崩れだした。

「優一!!」

「危ない!!」

轟音を立てて塀が崩れていく・・・。

俊彦は、塀に向かって駆け出した。凄まじい土埃の中で、優一を捜す。

「優一!!どこだ!」

埃の中に倒れながら、誰かが腕を振っている。

「大丈夫かっ!」

警備員が走ってくる。俊彦は、慌てた。

「やばい、逃げるぞ、優一!」

俊彦は、優一の柔らかく細い腕を引っ張ると、二人は全速力で走っていった。

 

公園まで来ると、二人はベンチに倒れこんだ。

「ハア、ハア、ハア、災難だったな、優一・・・こっ、これで今日は、モー娘見れないな・・・・えっ・・・?」

俊彦は、目を見張った・・・一緒に走ってきたもう一人・・・それは、優一ではなく、彼の学校のセーラー服を着た少女だった。

「しまった!優一は、まだあそこに・・・?」

「僕なら、ここにいるよ!」

ベンチから立ち上がった、セーラー服を着た少女が可愛らしい声で言う。

「いや・・・君じゃなくて、僕は、奥寺優一を探さなきゃいけないんだ・・・。」

「だから、僕は、ここにいるじゃないか・・・。」

「いや・・・。」

俊彦は、イライラしはじめた。この少女・・・埃まみれのセーラー服姿の少女・・・彼女は、自分をからかってるのか・・・。そう考えていると、突然・・・・。

「ウワーッ!!」

少女の叫び声に、俊彦の意識が、現実に戻った。

彼女は自分の胸や、髪の毛、腰や、スカートの裾に手をやり、自分の体を撫で回している・・・。そして、

「俊彦・・・僕、女の子になっちゃったよ〜」

少女は、ベンチに崩れるように座り込んで泣き出した・・・。そんな彼女を、呆然と見る俊彦・・・。

優一は、驚いた。扉をくぐった瞬間、体がしびれたような感じがして道に転んでしまった。次の瞬間、塀が崩れだした。巻き上がる埃の中で彼を呼ぶ声を聞いて、手を振ると、腕を引っ張られて立ち上がって、夢中で一緒に走った。その時、胸の辺りが、重かったし、足には、何かがまとわりついて走り難かった。それにもかまわず、ひたすら走って逃げた。公園についてみると、俊彦は目の前に自分がいるのにまるでわけのわからない事を言っている・・・。そう思って視線を下に向けて足元を見ると、どう見ても彼はスカートをはいていた。上は、セーラー服だ・・・胸のあたりは。ふっくらしている。

パニックになった彼は、思わず叫んで、自分の体をあちこち触ってみたが、それは、そのセーラー服姿の体が、自分の体であることを確認することになってしまった・・・。

俊彦は、ようやく自分を取り戻すと、

「君は・・・優一なのか?」

「そうだよ!さっきからそう言ってるじゃないか・・・。」

「でも、優一は、男だぞ・・・。」

「僕にも、わからないよ・・・。」

「君が、優一だという証拠でもあるのか?」

少女は、俊彦と、優一しか知らないことを話し出した・・・。子供の頃の事、二人でした悪戯の事、そして、俊彦が振られた女の子の話になると・・・。

「ちょっと待った!!・・・じゃあ、本当に優一なんだな・・・。」

「やっとわかってくれた?!」

「でも、信じられないぞ!そんなカッコじゃ・・・本当に、女の子みたいだしな・・・。」

「本当に、女の子になったみたいだよ・・・。」

「えっ?」

「だって・・・胸があるし・・・あそこに何もないよ・・・。」

優一の言葉にびっくりする俊彦。

「じゃあ、・・・これからどうするんだ?」

「・・・家に帰ってみるよ・・・。」

「大丈夫なのか?家の人に怪しまれるんじゃ・・・。」

「でも、どうしていいか解らないしな・・・こんなカッコじゃ・・・家に帰れば、何か解るかも・・・。」

「そうか、・・・じゃあ、一緒についていってやるよ!・・・俺が一緒なら、説明もしやすいしな・・・もし、放り出されたら、今日は、俺の家に泊まればいいよ!」

「ありがとう!俊彦。」

優一は、ほっとした。もし、一人だったら、この状況でどうしていいかわからない。この姿で、どうやって家の人間に納得させるか、彼の中では、考えがまとまっていなかった。俊彦が一緒なら、確かに説明しやすいだろう。

一緒に優一の家に向かって歩き出す。

二人で並んでいると、優一の身長が、今までより一回り小さくなっていることに、俊彦は気づいた。横目でちらちらと優一を見る。

埃まみれではあったが、ストレートのロングヘアーに、狭い肩幅、細いウエストを見ていると、本当に、親友が女の子になってしまったことに、改めて気づかされる・・・しかし、それだけでは・・・?

「さあ、ついたぞ。」

二人は、優一の家の玄関の前に立った。

「開けてくれよ。」

優一が、俊彦にすがるような視線を向ける。

一瞬、俊彦はドキッとしたが、

「いや・・・自分で、普段通りに開けてみろよ。」

優一は、深呼吸すると、ドアを開けた。

「ただいま!」

「お帰りなさい。」

奥から、優一の母親が出てきた。優一は、一人っ子だ、兄弟はいない。

「まあ、有美、なんてカッコしてるの!」

母親のごく自然なリアクションに、二人は、きょとんとしてしまった。

「お風呂が沸いてるから、さっさと入ってしまいなさい!」

そして俊彦に向かって、

「俊彦君、いつもいつもごめんなさいね。この子、本当にお転婆で・・・。」

「ハア・・・。」

「もう、有美!早くしなさい・・・」

優一の母親は、優一のことを“有美”と呼んで、家に引っ張りあげると、お尻をポンと叩いて奥に行かせた。

「俊彦君、わざわざありがとう。これからも、有美のことお願いね。」

母は、俊彦に御礼を言った。

「いえ・・・じゃ、また明日な。」

俊彦は、優一=有美に向かって言った。

「うん、ありがとう。また明日。」

優一は、俊彦に挨拶をすると首を傾げながら風呂場に向かった。

「着替え出しとくから、早くお風呂に入りなさい!もう・・・少しは、女の子らしくなってよね!」

母の言葉に、優一は、

「母さん・・・僕、おかしくない?」

「何言ってんのこの子は・・・おかしいといえば、「僕」なんていつも言ってる女の子は、おかしいわよね。」

そう言うと、母は、二階の優一の部屋の方に歩いていった。

洗面所で、優一はセーラー服を脱ぐと、脇に置いてある洗濯機の中に入れた。スカートを脱ぐと、下着姿の自分の体を見る・・・さっきまで真っ平らだった自分の胸には、今は、薄いピンク色のブラジャーに包まれた大きなふくらみが出来ていた。

視線を下に移すと、ブラとおそろいのショーツが目に入る。そこにも、男だったことの面影は、全く無かった。

「ああっ・・・。」

思わず優一は、天を仰いだ

「ふ〜う・・・。」

女の子のかわいらしい声でため息をつくと、優一は、下着を脱いで風呂場に入った。

風呂場に入った途端に、優一は、固まってしまった。

正面の鏡には、不安げな目をした、美少女が写っていた。

ストレートのロングヘアー、小さな目鼻立ちのはっきりした顔、狭くなった肩幅、豊かな胸の膨らみ、そこからウエストがきゅっとくびれ、大きくなったヒップから太もも、細く引き締まった足首へと続いていく。股間は、すっきりしてしまっていた。

「・・・本当に女の子なんだ・・・。」

ドギマギしながら何とか体を洗い終わった優一は、風呂から出ると、洗面所の籠の中を見て、また驚いた。黄色の女の子用のパジャマに、水色のブラとショーツ・・・。

「ハア〜・・・こんなの着るの・・・?」

そうは言っても、他に着るものは無い。ぎこちない手つきで、優一は、それを身に付けた。ブラは、ぴったりと胸を包み、滑らかな肌触りのショーツに優一は、何故かほっとした。

「これが・・・僕の部屋?」

風呂場から自分の部屋に戻った優一は、あまりの変貌にびっくりした。

部屋の様子は、すっかり変わっていた。明るい色合いの壁紙と、カーテン・・・ベットの側に置いてあるぬいぐるみ、少年コミックは、少女コミックになっていた。大好きだった、モー娘のポスターは、SM○Pのポスターになってしまった・・・。

「何でこんなことに・・・。」

はっとして、優一は、たんすを開けてみた。そこには、女の子の服が、ずらりと並んでいた。

「ワンピースに、セーラー服・・・キャミソール・・・げっ・・・ミニスカートまであるよ。」

何でこんなことに・・・優一は、部屋の真ん中にペタンと座り込んでしまった。優一は、気付いていないが、それは、女の子じゃないと出来ない、上から見ると足がMの形になっている“ペタンコ座り”になっていた。「何でこんなことに・・・。」考えているうちに夜は、ふけていった・・・。

 

翌日・・・。

「おはようございます。」

俊彦が、いつものように優一の家に迎えにきた。

「あら、俊彦君、おはよう。ちょっと待ってね。有美!俊彦君が迎えに来たわよ。」

優一=有美が、セーラー服を着て玄関に来た。

それを見た俊彦は、ドキッとした。昨日は、周りが暗かったし埃まみれだったからわからなかったが、今、こうして見る、優一=有美は可愛かった。

「じゃあ、行ってきます。」

二人は、学校に向かって歩き出した。

「昨日は、どうだった?」

「それが、うちの親父も、お袋も僕のことを“有美”って呼んで、まるで最初から女の子だったみたいに扱うんだよ。」

「それで?」

「部屋まで、女の子の部屋になってしまって、アルバムまで、僕のところが、今の女の子の僕の写真になってるんだ・・・。」

「でも、俺は、いまだにおまえが男だったことを知ってるんだぜ。」

俊彦がはっとした。

「そういえば、おまえがそんなことになったのは、あの工場で、扉を開けてからだよな。あれをもう一度くぐれば戻るかもしれないぞ。」

「そうか!あの時、俊彦は、そばに居たから僕のことを覚えていたんだ!・・・ありがとう!」

急に涙ぐむ、優一=有美を見て、俊彦は、ドキッとした。

「ほら、とにかく行こう!」

二人は、工場に向かった・・・しかし・・・。

「そんな・・・。」

がっくりしている、優一=有美。

工場の崩れた塀は、綺麗に片付けられ、周囲には、ロープが張られていた。

「すいません、ここにあった鉄の扉は?」

俊彦が、警備員に聞いた。

「ああっ・・・あれね・・・邪魔だからということで、さっきダンプで処理業者が引き取っていったよ・・・ところで、あんた何処かで会ったかのう?」

「いいえっ・・・どうもすいませんでした!」

俊彦が、慌てて戻ってきた。

「だめだ、捨てられたらしい・・・手掛かりが消えちまった・・・。」

「そんな・・・。」

悲しげな顔をして下を向く、優一=有美・・・俊彦は、横を向いて、

「とにかく・・・学校に行こうぜ。」

 

 

学校に近づくと、周りに同じ学校の登校途中の生徒が、増えてきた・・・。

「おはよう!」

突然、知らない男子生徒に挨拶される、優一=有美。

「あっ・・・おはよう。」

反射的に返事をしていた。

「おい、あいつを知っているのか?」

俊彦の問いに、

「ううん・・・誰だったかなあ・・・?」

そういっている間にも、どんどん男子生徒に、優一=有美は、挨拶をされる。そして、何故か俊彦に冷たい視線を向ける男子生徒も居た。

学校に着いた。優一=有美が下駄箱を開けた途端。

「何だこれ?」

下駄箱の中には、可愛らしい封筒に入った手紙の山が出来ていた。

「どうしたんだ?」

「これって・・・ラブレター?」

「おまえ・・・ひょっとしたらもてるんじゃないか?」

「でも・・・。」

優一=有美は、封筒を裏返して差出人を見ると言った。

「これって、全部男子からだよ!・・・男からじゃなあ・・・。」

 

教室に行くと、優一=有美の周りには、たちまち男子生徒が集まってきた。

「ねえ、奥寺さん、今日の帰りケーキを食べに行かない。」

「一緒に帰ろうよ。」

「メルアド教えてくれない?」

そんな声を苦笑いしながら、うまくかわす、優一=有美。そんな彼女()を見ている俊彦に、一人の男子生徒が、

「おい、俊彦、おまえ奥寺さんと、付き合ってんのか?」

「えっ?」

「いや・・・いつも一緒にいるからさ・・・。」

「別にそういうわけじゃあ・・・。」

「そうか!!」

うれしそうに、俊彦から離れていく男子生徒を見送りながら、俊彦は考えこんだ。

 

放課後、二人は、水泳部の練習に向かった。

男子の更衣室に入ろうとする、優一=有美に、

「ちょっと奥寺さん、こっちよ。いくら、大木君がそっちに行くからって・・・。」

女子生徒に止められて、赤くなりながら、優一=有美は女子更衣室に入った。

更衣室に入ってみると、ちゃんと“奥寺”と書いたロッカーがあった。

次の瞬間、優一=有美は、真っ赤になった・・・。ロッカーから出てきたのは、当然女性用の競泳水着だった。男の頃は、それを身に付けた女性を見ると、自然に目がいっていたが、今、自分が身に付けるとなると・・・。

「・・・!」

優一=有美は、慌てて下を見た、そう、ここは女性の着替える部屋・・・今、周りでは、彼の親しい人達(当然女性)が、水着に着替えている・・・男の頃は、憧れの場所だったが、抵抗無くその真ん中に放り出されると、目のやり場に困った。

「有美、早く着替えちゃいなよ。練習が始まるよ。」

「う・・・うん・・・」

優一=有美は、その、ピッタリ体のラインの出る水着に大急ぎで着替えると、プールに向かった。

室内プールに入ると、男子部員たちの視線が、いっせいに、優一=有美に集まった。

優一=有美は、真っ赤になって下を向く。

一人の男子部員が、俊彦に囁く。

「おい、大木・・・奥寺さん、付き合ってる奴いるのか?」

「・・・・いや・・・いないと思うよ。」

俊彦も、優一=有美を見ていた。周りの男子生徒が夢中になるのも、彼には理解できた。それほど、居並ぶ女子部員(女子生徒)の中でも、優一=有美は、光り輝いていた。見事なプロポーション、可愛らしいしぐさ・・・ふと、窓の外を見ると、たくさんの男子生徒が、プールを見ている・・・目当ては・・・。

女子部員たちの練習が始まった・・・居並ぶ部員たちの中でも、優一=有美は見事な泳ぎをしていた。

周りで見ている生徒・・・俊彦にもまるでそれは、人魚のように見えた。

優一=有美が、プールから上がると、一人の女子部員が声をかけた。

「相変わらず有美は、凄い泳ぎをするね、私なんか、まるでついていけないよ。」

「そう?」

優一=有美は、昨日からの混乱で、ストレスが溜まっていたが、思いっきり泳いだことで、少しホッとした。

 

 

シャワーを浴びて、着替えを済ませ更衣室を出ると、優一=有美は誰かに腕をつかまれた。

ビックリして、振り向くと俊彦だった。

「何だ俊彦か・・・脅かすなよ。」

「おい・・・優一、いや、有美・・・。」

「・・・?」

「俺と付き合ってくれよ。」

「へっ・・・?」

「付き合ってくれよ。」

「おい!馬鹿なこと言うなよ!俺は、男だぞ!」

「今は、女じゃないか・・・俺は、今のおまえが好きなんだよ。」

「ちょっと、気は確かか?」

俊彦を見る、優一=有美。その目を見て危険を感じて後退りする。

「ずっと一緒だったんだ・・・いいだろ!」

「ちょっと・・・。」

その時、

「あっ・・・大木!抜け駆けするなよ!」

たくさんの男子生徒が走ってくる。

「奥寺さん!」

みんなが、口々に叫びながら走ってくる。

慌てて逃げ出す、優一=有美。

「なんで・・・なんでこんなことになるんだ!」

 

夕焼けの照らす校庭を、セーラー服姿の女の子が、綺麗な長い髪をなびかせて、たくさんの男子生徒に追いかけられながら、校庭を凄い勢いで走り去っていった・・・。

 

 


こんにちは!逃げ馬です。 今回は、路線を変えて学園ものです。

自分なりの、TSFラブコメを書いてみようと思って書いてみました。

いざ書きあがってみると・・・?

今回は、いろいろ自分なりに試してみました。皆さんには、楽しんでいただけたでしょうか?

また、カキコなどに感想を書いていただけたらうれしいです。

拙い文章を、最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。

 

なお、この小説はフィクションであり、実在の人物、団体には、いっさい関係の無いことをお断りしておきます。