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兄弟?

佐樹:作


母が死んだ。
春先の寒い日だった。
父が海外へ単身赴任中の出来事だった。
連絡をしていたが、飛行機が間に合わず僕たち兄弟で母を看取った。
父が到着したときには母は冷たくなっていた。
父は声を押し殺し泣いていた。
親族に連絡を取り葬儀が行われ、僕たちは母に別れを告げた。
父は忙しい人なので、一週間後仕事のため戻っていった。
僕たち兄弟は二人で暮らすことになった。
一応父は家と僕たちの面倒を見てくれる家政婦を雇っていた。
家政婦は家の片付けと僕たちの料理を作ってくれるだけだった。
それだけで十分だった。
僕の兄は、中学2年生、僕は小学5年生だった。

母が無くなって、二人の生活に慣れ始めた頃から
兄は母の部屋に頻繁に出入りするようになっていた。
兄は、母にとてもよく似ていた。色が白く線も細く声変わりもしていなかった。
兄が中で何をしているのかは判らなかった。
兄が母の部屋に入っている間は決して中に入れなかったから・・・
半年後父が一週間の休暇で戻ってきた。
その夜も兄は母の部屋へと入っていった。
そして、父が兄の入っている母の部屋に入った。
暫く話し声がしていたようだが、やがて母の名を呼ぶ父の声が聞こえていた。
そして、静かになった。
父の休暇の間の夜は、兄と父は母の部屋で眠った。
休暇が終わって、父は仕事で海外に戻っていった。
一週間ほどして、兄宛に国際郵便が届いた。
次の日から、兄は朝晩、ビタミン剤と言って白い錠剤と青い錠剤を2錠ずつ飲んでいた。
そして兄は僕とお風呂に入らなくなってしまった。

半年が過ぎて春が来た。
兄は中学3年になり、僕は小学6年生になった。
そして父も、休暇で帰ってきた。
また同じように、兄と父は母の部屋で寝ていた。
休暇が終わり父が帰る前の日、父は僕に言った。
お兄さんの言うことをよく聞くようにと、そして同じ物を飲みなさいと。
そして、兄は僕にもビタミン剤を飲ませるようになった。
それから暫くした頃、兄は僕を連れて母の部屋に入った。
兄の取った行動に僕はびっくりした。
兄は着ていた服を脱いでいった。

兄の体を見てみると、何かが変わっていた。
元々細かった兄の体は、細いながらも胸とお尻がふっくらと丸みを帯びていた。
全部脱ぎ終えた兄がこちらを向いたとき僕は兄の胸に二つの膨らみが有るのを知った。
僕は何にも言えなかった。
兄は母のタンスを開けると、母の着ていた下着を取り出しも身に着けていった。
そしてクローゼットから、ワンピースを取り出し着替えた。
その後兄は化粧台に座り、お化粧をしていった。最後にカツラを被るとこっちを向いて言った。
「どう?明、お母さんよ!」
そう言って母とそっくりになった兄は僕を抱きしめてくれた。
「ごめんね、明、寂しい思いをさせて・・・」
僕はそんな兄を羨ましく思った。

それからの兄は綺麗になっていった。
家の中でも、外に出るときも母の服を着て行くようになっていった。
ただ学校に行くときだけは、学生服だった。
兄は夏休みにはいると父の元へいって入院をして手術をした。
帰ってきてからは、私とお風呂にはいるようになった。
姉に呼ばれてお風呂に入った。
股間にあったはずのものがなかった。
どこから見ても素敵な姉だった。
そして、次の春が来て兄は中学を卒業、僕は中学へとあがった。
兄は、どうやったのかわからなかったが、女子高へ入学できたらしくセーラー服を着ていった。
どうやら女子高生になったようだ。

僕も中学にあがった頃から身体に変化が現れた。
それは兄と同じものだった。
そして兄は僕にも新しい下着を着せるようになった。
それは可愛らしい女の子のものだった。
僕はそれを身に着けたとき、もう元に戻れないことを知った。
でも、それで良かった。
僕も兄のようになりたかったからだ。いや今では姉と呼ばないといけないだろう。
そして僕も、私も姉のように女の子の服を着て過ごすようになった。
そのころには私の胸もすでに膨らみ始めていた。
私も、中学を卒業したら姉と同じようになれる。
とても楽しみだ。

 

 

そして私たちは、姉妹となった。

 


気まぐれな短編です。読んで戴いてありがとうございますね!