作 かもライン
学院は山を背にしている為、少し登ればその全景が見えた。
志紋恭介(しもんきょうすけ)は、何をする訳でもなくただ丘の上から、今ごろ卒業式の真っ最中であろう講堂を、見下ろす様に眺めていた。
左側に初等科と、自分達が今までいた中等科。その隣、目の前の敷地に高等科。右手の方に大きく短大と大学。その短大の前には幼稚園という、とても広大な敷地が一望出来た。
3月だからまだ肌寒い。しかしこの、ポカポカした日の光を浴びる事は気持ちよかった。山の中にまだ花はないが、学校の敷地のあちこちに白梅・紅梅が咲いていた。
志紋は別に花などに興味はなかったが、この梅の花だけは好きだった。
桜や他の花のように暖かくなってから咲くのではなく、まだ寒いのに堂々と自己主張しているこの花が。
そう、まるで『もう寒くなんかないぞ』と、やせ我慢しているようで。
『われは知れ〜り、主ぅの恵みぃ。若い生命の歓びいぃだきぃ』
聖歌が、広い講堂から聞こえてきた。
壇上の横でシスターがパイプオルガンを演奏し、若い男女の学生たちが合唱しているのであった。
今日は、聖ガラテア学院中等科の卒業式。
卒業して、この学院の高等科へ進む者、公立の高校へ行く者、また他の私立の高校を受験し進学する者。いずれにしても明日よりここにいる者たちはバラバラに散っていく事になっていた。
また聖ガラテア学院はミッション系の学校としては、中等科までが共学という珍しいタイプの学校であった。
とはいえ中等科が共学になってから10年足らず。まだ女生徒の方が5対1ぐらいで圧倒的に多く、初等科でも3対1ぐらいだろうか。
ただし高等科はまだ、かたくなに女子学生のみを守っていた。
短大も女子のみだったが、これは保育科と衛生科という性格上、仕方ない。
大学は共学で、国文学科、教育学科、社会福祉学科とあり
―
それでも女生徒の方が圧倒的に多い事に変わりはなかったが
―
この手のミッション系カソリックの学校にしては、比較的男子禁制という程堅くはないと言えよう。
『わ〜が主の召しにぃ、応えて行かん。生くる甲斐ぃ、主にぃこそあれ〜。アーメン』
聖歌が終わった。
卒業式は無事に進行しているのだろう。
志紋は、それが気にならない訳はない。
当日いきなり抜け出してサボタージュを気取ってはいても、学校が一望できるこの場所に来てしまっている事から、それはうかがえる
ふと、志紋の背後の茂みがガサガサと音をたてた。
ふり返った。
木々の間から茂みをかき分け、まだ若いシスターが顔を出した。
「やっぱりここね」
シスターアグネス・アンナ佐倉は、修道女の長いスカートに苦労しながらも藪の茂みを抜けた。
「シスター・アンナ…」
普通ならこの手のサボりの現場を見つけられたら、慌てたりするのが普通なのだろうが、そういう意味では慣れっこになっていたのか、志紋もため息を一つついただけだった。
「こうして私が追いかけてきたのは、何回目だっけ?」
「十と…三回目ぐらいだったと思います」
「そうね。もうちょっとあったかと思ったけど、そんなものだったかしら。お隣座っていい?」
「はい」
シスター・アンナはスカートの埃をはらって、志紋の隣に腰掛けた。
「志紋くんも今日で卒業だから、安心していたけど、最後の最後でやってくれたわね」
「すみません。どうしても、あの場所に居たくなくて…」
「志紋くんは…」
アンナは、どうして卒業式に出たくなかったの?と聞こうとしてやめた。何か、志紋の最も痛いところをえぐる様な気がしたので。
その代わりに
「初めて私が追いかけてきた時の事、覚えている?」
と、言葉をすりかえた。
「はい。シスターが担任交代になった直後の、確か僕が中学1年の秋でしたか」
志紋はつっかえる事もなく、さらりと言った。
そう、もともとシスター・アンナは最初から志紋達のクラスの担任ではなく、いきなり体調を悪くして入院した前任の代りに、大学を卒業し、教職免許をとったばかりの彼女と交代したのだ。
「私はショックだったわ。いきなり授業中、飛び出す様な子がいるとは思いもしなかったから」
「僕も、まさか追いかけてくるとは思いませんでしたが」
その頃既に、志紋の飛び出しグセは、珍しくはなかった。
どうせ頭を冷やせば、1時間くらいで帰ってきて、平気で次の授業を受けていたりする。
もはや先生もクラスメイトも慣れっこになっていたと言っていい。
「あの時は本当にどうして良いのか。初めて受け持ったクラスで、しかも私の受持ちの授業で、何が悪かったのか分からなくて…。
でも今となっては懐かしい思い出だけど」
「思い出ですか…」
「あら、どうしたの?」
アンナは志紋がむつかしい顔をしたのが少し気になった。
志紋もアンナが心配そうな顔をしている事に気付き、
「あ、ちょっとですね」
わざと明るく答えてから、一回大きく伸びをした。
その上でアンナの方を向いた。
表情が、先程と違って、真剣なものになっていた。
「あの、少し長くなると思うんですが、いいですか」
「ええ。どうせもうあの卒業式に、途中から入っていくつもりはないんでしょ」
「すいません」
シスター・アンナから見て志紋は、特別気にかかる存在だった。
彼はこの学校で、誰よりも成績が良く、スポーツも万能で、誰に対しても面倒見がよく、頼り甲斐もあり、3年の時などはそれが当然の様に生徒会長職をこなした。
ちなみにガラテアでは、これまで初等科も含め、男子生徒でこのポストに立った人はいなかった。
ただでさえ女生徒が多い中、人望を集めるのは、よりこの学校の中での模範生徒でなければならない。
骨のある男子生徒はたいがいこの学校の堅苦しさに嫌気をさしてやめてしまうか、牙を抜かれておとなしくなるかどちらかだ。
そんな中、志紋はそのどちらにもならず、不思議な魅力で、先生・生徒達から人望を集める、優秀な生徒だった。
だが優秀すぎるが故に、その影の部分がアンナには気にかかった。
その1つがこれ。
気に入らない事とかあると、まわりに当り散らす代りに、学校を飛び出す事があった。
シスター・アンナが最初にそれをされた時、ためらわずにこの丘まで彼を追いかけた。クラスの他の子をほったらかしてである。
本末転倒だが、それを志紋が逆に非難した。
なぜクラスをほったらかして、自分を追いかけてきたのか。
しかし彼女は聖書の中の、迷える子羊のエピソードを持ち出して、神を信じない志紋に神の愛を懇々と説いた。
さすがに志紋も根負けした。
その後も、何かと事あるごとに、志紋とアンナはその手の討論をした。
志紋は相変わらず、神を信じないという一点のみは譲らなかったが、そこまではアンナも強制しなかった。
だからこそ、アンナは、この気難しい志紋が心を許す一人になったとも言える。
「僕みたいな人間が、こんな学校に来ていること自体何かの間違いの様な気がします。実際ここに通う様になった理由も、僕が三歳になった時、三年制の幼稚園で空きがあったのが、ここだけだったからなのですが」
「幼稚園で?」
「そうです。親が共稼ぎで、どうしても三年制の幼稚園に入れたかったみたいで」
「ん?でも、幼稚園じゃなくて保育園とかなら…」
シスター・アンナがそう言うと、志紋は頭を掻いて言った。
「僕は当時からヤンチャでしたので、どうしても幼稚園じゃないと、と思ったのでしょう。保育園は子供の面倒は見ますが、躾はしませんから」
「で、直ったの?」
とシスター・アンナが聞くと
「まさか。人間そう簡単に変わりませんよ。変わったとしたら小学校の高学年以降ですか。」
志紋は笑って答えた。
「昔はこの堅苦しさが、嫌でたまらなかったんです。それでも多少はマシになったのかもしれません。せっかくだからと、そのまま初等科に続投しちゃいましたから。僕は嫌だと言ったのですが、親に強引に押し切られました」
「でもその頃の志紋くんの姿が目に浮かぶ様だわ」
「腕白な、悪ガキですよ」
「ええ、だからそういう志紋くんが」
そう言い、思わず二人は笑いあってしまった。
「でも本当に少しはマシになったと思います。バカな事はやっても、他人に迷惑はかけちゃいけないって事ぐらいは分かる様になりましたから」
「勉強も?」
志紋の今の学力はガラテアのみならず、県内でもトップクラスだった。
「勉強はずっと出来ましたよ。悪ガキ時代から。というより負けず嫌いですから、腕力でも学力でも。僕は単に、理屈にあわない事が嫌いなだけなんです」
「まさに正義の味方ね」
シスター・アンナは、何気なく言ったつもりだった。
しかし、その一言に志紋の顔面は蒼白になった。
体も少し震えていた。
「志紋くん?」
シスター・アンナは心配になって、声をかけた。
「すみません」
志紋は、顔を伏せたまま応えた。
「いまだにね、あの時の事を思い出す事があるんです。そうしたら、無性に情けなくなるんです。自分が…」
「あの事って…もしかして」
「聞いた事ありますか?」
「断片的にだけね。大変だった事は、色々聞いていたから」
「でも、僕自身がシスター・アンナに話した事はなかったですね。あまり僕も話したい事じゃなかったですし…」
シスター・アンナは、伏せようとする志紋の目を見つめた。
「じゃ、聞かせてくれる。その時のこと」
「聞いて、くれますか」
志紋がそう言った時、苦痛の表情の中、僅かに目が輝いた。誰にも話したくない事であると同時にまた、誰かに話したかった事でもあったのだろう。
そしてその一言を聞いた瞬間シスター・アンナは、“これは懺悔だ”と感じた。
懺悔であるのなら、シスターであるアンナはそれを聞かねばならない。聞いた上でその罪を、父と御子と精霊の名において許さねばならない。
罪を犯す事が悪い事なのではなく、自ら犯した罪を認めない事が悪い事なのだから。
神は悔い改める者を、お許しになられる。
なぜなら、人は皆、罪人だから。
「あれは僕が6年の時です。何かで遅くなってしまい、帰り道が一緒だった女の子達を、僕が送る事になったのですが…」
☆
「ようよう、その制服はガラテアのお嬢さんだろ」
志紋達は10人のガラの悪い子らに取り囲まれていた。
「あそこは名門だからなぁ、小遣いもたくさんもらっているんだろうなぁ」
年はだいたい同じくらい。取り囲んで、値踏みをつけるような目つきだった。
女の子達3人は志紋の影に隠れた。明らかに怯えている様子だった。
しかし志紋自身は、逆に気分は不思議と落ち着いていた。
冷静に、そいつらを観察していた。人数、手に凶器等は持っているか、体格はどうか、誰がリーダー格なのか。傍目に悟られないように探っていた。
数は10人。ポケットの中までは分からないが、武器になるようなものは見た感じ、ない。
もし殴られるのなら、殴られるでもいい。
お金が目的だとしても、志紋は余分なお金など学校に持っていかないから、取られるものもない。
しかし、背後の女の子達はどうだろうか。
怯えた、ある女の子が、志紋に身体を寄せてきた。
確かこの子は先日の誕生日に、念願のピァジェだったかの時計買って貰って今つけていた。
もし目をつけられたら、1発で取られてしまうだろう。
抵抗したら。取られない様に抵抗したなら…
女の子とはいえ殴られるかもしれない。
自分みたいな男なら、殴られる事にも慣れているが、
でも、この女の子達は…。
逃げる。
これは、もう無理だ。
自分一人なら何とでもなるが、女の子達は震えて動けそうにない。
なら仕方ない。
それしか方法は、ない。
志紋の論理回路にバイパスが通った。
次の瞬間、先に志紋の拳が動いていた。
志紋の目の前にいた、一番偉そうな奴の頬にめり込んでいた。
スローモーションの様に、そいつは崩れて倒れていった。
そいつ自身、今何が起こったか分かっていないだろう。
しかし志紋は、その状況を確かめるより先に次の奴に狙いを定めていた。
隣にいた奴の無防備な腹に、膝蹴りを叩き込んでいた。
1発。
2発
3発。
崩れるそいつを後に突き飛ばした。
「こいつっ」
彼らは、その突然の志紋の行動にすぐ対応出来なかったとはいえ、自分達の仲間がやられた事だけは分かった。
続いて、志紋は次の奴の顔にパンチを叩き込もうとした。が、今度は腕でブロックされてしまった。
すぐさま沈んで足払いをかけた。倒れたそいつの顔を踏みつけた。
しかしその直後、今度は逆に志紋が殴られていた。
腰は入っていないが、鼻の頭を殴られ、鼻から脳に衝撃が直接響いた。ツンと嫌な匂いがした。涙が出てきた。
『3人か…』
そういう状況でも、意識は落ち着いていた。
その頃になって初めて、泣き声が聞こえた。最初に志紋が殴った奴らであろう。
残った7人から、あちこちパンチや蹴りがきた。
もはや彼ら全てが、志紋を敵として実力行使していた。
そして、志紋はそれら全てに対応など出来なかった。
パニックになれば、何も出来ないまま、おしまいになってしまう。
狙いを1人に定めた。
目の前にいた奴の腕を掴んで手繰り寄せた。
あちこちから殴られるのはひたすら耐えた。どうせろくに防御なども出来ない。
志紋自身はその目の前の奴の腕を掴み、もう片方の腕で顔といい腹といい、殴った。
かばおうと沈み込むところで、顔に膝蹴りをくらわせた。
自分が殴られる痛さは、そいつを殴ることで紛らわしたから、そのパンチの1発1発はかなり痛かったに違いない。
他の奴がどう思っているのか分からないが、そいつ自身は理不尽だったに違いない。
勝っている筈なのに。
負けている筈ないのに。
他の奴らは、そいつの事をタコ殴りにしている筈なのに、なぜ自分はこんな痛い目にあっているのか。一方的に殴られているか。
パニックはたやすく、精神の糸を切る。
堪らずその子は泣き出した。
しかしその程度で志紋は許さず、さらに何発も蹴りを入れた。
そこでやっと、そいつを許し、次の奴の髪の毛を掴んで頭突きした。
続けざま、顔を殴り、引きずりよせ腹や太ももを蹴り、そいつが泣き出すまでそれを続けた。
泣いたらまたそいつを放り出して、次の奴をつかんだ。
泣いたら、負けだ。
泣けば、その時点で戦線を離脱する。
逆に、どんなに殴られても、泣かなければ負けじゃない。
その1点だけで、志紋は耐えられた。
泣かなければ、負けじゃない。
彼らの人数はもはや半分以下に減っていた。それでもまだまだ、彼らの方が圧倒的有利だったが、その事実に気付いた時点で、彼らは既に気迫で負けていた。
また一人泣いた奴を突き飛ばし、志紋は新たに掴んだ奴の顔を睨みつけた。
それだけで、そいつは泣いた。
そいつの顔越しに、別の奴の顔を睨んだ。
志紋の目が 『次はお前か』 と、言っていた。
「わっ、わ、うわ〜っ」
睨まれただけで、そいつは逃げ出した。
そうなると、また連鎖反応で、バタバタと逃げる奴が増えた。1人だけ、必死で志紋を殴ろうとしていたやつがいたが、自分が一人しか残っていない事に気付き、あわてて逃げだした。
最初に殴ったり蹴ったりして泣かせたやつらも逃げていった。
志紋の気分は一気に冷めた。腕を掴まれ泣いている奴も、そのまま手を離した。
放免されたそいつも、必死で泣きながら走って逃げていった。
彼らは、一人もいなくなった。
『勝った』
そこで初めて志紋は心に余裕が出来た。
それと同時に、殴られ蹴られしたところが、今さらながら猛烈な痛みになって襲ってきた。
しかし志紋は、その痛みに耐え、にたりと笑った。
笑った顔で 『どんなもんだ』 と背後を振り返った。
しかし、その笑顔は女の子にとって、不良達以上に恐怖だった。
女の子達も固まったまま、泣いていた。
「もう大丈夫だよ」
志紋は手を差し伸べようとした。
「さわらないで!」
と、逆にその手を払いのけられた。
『なぜ…』
女の子達も泣きながら、固まってその場を去ってしまった。
志紋は呆然と突っ立っているしかなかった。
志紋一人が取り残されてしまった。
☆
「私が聞いた話とは、多少違うような気がしたけど、こうして本人から聞いてみるとそっちの方が納得するわね」
「どう、聞きました?」
シスター・アンナは少し考えて、
「志紋くんが、からまれている女の子達の現場に駆けつけたとか、人数も30人くらいで相手も中学生とか」
「それはさすがに脚色しすぎですよ」
志紋は照れて笑った。
「でもむしろ、その後の方が大変だったんです」
☆
その夜、志紋の家に、派手なオバさんが怒鳴り込んできた。
本人曰く、PTAの副会長の肩書きをもって、その息子を連れてやってきたのだった。
話もいつの間にか、すりかえられていた。
曰く、女の子の取り巻きを連れていた志紋が、格好つけたい為に何もしていない彼らに、いきなり殴りかかってきた。相手が一人という事でタカをくくっていたが、不意をつかれたのが後を引いてか、散々な目にあい全員がケガをさせられた、と。
最初を除けば、あっている様な気もした。
むしろ、その発端を変えるだけで自分が完全に悪者になってしまうのを、志紋自身感心してしまった。
とはいえ、それは自分自身に降りかかった事に代わりはない。
「一体、あなた方はどういう教育しているのですか。暴力は絶対いけないことです。それは社会のルール、いえ常識です。それらの常識を、ひとつひとつ、何も知らない子供たちに教えていくのが私たち大人の役割でしょう。」
両親は、ひたすらペコペコ頭を下げていた。
自分自身だけに降りかかるのならいい。
でも、身に覚えがない親が頭を下げたり、情けない姿を見るのは嫌だった。
自分は悪いことはしていない。
していたとしても、悪いのは自分自身で、親ではない。
オバさんは延々と、志紋とその志紋を育てた両親とをネチネチと責め続けた。
「だいたい今の子供達は、両親達と満足にコミュニケーションを取れていません。
子供達の変化はまず親が知らないといけません。
悩みや不満は、まず親が聞いてあげられる状態を作ってあげないと、他の誰がきいてくれるんですか?
先生?PTA?そんな自分の子供の教育を、他人任せにしてどうするのですか」
なぜ自分は黙ってこういう事を聞いているのだろうか。
そうは思っても、志紋自身は黙ってうな垂れているしかなかった。
が、ふと志紋は、そのオバさんの陰に隠れ、オーバーに包帯を巻いた子と目が合った。その顔には覚えがあった。確かに昼間、志紋達にからんできた奴らの1人だった。
そいつは勝ち誇ったような、嫌な目で志紋を見返した。自分自身がリターンマッチを挑むのではなく、親の権威を引っ張り出し、またそれを恥じる事無く、自分自身は陰に隠れて見ている。
志紋が最も嫌いなタイプの人間だった。
とたんに志紋はキレた。
足元の傘入れにさしてあった金属バットを引き抜いた。
ブン、と振った。
金属バットは、オバさんの鼻先をかすめ、勢い余って玄関に飾ってあった大きな花瓶に当り、ガシャンと大きく派手な音をして砕け散った。
一瞬の間があいた。
自分の身に何が起こったのか理解したオバさんは
「きぃぃやああああああああああ〜っ!!」
と、ヒステリックに叫び、座り込んだ。
その子は無情にも、母親を置いて逃げた。
「ひぃやああ、いやああ、いやあああああああ!」
オバさんは叫びつづけた。
志紋の両親が、なだめようとしたが、その手も払いのけた。
その姿を、志紋は冷めた目で見ていた。
この人が、さっきまで意気揚々として自分達を責めつづけていた人だろうか。
だとしたら、あまりにも滑稽だった。
PTA副会長の肩書きの、いい歳をした大人が、なりふり構わずに狂態を演じていた。
あまりにも収拾がつかなかったので、近所の人が警察を呼んだ。
警察は、5分で駆けつけた。
制服の上からコートを着た若い巡査と、初老の巡査部長二名だった。
本来なら志紋は事情聴取の為、警察に連行されるところだったのかもしれないが、志紋自身はまだ小学生。
しかも直接暴力をふるって怪我をさせた訳ではない。その上、割った花瓶も志紋の家の物だからオバさんに実質損害もない。
結局、民事不介入という事で、警察官にオバさんをなだめて連れ出して貰った。
嵐が去った。
去ったと思いきや、翌日、志紋は放課後呼び出された。
しかも校長室ではなく、院長室に。
院長の、シスターマリア・イレーネ曽根崎は、写真で見た時と同じ、厳しい波乱万丈の人生を皺に刻んだような人だった。
「志紋くん。なぜ、今ここに呼ばれたのか分かる?」
シスター・イレーネは、優しくも厳しい声で、尋ねた。
「分かります」
「では、何が起こったのか、全て私に話して下さい」
志紋は昨日の出来事を、極力自分の意見を入れずに、客観的に事実のみを話すようにした。とはいえ、志紋自身が当事者なので、それがどこまで出来たか自信はなかったが。
ただし最後にきっぱりと
「僕は恥ずかしい真似をしたとは思っていません」
と、言い切った。
「こら」
志紋の担任の若い男の先生は志紋を叱った。
担任の先生自身の方が、院長を目の前にして緊張していた。
会社で言うならまだ若手の主任にもなっていないような社員が、課長・部長すっ飛ばして大社長に呼び出し喰らった様なものだ。
緊張するな、という方が間違いだ。
「そう、なら」
シスター・イレーネは、担任の先生の言葉を無視して、志紋に話しかけた。
「その言葉を、私達の主、イエズス様の前で言えますか」
そう言いながら机の上のレリーフのイエズス像を出してきて、志紋と正対させた。十字架にかけられたイエズスが、志紋を見ていた。
「言えます。僕は間違った事はしていないつもりです」
再度、志紋は堂々として言った。
「こら、志紋。そんな態度は失礼だぞ。院長先生に謝りなさい」
先生は志紋の頭を押さえつけて、頭を下げさせようとした。
それをシスター・イレーネは止めた。
止めた上で、穏やかな口調で話し掛けた。
「いいんですよ、先生。私も志紋くんの言う通りだと思います。この子はよい子です。まさにこの学院の生徒として恥じない、神の子です」
「「えっ?」」
志紋と先生は固まって、シスターを見上げた。
「あなたより先に、そのかばったという女の子達を呼んで話は聞きました。
彼女達は、恐くなって逃げたけど、後になって志紋くんに悪い事をしたと、皆そろって懺悔されました。
暴力をふるった事がいい事だとは思いませんが、もし」
シスター・イレーネは志紋の目をしっかり見て、
「あなたが女の子を見捨てて逃げていたのなら、私はあなたを軽蔑したでしょう」
と、厳しい口調で言い切った。
「あ、あの、じゃあ…」
担任の先生は、おずおずとシスターに話し掛けようとしたが、
「先生が生徒の言う事を信じられなくてどうします」
という言葉で、打ち消されてしまった。
「ただこの先、向こうとしても、拳を振り上げた以上、色々何か言ってくることもあるかもしれません」
とたんに志紋も先生も、少したるんでいた顔を引き締めた。あのPTA副会長に、あんな醜態を演じさせたのだ。ただではすまないと思った。
「でも、私がこの子をかばいます。この子はよい子です。いえ私だけではなく、学院としてこの子をかばい通して見せます。」
「先生…」
志紋はその姿に、神々しいものを感じた。
片やPTA副会長。
片やシスター院長。
同じ大人の女の人で、これだけ違うものかと志紋は感じた。
いや、院長だけではない。この学院にいる全ての先生・シスターに共通する、意思の強さ、芯の強さを改めて実感していた。
☆
「ただし、そのまま無罪という訳にはいきませんで、、暴力そのものはいけないと長々と説教されまして、罰として。いえ、罰じゃなかったですね。奉仕する気があるのなら1週間の聖堂の掃除をする様にと言われました」
「したの?」
「しました」
「1人で?」
聖堂は大きい。体育館ほどではないにしても、300人は座れるくらいの椅子は並び、調度品も多い。一人でやったら何時間かかるか分からない。
「一人じゃないです。その時送った女の子達と、またその友達とかクラスメイトとか手伝ってくれましたので」
「あ…」
シスター・アンナはそれを聞いて、志紋自身が救われた気がした。
また、故に院長先生が、そういった罰…じゃなく奉仕を命じた理由も。
単なる罰では意味がない。
受ける方が救われなければ。
志紋も。
その女の子達も。
「でも、それは学校内だけの事で、あれから何度か、向こうからも言ってきました。PTA巻き込んで、この学校には暴力生徒がいる!などと鉢巻・プラカード持って、チラシを撒くオバさんも出現しました。
一時期本当に大変でした。
僕が出て行って謝れば済んだのかもしれません。
僕自身の事は、もう院長も皆も分かってくれていると思ってましたから。
でも 『自分が正しいと思うなら貫きなさい』
と、内部・外部共にシスター達が対応してくれました。」
「凄かったって事は、未だに語り継がれているから。私自身はそれに参加できなくて、ちょっと残念な気もするけど」
端から聞けば、野次馬根性的なものを感じるかもしれないが、言っているのがシスターの様な聖職者の場合、少し違う。
純粋に人助けがしたかったのだ。困っている人を助けるのが神の教えだから。
「僕自身は、もどかしくても、いたたまれなくて。
それが最善と分かってはいても、今度は僕自身がみんなの陰にかくれてしまったから。
何も関与出来なかったから。
だから、僕はその時、唯一出来る事をしました」
「出来る事って?」
シスター・アンナは首をかしげて聞いた。
その状況で、志紋に出来る事など、アンナには思いつかなかった。
当の本人だけど、いや当の本人だからこそ、ヘタに動く事は墓穴を掘ることになるかもしれなかった。
だが志紋の答えは、ある意味アンナの意表をついた。
「良い子になる事です」
「え?」
それはある意味、突拍子のない事だった。
良い子とは、なろうと思ってなれるものだとは思わなかったから。
「院長が、シスター・先生方が僕をかばう以上、僕自身は良い子じゃないといけなかったんです。最終的には僕の問題ですから」
「で、でも。良い子にって言っても」
「まぁ僕が僕である以上、本当に良い子になれるとは思ってません。でも、良い子に見せかける事ぐらいなら。メッキで、よかったんです。見た目が、良い子でさえあれば。幸い勉強そのものはできましたし」
『あ…そうか』
シスター・アンナはふと、その考えに志紋の性格を表す片鱗を見た。
性格というか意思表現はひねくれているのかもしれないけれど、その根っこは素直な子だったのだ。性格のはっきりとした正直者で、純真でありすぎたのだ。
自分に対しても、他人に対しても。
院長のシスター・イレーネも、それを見抜いた上で、いい子と言ったのかもしれない。
「運動は長期化する前に、崩れてしまった様です。襲われたという10人は日ごろの素行を隠せなかった様ですし、それと不本意だったのですが…」
そこで一旦、志紋は言葉を詰まらせた。
「どうしたの?」
「あ、いえ。実はあの後、全国一斉実力試験があったのですが…」
「実力試験?」
シスター・アンナは、それが何とつながりがあるのか、分からなかった。
「その直前まで、良い子になろうと猛勉強が当ったのか、全国100位以内に入っちゃいまして…」
「あ…」
「対外的にも、良い子になっちゃったんですよ。僕は僕のままなのに」
シスター・アンナはその言葉に、何かが歪むのを感じた。
「結局、運動は立ち消えしましたが、その地域のPTAと溝が出来てしまい、また先生達の薦めもあって、中学もそのままガラテアに進む事になりました。
でも、学院の皆に好きなのは、僕が良い子になったから。皆にとってみたら、僕が実は良い子だったからという事で。
だからそれ以降、僕はここにいる以上、良い子である必要があったんです」
シスター・アンナの視界は、さらに歪んだ。
『違う!』そう言いたいのに言葉にならない。
「でもいいんです。僕は既に、先生がシスターが、そして仲間が、この学院そのものが好きだったから。そしてこの学院に必要なのは、ひねくれた僕ではなく、良い子の僕だったから。演ずるのは苦じゃなかったんです」
『違う!そうじゃないの』
そう言う代わりに、シスター・アンナは志紋を抱きしめていた。
違う。あなたは既に、というより最初から良い子だったのよ。
ただ、意地になっていただけ。不器用だっただけ。
だって、そう思っただけで、人は簡単に良い子にはなれない。
なれたのだとしたら、ずっとそうだったのなら、あなたはもともと良い子だったのよ。
ほんの紙一重の人格。
ひねくれた志紋と、良い子である志紋。
両方とも正真正銘、志紋本人なのに、志紋自身は良い子である自分を、それも本当の自分であると気付いていない。
思えば、時おり見せた反抗的な志紋。
それは志紋にとってのアイデンティティだったのかもしれない。
でも、言葉にならなかった。
口に出せなかった。
ただ、抱きしめていた。
「僕は…」
抱かれながら、ふと志紋の目に一筋、涙が流れた。
「僕はもう、ここを出てまで良い子でいられない。ここ以外でまで、良い子でいたくない…」
「ああ…」
シスター・アンナに、志紋の熱い思いが伝わってきた。
己をも偽った(つもりで)良い子を演じ続け、好きになったこの学院に居たかったという想い。
そんな彼を、学院は卒業の名前で放り出そうとしている。
彼はまだ、群れから出て迷う子羊だった。
でもこればかりはシスター・アンナにも、どうにもできない。
他の99匹の羊を放ってでも探しに来たのに、この子羊を救えない。
シスター・アンナは思わず目の前で十字を切った。
「いいな…」
志紋はポツリとつぶやいた。
「え?」
「彼女達は、卒業してもここにいられるんだ…」
シスター・アンナは志紋の視線の方向を見た。
高等科のグラウンドで、女の子達が体育の授業をしていた。
学年がちがうのか、赤・緑・青のジャージの上下を着た女の子達が、それぞれ別の場所で、バレー、ソフトボール、走り幅跳びをしていた。
決して上手ではないが、それぞれ生き生きしてプレイしていた。
「すみません」
志紋はシスター・アンナの腕を振り解いた。
「未練、なんですよね。卒業式ボイコットしたぐらいで、卒業が延期されるかもしれないなんて。もう行きます」
「志紋くん…」
志紋は立ち上がって背中を向けた。
「すみません。僕なんかの為に2度も泣いてくれる先生がいただけで、もう充分です」
そう言われてシスター・アンナは自分も泣いていた事に気がついた。
そして1回目、シスター・アンナが初めて志紋を追いかけた日の時の事を、志紋はしっかり覚えてくれていたという事。
「降りて、シスター・マイラに謝って、卒業証書を貰わないと」
シスターアピヤ・マイラ高峰は、学年主任だ。
いつもしかめっ面をした厳格な人であったので、もう60近いと志紋は思っていたが、実はまだ40代後半だったという。
口うるさく、融通もきかず、神への愛を一途に説く人であり、同時に生徒や他のシスターに面倒見のいい一面もあった。
志紋が歩き始めようとした頃を見計らってか、
「その必要はないね」
茂みから、当のシスター・マイラが現れた。
「え?あ、あの、す、すいません」
我の強い志紋でも、シスター・マイラの貫禄には負け、しどろもどろになって45度、頭を下げた。
「悪いと思ったけど、話は一通り聞いたよ。」
という事は、6年生の時の事も聞かれていたのだろうか、と志紋はあせった。
「あ、あの…」
「単刀直入に聞くよ。この学院に留まる方法がない訳じゃない、と言ったらどうするね?」
「え?」
志紋は、それがどういう意味か分からなかった。
しかし、思考能力が回復するにつれ、それは正に自分が望んでいた状況であることが分かってきた。
「あ、あるんですか。僕、ここに残れるんですか?」
「ない事もない、と言っているんだがね」
次の瞬間、志紋はシスター・マイラに135度、頭を下げていた。
「お願いします。もし、ここに残れるのなら、何でもします」
「そうかい。その言葉に偽りはないね」
その言葉に、シスター・アンナの方が顔色を変えた。
「シスター長。まさか、志紋くんをあれに、」
しかしシスター・マイラは悠然として言った。
「他に方法があるかい?」
「でも…でも、あれだけは…」
「御黙りなさい、シスター・アンナ」
煮え切らない態度のアンナに、シスター・マイラはぴしゃりと言い切った。
「今、この子に必要なのは、神の愛でも神への信仰でもなく、奇跡なのです。今、彼を見捨てるのは神の意志に反することだと思いませんか」
「でも…でも…」
その2人のやりとりを志紋は黙って見ていた。
何かとてつもない事に、志紋自ら飛び込もうとしている事を感じた。
しかし、それが何であろうと志紋は恐れていなかった。この学院を離れねばいけない事に比べれば…。
「覚悟が出来たらついといで」
シスター・マイラは、背を向け歩き始めた。志紋はすぐその後を追った。仕方なくシスター・アンナもついて行く形になった。
「おっと」
シスター・マイラは坂に足をとられ、後ろから来ていた志紋に支えられた。
「ったく、もう。あたしゃもう2度とこんなとこには登らないよ」
いまいましそうに悪態をついた。
☆
丘を降り、着いたところは学園の中心にある聖堂だった。
シスターなど聖職者は毎日。志紋達も週に1度はこの場で催されるミサに出席しているし、志紋にとっては例の事件の後一週間掃除をした事もあるので、馴染みが深い。
途中補修や改装を加えてはいるものの、建物そのものの建立は明治で、学院創立からあったという話である。
その聖堂の中を、堂々とシスター・マイラは突っ切り、やがては壇上の脇、パイプオルガンに行き当たった。
「ここは…」
パイプオルガンの横に、隠れるようにして扉があった。少し錆びの浮いた、古ぼけた装飾の入った重そうな扉。
幼稚園や小学生の低学年の頃は、この中は地獄だとか、古い骨が沢山あるんだとか、怪物が閉じ込められているんだとか、勝手な噂をして、恐がって近寄らなかったものだった。
大きくなった今は、さすがにそんな事信じてはいないが、でも何かありそうな雰囲気はあった。
その扉を、シスター・マイラは大きな鍵で開錠した。
ガチャン、と大きな音がした。
「さ、開けなさい」
言われて、さあ、と思いながらもなかなか思い切りがつかず、2・3回大きく呼吸を整え、扉のノブに手をかけた。
『いくぞ!』全身に力を入れた。
ギギギギイ、ときしみ音がして、なんとか半開き状態にまでなった。
中は真っ暗だった。覗き込むと、部屋上があるのではなく、下に降りる階段があった。
その先は深く、ここからは見えない。
「ここから先は1人で行かなきゃいけないよ」
「何があるんですか?行って何をすればいいんですか?」
志紋は扉の向こうを覗きながら思わず身震いした。
「行けば分かるさ」
その闇はまるで魂までも吸い込まれそうで、怖かった。
「怖いなら、やめてもいいんだよ」
少し挑発的に、シスター・マイラは言った。
「あ…」
志紋はその言葉で我に返った。
自分は何でもすると言ったのじゃなかったのか。
覚悟は出来ていると言ったのじゃなかったのか。
ここに本気で残りたいと言ったのは、嘘か。
あの時の決意は、そんなにやわだったのか。
志紋は顔をはたいて気合を入れた。
本気の表情になった。
「行きます」
きっぱりと言いきった。
睨むような目で、シスター・マイラを見返した。
「よし、いいだろう」
シスター・マイラは僅かに微笑んだ気がした。
それは後にも先にも、志紋が見たシスターマイラの唯一の笑みだった。
「この階段を降りていけば、その突き当たりが地下室になっています。
暗いけどそのうち目が慣れてきます。
そして、そこで見たものに対し、志紋、あなた自身が素直になれるなら、神はあなたを見捨てないでしょう」
「どういう意味ですか」
志紋にはシスター・マイラの言っている意味が、全く分からなかった。
「何もしないうちから考えても無駄だね」
「そうですね。分かりました」
志紋はその場でブレザーの上着を脱いだ。
寒さが全身を突き刺したが、気合そのものはみなぎる様だった。
「行きます」
志紋は地下室への第一歩を踏みだした。
「志紋くん!」
シスター・アンナの声に、志紋は振り返った。アンナの目が心配そうに訴えかけていた。
「大丈夫です」
志紋は再び地下室へ歩きはじめた。
見送る後姿も、やがて闇の中へ熔けていった。
足音だけが規則的に聞こえていたが、やがてそれも聞こえなくなった。
「シスター・マイラ…」
シスター・アンナはか細い声で、話しかけた。
「志紋くんなら大丈夫。きっと期待に応えてくれるでしょう」
「で、でもそうしたら…そうしたら志紋くんは…」
その時、階段の向こうから、
「うわああああああああ」
と、志紋の叫び声が聞こえてきた。
「ああ…」
シスター・アンナは思わず地下室への階段から目をそらした。
☆
新学期になった。
ボクは念願の高等科にいた。
中等科から高等科へ進学する女の子達は多く、ボクの事を知っている子達はボクを気味が悪そうに見ている様だが、大丈夫だ。
なぜならボクは誰よりこの学院を愛している。
神に愛されている自信がある。
それに…
だって…
既にボクは、
もう…
終わり
後書き
こんな作品に、長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
いきなりで何なのですが、これは正に実験作品です。
というのも、この話はTSFと銘打っておきながら、実はTS表現を一切使っていません。
終わりまで来て物足りなく思ったとしてもそれは、私としても承知の上というか確信犯でして。
多分このHPに来ている方々は、戸惑う事なく主人公はTSしたと思っておられるのでしょうが(笑)
逆に言えば直接表現で主人公はTSしましたと書いてない以上、別のオチの可能性もほのめかしてはいるのです。
例えば、主人公は卒業後、用務員になってしまったとか、身体は男のままシスターになってしまったとか、性別不明の得体の知れないものになってしまったとか…。いかんですね、作者自身がそんな事を言っては。
さてそれと、今回一度発表したものに、今回ちょっと読みやすく改訂をしてみました。
という訳で、また感想等あれば色々お聞かせ下さい。
続編も近いうち、改訂致します。
では。