戻る


イミテーション・ダンディズム

(男らしさが贋物の時代に)

原案 八雲裕紀
作  かもライン


第二章 バーチャル・ダイブ

「えっと、確かここら辺だったと思うけど…」
俺は部長に連れられて、雑居ビルの地下5階にあ+る路地をさまよっていた。
地下1階から4階まではショッピングセンター。地上5階から上は人が住むマンション。
地下2階以下はこじんまりとしたスペースにいろんなテナントが入っているが、通路が狭
くごった返していて、ちょっとしたダンジョンである。
ちなみに地下に下りれば降りる程、怪しい店が増え、非合法なものも扱っているという
噂である。ただし、そこに行く為にはもっとレベルアップして装備も整えないと、二度と
生きて太陽を拝めなくなるとか、一定階ごとにイベントをクリアしたり中ボスを攻略しな
いと、その先に進めないという話もある。
ここはまだ地下5階。おしゃれな小物やおいしい店の穴場を見つける程度にはちょうど
いい。
「あ、そこじゃないですか。“揚げ物各種・たいしゃくてん”って」
「あ、本当。そこそこ」
この時代においても女性の方向オンチは不治の病とされ、特効薬はない。
さて部長お奨めの店、揚げ物の店・たいしゃくてんは、10人も入ればいっぱいになっ
てしまうような、こじんまりとした純日本的な店で、俺達以外にはテーブルにサラリーマ
ン風の人たちが1グループいるだけだった。
自然と奥のカウンターに座った。
とりあえずビールと、あとはおまかせコースAを部長が頼んだ。
「乾杯」
部長とジョッキを合わせた。適当に揚がっては並べてくれるフライをつまみ、しばらく
仕事の話とか当り障りのない話をしてきたが、適度に酔いが入ってきた頃、部長が切り出
した。
「で、佐伯さんって、どういう人だったの?」
「あ…」
そろそろ来る頃かと心づもりはしていたが、いざとなると一瞬言葉が詰まった。
「プライドが…高い女でした」
あまり思い出したくない話だったが、いっそ誰かに聞いて欲しかったことでもあった。
「つまりは結局、彼女にとって俺は、純男だという事だけだったんです。
一方的に付きまとわれて、あちこち連れまわされましたり、
でも、それはそれで良かったんです。好かれたり、人に必要とされたりして、悪い気持ち
はしませんから」
「あなた、本当に人がいいからねぇ」
自分でもそう思うが、他人に指摘されると、本当に実感してしまうから不思議だ。
「ある時、していない結婚の約束の話をされて、口論になった時、なんとなく分かったん
です。彼女にとって一番大切なのは、俺が純男だったという事。
俺の気持ちも人間性も関係なかったという事。そう思った時、俺は彼女のそばにいたくな
かったし、彼女に何もされたくなくなりました。」
「分かる気がするわ」
「あの」
一呼吸おいて、俺はテーブルの上で身をのりだした。
「俺、酔ってます。酔っているから、酔っ払いの戯言と思って聞き流して下さい」
「な〜に?」
山崎部長は少し近付いてきた。
「俺は部長の事が好きです」
「あらら」
山崎部長は驚いた顔をしたが、態度としては落ち着いていた。
驚きの顔は、社交辞令だろうか。
「変な意味じゃありません。部長は俺の事を買ってくれてます。
怒られも叱られもしますが、俺の事を本気で鍛えてやろうという気持ちが伝わってきてま
すので、それで恨んだ事は一度もありません」
「そうね」
山崎部長は落ち着いた、優しい顔になった。
「だから俺は部長の期待に応えようと頑張れます。でも、俺も出来た人間じゃありません。
自分の事を嫌いな人を好きになれないし、嫌な下心で近付く人たちも嫌いです」
「そうね、あなたも純男っていう事で、いろいろ嫌なもの見てきているのね」
ふと、山崎部長は俺のその手を握った。
握られたところが暖かい。
不思議と気分が落ち着いた。
考えてみれば俺から見て山崎部長は、お袋ほどではないにしてもそれに近い歳であろう
か。もっとも俺のお袋は、物心つく前に亡くなってしまっているが。
「明日、私はその研究所に行くけど、あなた、嫌ならいいわよ」
そう言われて、俺は思わず醒めた。
「いえ、行きます。仕事だから、という訳でなく、俺もバーチャル・ダイブには興味あり
ますし」
「でも、佐伯さんに逢うのよ」
「もう、吹っ切りました。彼女とはもう、何でもありません」
俺はきっぱりと言い切った。
「そう。やっぱり男の子ね。」
山崎部長は、あらかた食べ終わったお皿の下から伝票を引っ張り出した。
「あ、部長。ここは」
俺は慌てて財布を出す。
「いいのよ。私が誘ったんだから。久しぶりに美味しい食事が出来たわ」
そう言いながら、早々に勘定を済ませてしまった。
店の中は結構混雑してきて、外に出ても待ちの客が何人かいた。
混雑した店から出て、少し開放感。涼しくなった。
回りを見れば、どの店も適当に混んできている。
部長は立ち去ろうとする。
「あ、部長はこれから…」
「ん。そうね。ちょっと飲みなおすわ。」
「あ、俺もお供します」
「いいの」
部長は俺の鼻先を指で弾いた。
「一人でしんみり飲みたい気分だから。あなたも、私みたいなオバサンにつきあってくれ
なくていいのよ。その配慮はもっと若い娘相手にしなさい」
「あ、はい」
未練はあったが、そう言われてしまうと、どうにも出来なかった。
「じゃ明日、遅れないでね」
「はい。御馳走さまでした」
俺は深々と礼をした。

翌日、俺は部長と会社で待ち合わせして、社用の大きく派手な名前が入ったミゼットZ
を運転して、その研究所に向かった。
あまりスピードが出ない水素電池車でも、30分とかかっていない。
せっかく総合研究所と名前がついているのだから、埼玉にでもあると思ったのだが…。
総合研究所は、郊外でなく、都心の一角にあった。
大きさ的にも、多少大きな病院程度だろうか。
実は後で、本当に病院を兼ねていると聞いて、妙に納得したのだが。
「ここですか」
「ええ、間違いないわ」
入り口の看板にも、確かに『総合研究所』の看板がかかっていた。

受付で社名と名前を言って程なく、佐伯聡美はやってきた。
ぴったりとしたスーツの上から白衣を羽織っている。
あれから何年かたったが、彼女もあまり変わったように見えなかった。
「いらっしゃいませ。お久しぶりです山崎部長。高梨クン」
俺は社交辞令的に頭だけ下げた。
「さっそくだけど、案内させてもらうわ。こちらへ」
彼女は2階を腕で示し、先を歩いた。
俺達はその後を慌てて追いかけた。
「ところで」
山崎部長が佐伯聡美に話しかけた。
「はい?」
「ここは一般開放もしているの?。何か、さっきから一般人の姿も見えるのだけれど…」
このフロアの廊下だけでも、いかにも研究所員らしくない、また自分達みたいに営業マ
ンや出入り業者らしくもない、ごく一般人のような人たちが結構いた。
「体験テストしているのよ。一般レベルでの応募をして、サンプルとして必要な人達に整
理券配って来てもらって。でも、どうしても偏ってしまって、足りない分はこうして直で
協力をお願いしているわ。例えば純男とか」
佐伯はちらっと俺の方をみた。
ここでも俺は純男以外の存在価値はなかったのだろうか。
でも、もし俺にサンプルとして来て欲しかったら自分で直接電話でもしてくれば良かっ
たのだ。しぶるかもしれないが、多分協力しないなどとは言わない。
わざわざ部長を巻き込んでの画策を感じる。
「こちらです」
突き当たりのドアを開けた。中に入る。
中には大掛かりなカプセルが2つと、制御用の端末が見えた。
「じゃ、とりあえず、装置の説明をするわね」
彼女の説明によると、ここにある大掛かりなコンピューターも、クレイモア5000の
末端でしかなく、常時アクセスしてデーターのやり取りをしている。
バーチャル・ダイブのマシンは、ここ以外にも何台かあるが、1台の端末を使ってのダ
イブは同時に2名のみしか出来ないそうだ。その2名同時というのにもスペック的に多少
無理があるそうだが、1人でダイブしてもその主観しかモニター出来ないという理由で、
同時に2名ダイブしてもらい、その共通点・違う点を突き詰める事を目的としている。誤
差範囲をも特定出来れば今後製品化するのも早期的に可能であろう。
そうなれば、今後同時ダイブ出来る人数も増やしていける。
ちなみに、2基の端末をシンクロさせれば同時4人も理論上可能だが、(というより、
その方法で2名同時を行っているのだが)ただでさえ不安定なシステムがどうなるか分か
らないという理由から、まだしていない。
そしてダイビング中の世界はこの端末で随時モニター出来る様になっている。ダイブ中
の被験者の行動が逐一追いかける事も出来る訳だ。
「それで、純男のモニターが欲しかった訳だね」
「ええ、後でその仮想世界がどうだったかとか、仮想の五感がそれぞれどう感じられたか
レポート書いてもらうわ。ではこちらに」
俺は聡美の指示に従い、そのカプセルに横になった。
作業員がテキパキとカプセルの調整をしたり、俺の頭や手首足首などに器具を装着して
いく。
「向こうの世界は今から50年前の日本を設定しているわ。あなたはその世界の規律を守
った上で生活して下さい。どう感じるか、どう行動するかが、キーポイントになりますの
で、出来れば向こうでの生活を楽しむくらいのゆとりをもって。
また、向こうの世界で死んだり、ひどいショックを受けたりすると、場合によっては現実
でもショック死したり、植物人間化する可能性もありますので、無用なトラブルも極力避
けて下さい。」
「ああ、極力ね」
そうわざと、ぶっきらぼうに答えたが、我が身の安全がかかっている。おとなしくしな
いといけない…。
「情報は360倍速に圧縮して通信しますので、ダイブ時間は正味1時間ですが、中で生
活する方としては半月相当に感じられます。その時間感覚も後でレポートして下さい。
また、その世界感やダイブするキャラクターの基本情報等は、通信して自然に引き出せま
す。あたかも、その世界の人間として記憶していたかの様に」
「なるほどねぇ」
凝っている。でもだからこそ、予備知識無しにダイブ出来る訳だ。
「それと、その世界でのあなたは24歳のOLということになっているから。でも分かり
やすい様に姓はそのまま高梨、名前は元のキャラクター通り真理っていう名前に修正して
おくから覚えておいてね」
「ちょ、ちょっと」
女ぁ?。俺、女になるのか?
「聞いてないぞ。そんな事」
「あら、言わなかったかしら」
佐伯聡美は意地悪そうな顔して笑う。
「たった1時間の仮想体験よ。あ、でも貴方にとっては半月ね」
「ちょ、ちょっと待て」
そう言おうとしたが、目の前でカプセルが閉まった。
首筋、手足から電気ショックのようなものが走る。
だんだん、身体から五感が消えていく。
視界に薄いもやがかかり、音も聞こえなくなってきた。
鼻の奥、口の中もしびれてきて、手足の感覚もなくなってきた。
「くそぉ、そんなのと分かってりゃ…」
やがて意識も、だんだん遠ざかっていった。

目が醒めると、見知らぬ部屋だった。
まず、ピンク色のカーテンが目についた。
少し身体を起こすと、こじんまりした部屋に、衣装ケース、タンス、姿見などが見える。
その横にはやたらでかい、多分ブラウン管を使ったテレビモニター、そして多分当時の
事だから、CDとかMDを使うのであろう、ミニコンポなども見えた。
まるで、知らない部屋。
しかし、なぜかここは自分の部屋である事は認識できた。
部屋にあるものは、何一つ馴染みはないが、全て何に使うかは分かる。
ふと、自分の手を見る。
白く、細い指。
その手・その指を、くねらす様に動かして見る。
「なるほど、よく出来てる」
その声も、本来の自分の声よりやや高く、やや透き通っている。
ただ、その声に女性っぽさを感じなかったのは、しゃべり方や発音が地のままだからだ
ろう。芸のない第一声だが、そう感じるからには仕方がない。
部屋の風景は色が鮮やかすぎた。
手の指は、すべすべしすぎていた。
もし、これが本物の部屋なら、生活における汚れがあちこちに見える筈だった。
もし、これが本物の指なら、仮に女性の指だとしても皺や毛穴や血管も見える筈だった。
この手は綺麗だが、生物としての手ではなかった。むしろ人形の手に見えた。
なにより、自分の口から発した声は、普通に耳から聞こえる声だった。いや、聞こえる
感覚はあるが、はたして耳から聞こえているのかどうか怪しい感じだった。なぜなら自分
の声が、頭蓋骨を伝わる様な響きがなかったからだ。
醒めているようだが、逆にバーチャル・リアリティの世界である事を実感した。
出来が悪いのではない。むしろ出来すぎて、ほんのわずかなアラが目立っているような
感じであった。
俺は身体にかかる布団をはねのけ、身体を起こす。ベッドから出て初めて自分が着てい
るものがパジャマではなく、ワンピースのネグリジェだった事に気付く。肩が、ノースリ
ーブになっている。
「ちょっと寒いかな」
ふと両肩に手をやる。
「あ…」
手が肩に触れる。肩に手が当る。
当たり前の様だが、触る感覚と触られる感覚が交差する。
「触覚は、かなりリアルだ…」
考えてみれば、人は外界からの情報のほとんどを視覚から、そしてそれを補うように聴
覚で占められている。だから逆に視覚的・聴覚的にはどんなに優れていても、その不自然
さは見つかってしまう。
しかし、触覚は普段意識していない分、本物に近い感覚であるというだけで、充分騙さ
れてしまうのかもしれない。
ためしに鼻を利かせてみた。
女の子の部屋だからか、ローズ系なのかコロン系なのか、僅かに甘い香水のような香り
がした。嗅覚も騙されている。
さすがに今、味覚は試せないが、舌で上あごを嘗めた時の感覚は、本物そっくりだった。
「これは…ひょっとしたら凄いかもしれない」
ふと、姿見が目に入る。
姿見に、ピンクのネグリジェの女性が映っている。
肩に僅かに届く髪。
丸い顔、大きな目。低い鼻、小さな口。
特に特徴がある訳ではないが、美人というにはさしさわりない程度だろうか。まぁ、美
人だから嬉しいとかという程でもないが。
「あ…俺…女なんだ…」
当たり前すぎて、逆に気にならなかった事実だった。
首を傾げると、鏡の中の女性も首を傾げる。
腕を組む。そしてそのもう片手をあごにやる。鏡の中の女性もそれを真似る。
何気ないしぐさなのに、その動きのひとつひとつが様になって見える。同じしぐさなの
に、この身体ですると、当たり前なのかもしれないが、妙に色っぽい。
「俺は…。俺は…」
しぐさの全ては女性の動きだ。戸惑うこともなく、華麗に流れる様に動く、手、肩、腰、
首。
俺は男の筈だ。少なくとも精神は。
意識して動いている訳ではないはずなのに、なぜかゆったりと女性の動きになる。
「これが…俺、なのか?」
そう言う時の表情の悲壮さも、苦しむ男の表情ではなく、耐える女の表情だった。
とたんに身体に震えが走った。
腰から背筋を、びりびり来る悪寒が身体を襲った。
理屈としては分かっているのに、生理的に自分が女である事に耐えられなかった。
「うわ、あああああ………」
立っていられなかった。
を抱いて、崩れるようにしゃがみ込んだ。
「なぜ…なぜ俺が…ああ、うあ……うぐ・あ」
吐き気が襲った。こみ上げてきた。だが、何とか耐えた。
「ああ、はぁ、はぁ、はぁ・・・」
静かになった部屋で、カチカチと音がなっていた。
「なんだろう…」
見渡すと壁掛け時計があり、秒針が1秒1秒を刻んでいた。
こういったものは50年、いや100年前からも変わっていないのかもしれない。
しばらくその秒針の音を聞いていて、落ち着いてきた。
そう思ってこの部屋を見渡して見ていると、やはりこの部屋は自分の部屋なんだと思え
てきた。本来の設定である、この娘のいる部屋。
少なくともその記憶はある。今は知らなくても、知ろうと意識すればラグタイム無しで、
自分に関する事は、思い出すように情報を引き出すことが出来る。
高梨・真理。それが今の自分の名前だ。
本来は姓は違うのだろうが、なりきり易いように設定したと聡美が言っていた。下の名
までは流石に使えなかっただろうから、この娘本来のままなのだろう。
22歳。マルチプル鉄工配管という、100名ほどの会社に勤めるOLだ。
就職にあたって上京し、一人暮らしをしている。
この娘自身が持っている知識は、ごく当たり前に、思い出すように引き出す事が出きた。
ただ、この世界の自分に関することを延々過去に向かって探っていこうとして、無限の
底なし沼にもぐっていくような感じになって、恐ろしくなった。
自分が、本当に昔からこの娘であったかのようにな感覚に陥りそうになったからだ。潜
れば潜る程、自分は昔から真理であったのだと思い込んでしまう。本来の自我を見失いか
けてしまう。
いや、いっその事そうなった方が楽かもしれなかった。
今の自分は高梨真理という、この時代のOLなのだから。
しかし所詮はバーチャル。現実ではない。
深刻に考える必要はない。
自分は自分なりに、この世界を感じればいい筈だ。
「会社…行かなきゃ」
別に、行きたくなければ行かなくてもいいのかもしれない。しかし、与えられた情況で
行動する事に、このサンプル体験としての意味がある。
この世界で自分はOLなのだから、会社に行かないのは不自然だ。それに、
「あ、部長は…」
部長もこの世界に来ている以上、自分と同様慣れない男の身体に悩んでいるかもしれな
い。そう考えていると、この世界の部長の事が頭に浮かんできた。
山崎信一郎。自分と同じマルチプル鉄工配管の営業部長。55歳で独身。
現実の自分達と、性別こそ違ってはいるが、年齢や立場は似たものになっている。
この世界に自分がいるというのと同じ理屈で、部長もこの世界にいる。
会社に行けば、部長に会える。
そう思うと絶望に近い状況から、なにか希望のようなものも感じられた。
自分と同じ境遇の人が、同じ世界にいるというだけで、少しは気分が楽になった。
鏡の中の自分が微笑んだ。
ネグリジェの肩の部分が寒そうだ。
「あ、着替えないと…」
そう思い、ワンピースになったネグリジェを脱いだ。
その下はショーツ一枚だった。
小さいが形のいい胸があらわになった。
服を脱ぐと、この娘自身のプロポーションが分かる。モデルになれる程いいラインでは
ないが、全体的にやせ気味の、少なくとも悪くはないのではと感じた。
サイズ的にはどれくらいだろうか、と考えると即座に、バスト78のAカップ、ウェス
ト63、ヒップ80。身長が162pで体重が48sというデーターが自然に頭に浮かん
できた。
この時代としても、おっぱいは小さい方じゃないだろうか、などと考えていると、
『そんなことはない!』という答が、直接頭に。
いや、むきにならなくてもいいんだけど…。
私は(さすがにこれ以上、この身体で自分の事を俺とは使えないだろうから)この娘の
知識を引き出し、ブラとキャミソールを身につけ、会社に着ていく服を選んだ。
下着姿でいる時、ショーツの下には男時代にはあったものが、なくなっている事には気
付いていたが、あえて見たり触ったりして確かめたくはなかった。
それは、この身体に対する好奇心より、まだ自分が女である事の生理的嫌悪感が勝った
からだ。もし、健全な(不健全な?)一般男性ならば喜んで確かめているのかもしれない
が、私自身はまだ、そういう気分にはなれなかった。
鏡の前に座った。
多分、その娘の日常なのだろう。おそるべく早業の手順で、さっさと化粧していった。
化粧水を塗り、薄くファンデーションを伸ばし、アイラインを整え、口紅を塗る。
理屈で考えずに、ある意味この娘の知識と身体に身を任せて正解だった。私の意識や感
覚が混じったら、逆にもたもたしたり、失敗した事だろう。
そう思ったから逆に、その娘の知識に身を任せて、スーツを選ばせ、ハンドバックの中
身を確認し、マンションを出た。
バスからJR、JRから私鉄に乗り換え、最寄の駅から会社まで徒歩5分だった。
考えてみれば、この身体で考えて行動する事に意味があるわけだから、今、私がやった
事は、ある意味ズルかもしれない。とはいえ、ひとつひとつ考えながらやっていたら、お
そらく遅刻していただろう。
また普通に行動している分にはいいのだが、何かのきっかけで自分が女である事を思い
出すと、思わず思考も行動も停止してしまう。いくらバーチャルで本物ではないからと言
っても、やはり違う性別での行動には違和感が付きまとう。
仕方なく、自我を失わない程度に、この娘の記憶と習慣に身を任せてしまう。
会社に入り、更衣室に行き、自分のロッカーで制服に着替えた。
知識は自然にが出てくるから、この会社のことは、この娘が知っている限りにおいて、
何の不便もなかった。
「ちょっと、高梨さん!」
「あ、はい」
いきなり、後から声をかけられ振り向いた。
古参のOL、曽根さんだった。
「今日あなた、お茶当番でしょ。何グズグズしているの」
「あ、すみません。そうでした」
私はあわてて給湯室に走った。
これは、この娘自身も忘れていた事だった。その娘が忘れてしまっていた事を、私が思
い出せる訳がない。
給湯室に入った。
同僚の白瀬由美がいた。
「遅いよ、真理」
「ごめん。ちょっと寝坊しちゃって…」
「寝坊じゃないでしょ。忘れてたんでしょ」
「あはは、分かる?」
「分かるわよ。はい」
お盆の上には既にお茶の入った湯呑みが並んでいた。
「貸し3だからね」
どうやら、この娘がこういった事を忘れるのは日常的らしい。
「ありがと、由美」
そう言いながら、私はお茶の乗ったお盆を持ち、事務所の席を回った。
専務に、常務、それと部長…あれ?
部長は席にいなかった。
「あ、あの、山崎部長は?」
私は近くにいた、片岡次長に尋ねた。
「ああ、部長は今日、九州に出張。朝から新幹線で直行だそうだ」
「出張…」
そうか、山崎部長は出張かぁ…。
「ああ、だから先にお茶くれない?」
「あ、ごめんなさい」
わたしは片岡次長の席に湯呑みを置き、気を取り直してお茶を配って回った。
会えなかった事は残念だが、この世界に山崎部長が来ている事は確信出来た。もし来て
いなかったら名前は、元が何と言うのかは分からないが、別の名前がついていただろう。
でも、いきなり慣れないこの世界に来ていきなり出張して営業とは、山崎部長も大変だ
と勝手に想像した。電話してみようかと思った。携帯はかさばる形をしてはいるが、この
時代既に出回っているし、部長も立場上持っているのだろう。でもそんな事で、わざわざ
電話をかけるのも不自然だろうと思ってやめた。
自分自身の現代人的モラルのせいか、50年前のこの世界の人達みたく、あまり用もな
いのに電話をかけるということはしたくない、というのもあったが。
事務所を一通り回って、お茶を配り終えてから、給湯室に帰った。

マルチプル鉄工配管は、その名の通り、ステンレスパイプの製作や配管を専門にしてい
る会社で、100名の従業員はほとんどが現場作業員である。事務所にいるのは、専務と
技術部部長兼常務を除けば、経理と総務と営業で男性社員が約10名。女性社員は私を入
れれば6名である。社長は別室の社長室にいる。
で古参の曽根さんを除く五人が朝一番、交代で事務所の人達のお茶を入れる事になって
いたのだ。
お客様が来社された時に、応対しお茶をいれるのは当然としても、私達の仕事はお茶く
みだけではない。
伝票等書類や領収書等の整理や帳簿付け、発注対応、納品書・請求書の発行から、見積
書の清書やワープロ打ちなどもする。いわゆる経理および営業のアシスタントといったと
ころだろうか。
私はもともと営業だった為、こっちの作業はあまり知らなかったし、50年前のシステ
ムというものが、さらに戸惑いをかけている。
何せ得意先の指定納品書が、全て手書きで、社印・社判を一枚一枚入れていかなければ
ならなかったり、最後にそれらの合計もいちいち電卓で出さなきゃいけなかったり、しか
もこの時代、まだ消費税5%を上乗せした金額を計算しないといけないのだ。
慣れているはずのこれらの作業は、なぜかそのたび手間取った。
どうやら、元のこの娘もこの手の作業はあまり得意ではなかったらしい。
「あ、これ。見積書のワープロ清書しといて」
営業の熊倉主務が1通の見積もり原稿を置いていったのも、そんな悪戦苦闘していた頃。
「ああ、まだやってねぇじゃないか。急ぎなんだぞ」
しばらくして戻ってきた熊倉主務の第一声がこれだった。
「え、でも、いつまでとか、急ぎとか何も聞かされてなくて」
「よく読めよ。このオリエンタル金属つーたら、今、一番うちが力入れてるところだぞ。
言われなくても気付けよ!」
熊倉主務はその原稿をばんばん叩いて怒鳴る。
「分かりました。すぐします」
私がその原稿を取ろうとすると
「いい。俺がするから。今度から気をつけろよ」
と言い、別の人が使っていたデスクトップのパソコンを強引に押しのけて、カタカタと打
ち始めた。
「あ、あの、あたし…」
その場に立ち尽くす私に、先輩女子社員の菅原さんが肩を叩いた。
「いいから仕事続けよう。あんなんで一々気にしてたら、また失敗するよ」
「あ、はい。」
「失敗は、心にとめておいて。でも気分は切り替えないと。そうしないと同じ所で同じ失
敗を延々繰返すことになるんだから」
「はい。すみません」
私は菅原さんにも頭を下げ、仕事に戻った。
私が気にしていたのは、失敗した事の方ではない。いや、失敗とすら思っていない。
ああいう言い方だったら早くても午後イチ、普通なら夕方までに仕上げればOKといっ
た感じの頼み方だ。頼み方が悪い。
私が気になっていたのは、そんな頼み方をする態度の方だ。
この時代、男性社員は女性社員に対して、ああいう態度が当たり前なのだろうか。明ら
かに見下した感じだった。
いや、自分も営業の時、ああなのだろうか。
いつの間にか、ああいった態度をとっていないだろうか。
嫌だった。何か凄く嫌だった。
ただそれだけを感じていた。

「これさぁ、午後からの会議で使うんだ。この付箋してある部分を10部づつコピーして
おいて」
と、総務部の木村課長から一冊の本を渡された。
本の方は、今この時代でベストセラーになっているピジネスマン向きの本。
「で、コピーし終わったら、ホッチキスで閉じといて。あのごついホッチキスでな」
そう言いながら、木村課長は去っていった。
彼は彼でまだ仕事があるのだろう。
『しかし…』私はパラパラと、本をめくってみた。
付箋の数が凄い。ここからここまで、とか、優に100ページは超えそうだ。
100ページをコピー、2面取れるから半分の50枚。
コピーもタダじゃない。1枚10円として、50枚で500円。
手間も考えれば、この本10冊買った方がいいんじゃないの?
そう思ったけど私は、言われた通りに本を10部づつコピーし始めた。
ちなみに私の時代にはもうこんなコピーはない。
今のコピーに一番近いもので、書類を丸ごとスキャナーし、文字と判断されるものは文
字として、絵や写真と判断されるものは画像としてレイアウトされ、電子ペーパーに印刷
する。
ちなみにこの電子ペーパーとは液晶の技術を応用し、ポリシリコンの薄幕の間に磁気性
インクを封じ込め、電気を通すとインクが浮き出てくるしくみになっている。1枚あたり
0.2ミリメートル、両面印刷可で、折るのは困るが曲がる範囲までで曲げる分には印字に
は影響ない。しかも最初に印刷してしまえば電源を切っても大丈夫。印刷は何度でも使用
可だから、無駄コピーは事実上、ない。
電子ペーパーは一枚一枚ではなく、たいてい20枚、50枚、100枚とバインダー方
式になっていて、背表紙部分を端末にセットすれば印刷できる。
見え方としても、この時代で言えばクリアファイルに入った書類を見るような感覚だろ
うか。
ちなみにインクが磁性体だから、専用ペンを使えば書き込みも、消しも出来る。
4色カラーインクを使ったカラーペーパーもあるが、少し高い。
で、私はこの時代の、1枚1枚紙にトナーで印刷するコピーを、無駄だ、非効率的だと
思いながらも、100頁分の会議資料はを、また1枚1枚折りたたんで、束ねて、ごつい
ホッチキスで閉じていった。
しかも、この身体が非力なせいか、一回二回じゃ、ホッチキスの針が通らない。
必死の思いでなんとか10冊作成し、木村課長に渡して自分の席に戻ると、
「わぁ」
山ほどの伝票が机の上に溜まっていた。

女性は仕事が遅いし、頭も悪いし、トロい。
私達(あれ?)女性社員は、男性社員にそう思われているふしがある。
それはある意味正しい部分もある。
しかし、不可抗力もある事を分かって欲しい。
まず、ヒマだと思われているのか、雑用が回ってくる事が多い。
しかも、電話にも出ないといけない。
電話に出るのが嫌なのではない。私達女子社員以外が、電話に出ない事が問題なのだ。
一部総務の人が出てくれる場合もある。2コールして誰も出ない時など。
別に部長や次長クラスの人に出て欲しいなどと思ってはいない。逆に、部長・次長がほ
いほい電話に出るようなら会社として軽く見られてしまう。それはやめてほしい。
私達女子社員が全員用事があったり別の電話に出てたり、また辛うじて出てくれそうな
総務の人達が出払ってたりしていた時に電話がかかってきたらどうなるのか。
延々コールされて切れるのだ。
そこにたくさんの人達がいるにもかかわらず。
確かに電話に出れば、それまでの作業が中断されるから効率は下がる。でも、それは私
達も同じだ。
確かに、うちは工場系だし、製作なのか、配管なのか、処理なのか、かなり専門的な話
も多いし、現場に繋ぐのも神経使うかもしれない。でも、それも私達も同じだ。
積極的に取れとは言わない。いえ、私達で積極的に出ます。
でも、誰も出れない時くらいは、いやいやながらでも出て欲しい。ひょっとしたら重要
な電話かもしれないし。あんた達・営業の大切なお得意先である可能性も高いんだし。
あと、お客さまが見えたときは、お茶も入れなければいけない。
それはまぁ、仕方ない。
お客さまとしても、仮に美味しく入れられたとしても、ごつい男から「どうぞ」とお茶
を出されるのは嫌だろう。
でも、色々な雑用で、作業が中断される事が多いことくらいは分かって欲しい。
「あ、これ、社印と社判押しといてね」
そう言って、束で納品書を渡される。
はい。やりますけど…。

それは、その日の午後に起こった。
棚の上の方にある書類バインダーを取ろうとして踏み台に上っていた時、ちょうどその
お尻が無防備に見えたのだと思う。
そこを通りかかった、営業の好田が(呼び捨て)
「よぉ、頑張ってるなぁ」
と、お尻をなで上げるように触っていった。
「あ、ひゃぁっ!」
一瞬、何をされたか分からなかったが、落ち着いてくると、自分が何をされたのか分か
ってきた。
なぜ?と思いながら、再度改めて自分は女なんだという事を思い出した。
とたんに顔か熱くなった。
同時に背筋に震えが走った。
女として、感じた訳ではない。
嫌悪感だ。
触られた…お尻を触られた…お尻を触られた…お尻を触られた…
頭の中に、その言葉がリフレインした。
直後、好田と目が合った。
とたんに何も考えられなくなった。
「いやぁっっ!!」
思わず私は、その場から逃げ出していた。
そこに1秒と居たくなかった。
「あ…」
「え?」
「なんだ?」
その場にいた人、全員の目が好田に集中した。

「うああああっ。くっ、うああああ」
私は誰もいない給湯室で泣いていた。
お尻を触られたことそのものが、そんなに嫌だった訳ではない。
あえて言うなら、引き金。臨界直前のところに、触媒を放りこまれたような…。
嫌だった。何もかも。
自分が女としてこの世界に生きている事。
OLが、明らかに冷遇されている事。
自分の仕事上の役割が、ほとんど重要視されていない事。
そして今、部長に会えない事。
それでもなんとか我慢していたのだ。
我慢して仕事を続けていたのだ。
でも、そんな時、私はお尻を触られた。
それは(逆恨みもあるが)、上記4項目を含め、全てにわたって神経を逆なでするのに
充分だった。
「真理…」
いつの間にか後に同僚の白瀬由美がいた。
「どうしたの?いつもだったら、あんな事平気で笑っていたのに…」
「分からない。でも何か、凄く嫌なの」
「真理さぁ」
白瀬は思いつめたように話し始めた。
「何か今日の真理はいつもと違うみたい」
「えっ?」
私は心臓が高鳴るのを覚えた。
やはり、何か変だったのだろうか。
「でも私、今日の真理の方が好き。いつもはもっと刺々しい感じなんだけど、今日はいつ
もよりずっと素直で、何ていうか、私の言う事とかちゃんと聞いてくれて、見下してない
っていうか…私、真理と同期入社だけど、高卒だから…」
「高卒だから、大卒だからって関係ないじゃない」
私は降り返って白瀬の方を向いた。
確かに私というキャラクターの高梨真理は、さほどレベルは高くないとはいえ大卒であ
る。現実の自分も、やはり自慢できる程のレベルではないが理工学部で大卒である。
でも私が大学に進んだのは、金属やセラミックなどの勉強がしたかったからで、学歴に
箔をつける為ではなかった。というより今の時代でその為に大学へ行く人は少ない。
なぜなら社会と言うか会社のシステム的に学歴より能力を重視しているから、大卒より
はるかにいい給料貰っている高卒などザラで、というより大学で4年間勉強する以上に現
場での濃い経験を4年間積んだ方が、戦力としては上だから、ちゃんとしたポリシーを持
たずに大学に行くなど時間の無駄だ。
しかも就職してからも勉強がしたければ、会社に通いながら大学に通う事も可能だ。
例えば、私の場合でもOB生特典で単科授業料を払って、週4時間母校の講義を会社に
いながら受講している。(当然会社に許可はとっているが)モニター越しとはいえリアルタ
イムだから突然問題を振られる場合もあるし、質問も出来る。
閑話休題。
だから大卒だからって自慢した事もなかったから、高卒であるから、それをコンプレッ
クスに感じている人がいる事が分からなかった。
でも、この時代ではそうなんだ…。
「あ、仕事中断しちゃったね。帰らないと」
私は帰ろうとして、
「いいじゃない」
と、白瀬に引き止められた。
「セクハラされた当人が、さっさと帰ったら効果がないわ。ちょっと時間をおいて当人を
反省させないと」
「でも…」
「私もいいかげん、この手のセクハラにはうんざりしてるの。これをきっかけに少しはマ
シになるんじゃない」
そう言いながら、白瀬は2人分お茶を入れ、椅子に腰掛けた。
自然、私ももう一つの椅子に腰掛ける形になる。
「私は役割上、真理を慰めに来ている形になっているから、真理が帰ったら私も帰らない
といけないからね」
言いながら白瀬は、えへへ、と笑った。
私もちょっと肩の力をぬいて、白瀬が入れてくれたお茶を飲んだ。
と、その時、ガチャッと給湯室のドアが開いて古参の曽根さんが入ってきた。
「高梨さん、あなたセクハラされたって…あら?」
心配そうな口ぶりだったが、いざ入ってきたら、ちゃっかりなごんでいる私達を見て、
少し拍子抜けしたらしい。
「その分だと、もう問題なさそうね」
そう言いながら曽根さんは中に入ってきた。
「私もちょっと休憩しようかしら」
お茶のみ仲間が一人増えた。

ゆっくり休憩してから職場に戻ると、好田はその場にいられない雰囲気だったのか、外
回りに出て行って、席にはいなかった。
周りの人の同情の目が集まる。
「あ、私はもう大丈夫です。心配かけてすみませんでした」
私はペコリと頭を下げる。
「いいんだよ、嫌なものは嫌で」
熊倉主務が、とりなす様に言う。
熊倉主務は、忙しいときは恐いが、普段は結構やさしい。
「でも、これでもう女子社員のお尻が触れなくなったな」
「主務〜っ」
白瀬がジト目で睨む。
「冗談だって、冗談」
そうかわしながら、熊倉主務は自分の席に逃げる。
やがて職場は元の雰囲気に戻った。皆、自分の仕事を再開している。
わたしもやりかけたファイルの整理を始めた。
台の上に上がっているが、もう誰も私のお尻を触るどころか、男子社員は少し避けなが
ら通っていく。かえってその態度がよそよそしく、何か注目されている感じだ。
別の意味で意識されているらしい。
やっぱり、これ見よがしに目の前にあったら触りたくなるものだろうか。
それとも、そういう意味で魅力的なのだろうか。
私のお尻って…。

「あ、高梨くん。大丈夫だったのかね」
夕方になって部長が帰ってきた。
姿も声も、この世界だから全然違ってはいたが、私は一目で分かった。
前知識としてのそれではない。
何て言うか、雰囲気、表情、しゃべり方。山崎部長は、やっぱりこの世界でも山崎部長
だった。
心配そうな山崎部長に、私は笑顔をとりつくろいながら
「ええ。もう大丈夫です」
と、答えた。
「よかった。少し心配していた」
多分途中、携帯電話とかで、この出来事を聞いていたのかもしれない。
「あ、部長。どうでしたか」
後から、片岡次長が声をかけた。
「ああ、何とか事情話して分かってもらえた。今入っている分は仕方ないとして、来週に
出張して補強する。資料渡すから、チーム組んでおいてくれ。最優先でな。
俺は、先に専務に報告に行ってくる」
そう言いながら、部長は次長に封筒を渡した。
「じゃ、後で」
その言葉は、片岡次長に言ったのか、私に言ったのか。
そうか。出張は出張でも、いきなりクレーム対応の出張だったんだ。
部長も大変だ。

時間は7時を少し回った。
山崎部長が会社から出てきた。
「すまん。少し待ったか?」
「はい。でも、私もやり残し片付けてましたので、少しです」
それでも30分は待っただろうか。
奥の会議室から部長が出てこなかったから、先に帰ったという事はないと確認はしてい
たけど。多分、その来週の出張配管の打合せだったのだろう。
「もう、今日は疲れた。腹も減った。どこかで晩御飯にしよう」
「はい」
そう言われて初めてお腹がへっている事に気が付いた。
と、いうより生理的な感覚は、本人が意識しないと感じないのだろう。
考えてみたら、私は今日、トイレに行っていない。美人はトイレに行かないという話も
あるが、現実だとこうはいかないだろう。行きたいと思えば行けるのだろうが、私はあえ
て行きたくなかったから、行かずに済んだらしい。
バーチャル世界は便利だ。

お店は会社最寄の駅近くにある、割烹の店に入った。
大衆的な店ではなく、小奇麗な店で、酔っ払いのサラリーマンは少なかった。
刺身、煮物と適当に頼み、ビールで乾杯した。
「この時代はまだ、ごく普通に天然魚が食べられるんですね」
「まぁ、自分らには天然・養殖の区別なんかつかないがな」
「じゃ、こっちでしっかりと食べとかないと」
と、言いながらふと気付いた。
自分達は、タイムマシーンで50年前に来ているのではない。バーチャル世界で体験し
ているだけだ。
バーチャル世界で天然物を体験するのと、現実世界で養殖ものやモドキ製品を食べるの
では、どっちの方が価値高いのだろうか…。
「大変だったな」
部長は空いたグラスにビールを注いでくれた。
「部長こそ」
「いや、俺はいいんだ。男でも女でも、仕事的には同じようなものだし、仕事に対するノ
ウハウはこの身体が覚えている。」
部長はそのがっちりした体格の、ダブルのスーツの胸をバンと叩いた。
「でも君は、特にこの世界の男女差別の真っ只中に放り込まれて、大変だったろう」
「ええ、確かに」
私は一口ビールを飲んだ。
「今の世界に比べ、この世界は理不尽です。女というだけで、大切な仕事も任せて貰えな
いし、雑用も多いです。人によっては、単なるお茶くみと思われている感じもあります」
「みたいだね。もし俺もこの時代に生まれてたら、部長どころか課長にすらなれたかどう
か」
「曽根さんみたいになってたかも」
「そうかもなぁ」
別に曽根さんに恨みがある訳じゃないけど…。
「私も…」
ふと、思っていた事を言ってみる気になった。
「私も女性の事務員さんとかに、横柄な態度をとっていたのでしょうか」
部長はそんな私の顔を見て、言った。
「さあな。でも、むしろ自分達の時代では、純男より新男の方が横柄というか乱暴だ。そ
れを男らしいと思っているところがあるしなぁ。でも、本気で嫌がる事はしないと思う。
女が嫌がる事をするのは、最も男らしくない事だから」
「そうですね」
新男は、それぞれが理想とする男になろうとして男になる人が多い。中にはというか、
かなりの確率で男を勘違いしている人もいるが。
「いっそ、世の中に男なんかいらないのかも…」
「本気で、そう思うのか?」
「分かりません…」
私はグラスを両手で握り締めた。
「そしたら高梨くんも、いっそのこと女になるか?」
「え?」
思わず私は部長の顔を見上げた。
相変わらず、冗談とも本気ともつかない顔だ。
「あの、でも、それはそれで…」
と、言いかけて
「そうだな。やっぱり高梨くんは元気な男の子の方がいい」
少しからかわれていたらしい。

「さて、そろそろ行くか」
「はい」
部長は先に伝票を掴んで立ち上がっていた。
何か最近奢ってもらってばかりだ。
立ち上がろうとした。
「あれ?」
とたんに酔いがまわったせいか、ふらっと足がもつれた。
「危ない」
思わず部長に抱きかかえられていた。
「大丈夫か?」
「あ、はい。少し酔いました」
ふと目と目が合う。
その目はとても優しく、また、今男としての身体をもっているせいだろう。同時にとて
も逞しく感じた。女としての頼りない身体の自分とは対照的だ。
それは部長としても同じだった。
今、ここにいる自分は、とても軽く頼りなげで、肉体的にも守ってやりたい存在になっ
ていた事に、改めて気が付いていた。
とたんに抱えられたその身体は、さらにぎゅっとその腕に力が入った。
「部長…」
その言葉に反応したのか、とたんに抱かれていた身体を引き離された。
再度、部長の顔と向き合った。
「すまん。いきなり。びっくりしただろう」
部長は目を伏せた。
「いえ、いいんです。」
私は思わず首を振った。
「私、嬉しかったんです。部長に抱きしめられて。だって…私…」
その時、自分が女性である自覚を感じたが、不思議な事に不快感はなかった。
相手が山崎部長だからだろうか。
そして山崎部長が今、男だからだろうか。
思わずその目に涙が浮かんでいる事に気がついた。
好きだった。
山崎部長の事が。
本当に。
今、初めてその事に気付いてしまったのだ。
「すまない。今日、私はどうかしていたんだ。いくらなんでも…私は…」
部長は、そそくさと勘定を済ませ、外に出た。
私は山崎部長を追いかけ、後から抱きついた。
「た、高梨くん…」
「部長。そんな。ずるいです。私、自分自身の気持ちに気付いてしまいました。逃げない
で下さい」
「でも、これはフェアではない。現実に帰れば君は男、そして私は女だ」
「部長は私が嫌いなんですね」
「違う!」
山崎部長は叫んだ。
「断じてそんな事はない。好きなんだよ。愛しているんだ。でも、だからこそ俺は君に対
して言っちゃいけないんだ」
「どうして?。だって私が貴方を好きで、貴方も私を好きで、現実でも男と女でしょ。結
婚だって出来ます。というより、私は部長と」
「高梨くん…」
部長は私の手を取り、振り返った。
自然、私と目が合う。
「いいんだね」
「この時代、部長が部下のOLに手を出す事は、珍しい事ではありません。しかも部長は
独身。世間は許します」
私達はその足で、シティ感覚のラブホテルに入った。
店の雰囲気で選んだのではない。
一番近かったのだ。
入り口で、手近な部屋のスイッチを押して鍵を取り、部屋に入ってロックをかけた瞬間、
私達は抱き合っていた。
唇が重なり合う。
抱いたその手が体中を這い回る。
「ああ…」
頭がしびれ、視界に霞がかかる。
次の瞬間、ふわっと身体か浮いた。
身体ごと、抱きかかえられていたのだ。
部長の逞しい身体に、身を全て任せて力を抜いた。
どさっと、降ろされた。
クッションのきいた大きなベッドだった。
「部長…私…」
言い終わらないうちに、その口は部長の口で塞がれた。
再度くらっと、意識が遠ざかる。
唇を奪われたまま、ブラウスが、スカートが、脱がされていった。
部長の舌が、唇からあごに、首筋に、どんどん降りていった。
やがてブラを外され、小ぶりだが形のいい私のおっぱいの先に到達した。
乳首の先を吸われ、舌で外輪をなぞられ、軽く歯があたる。
「あっ…ああ…どうして?こんなに…」
感じるのだろうかと思った。
背筋にゾクゾクっと、電気が走った。
ただし、これは逆の意味で。
まるで、おっぱいと脳までの神経が、直結してしまったかのようだった。
両腕で、部長の身体を抱こうと手を回す。既に部長もスーツもワイシャツも脱いでいた。
背中の鍛えられた筋肉のひとつひとつを指でなぞった。もう片方の腕で、短く刈り上げら
れた頭を抱きかかえた。
不意に部長の指がショーツ越しに、私の一番敏感なところに触れた。
「あっ!」
初めて感じる感覚だった。
指がその谷間に沿ってゆっくり上下する。
「あっ・あっ・ああぁ」
部長の頭を両腕で抱いて、激しく振った。
もう、体中が燃えるように熱かった。
ショーツ越しに行き来していた指は、まるで吸い込まれるようにショーツの中に滑り込
んでいった。ショーツ越しではなく、直接その指が私の谷間にもぐる様に入ってきた。
「ひぁ…あ…うく…」
この身体そのものは、既に処女じゃないかもしれないが、私の意識そのものはバリバリ
の処女なせいか、思わず太ももが閉じられてしまった。
ギュッとしまったその中で、私の体の中に入っている部長の指を感じた。
「大丈夫。大丈夫だから、力を抜いて…」
部長の首が持ち上がり、耳元で囁かれた。
「はい…」
私はそれだけ言うのが精一杯で、腕も、足も力を抜いた。
部長のもう片方の手で、ショーツを脱がされた。
脱がされ、広くなって自由になった指が、再度私の体の中に侵入してきた。奥そこにま
で指が伸びたかと思うと、次は入り口近くの中をこするように動く。
そして残った親指が、穴のすぐ上、つまりはクリトリスをなでるように動く。
「ああ、うぐっ、いい…ああ…」
もはや、私はされるがままだった。
今までまるで知らなかった私の身体の、ひとつひとつを確かめるように、指が全身を這
い回り、もう片方の指は、私のあそこを、執拗になでていた。
これが、女の快感。女の…。
女のぉ!?
今まであえて考えることのなかった意識が働いた。
私は今、男の部長に抱かれている、一人の女なんだ。
そう思った瞬間、さらに私のあそこの奥底から、泉が湧き出るのを感じた。
嫌悪感ではない、素直な快感があった。
同時に背筋あたりで止まっていた何かが、背筋を通り越して脳まで突き抜けた。
「ああっ!いいっ、いいっ、いやっ、いやっ、あああああああ!」
頭が真っ白になった。
何度も頂点にぶち当たった。
このまま永遠に続くかと思った。
何も考えられなくなった。
気が付くと、目の前に部長の顔があった。
「部長…」
「いいかい?」
再度部長の指が、私のあそこをなでた。
背筋にまた、電気が走った。
「はい…来て…来てください…」
部長がおおいかぶさるように、私の身体に乗りかかってきた。
「いいのかい?」
部長は再度聞いてきた。
「はい」
私は言うと同時に部長の首に手を回して抱きかかえていた。
「んっ…」
部長はゆっくり、持ち上げるように身体に身体を密着させていった。
その私の身体に、太ももに、部長の股間のアレが当るのを感じた。
私は、私自身のものしか知らないから、世間一般的に見ても、ちょっと
大きいのでは、
などと思いながらも、部長は私の身体をまさぐっていたが
「あっ、あああっ」
その大きなものが、私の中にむりやり侵入してきた。
「うっ…あくっ…」
「い、痛いかい?」
心配そうに部長が聞いてくる。
「だ…大丈夫です。」
部長のソレは、私の中で出たり入ったりしながらも、ゆっくりと奥へ奥へと侵入してき
た。私は、力を抜こう、抜こうとしながらも入る下半身の力に抵抗し、部長の背中に手を
回した。
私の身体自身は処女ではないはずだから、部長のそれが大きいのであろう。
部長が中に入ってくる。
ぬりっ、ぬりっと、ゆっくりとだが、
痛い。はっきり言って、痛い。
でも、逆にその痛さが、部長自身の存在を感じられて、なぜか嬉しかった。
「大丈夫?もうちょっとだから」
「は…はい」
やがて、部長のお腹が私のお腹に当った。
こっちも奥に当ったような感覚だった。
「じゃ、動くよ」
「はい」
ゆっくりと、部長のソレが私の身体の中を動いた。
中のあちこちがこすられて、伸ばされるような感覚だった。
「ああ…」
こすられ痛かったが、部長の気持ちがいいのなら、私はいい。されるがままに、されて
いた。自分がしていた時を思い出し、動きに合わせ、横に斜めに腰を動かした。
「あっ・あっ・あっ」
動きが速くなった。
自分の動きと、部長の動きにズレが出来た。ズレが出来ながらも縦に、横に、必死で動
いていた。
感じているんだ。部長も、私の中で…。
そう思うと、嬉しくなった。
嬉しくなると同時に、別の感覚で身体が感じ始めていた。
「あっ・あっ・あっ・あっ」
動きが速くなったまま、腰がメチャクチャに動いた。
動き、心臓がドクドク高鳴ってきた。
感じている。私も感じている。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
と、部長の息も荒くなった。
「いい、いい、いい」
と、私自身の喜びなのか、部長が感じている事の喜びなのか、
感情が、感情が、高まっていた。
動きは、もはや最高潮に激しくなった。
心臓も高鳴り、息も絶え絶えになった。
「ん・んん・あ、うっ!」
私の体の奥で、何かがはじけた。
「ああああああああっ」
とたんに私の体の奥も極まった。
動きがゆっくりになってきた。
身体の奥に行ったものが、じわりじわりと降りてきた。
部長が、ぎゅっと私の体を抱きしめてくれた。
身体の奥が、じんじんとしびれてきた。
部長のそれはまだ私の中だが、すでに柔らかくなっていて身体を動かすたびに、ぬるり、
ぬるりと動いた。
部長が私の唇に、唇を重ねてくれた。
「部長…私…幸せ…です」
「そうか…」
部長も今は男の為か、口数は少ない。
「部長、私、元の世界に帰ったら…私」
「ストップ!」
部長が私の声をさえぎった。
「現実世界に帰ったら、君が男で私は女に戻る。それはいい」
「はい」
「でもこの世界でなら、私は歳はとっていても男。君は若い女。それはいい」
「は、はい」
言われながら、私の声が曇ってきたのが分かった。
「でも現実は逆だ。君は男。後の代に正常な子供を残していく義務がある。それに対して
私はもう、子供は産めない。恥ずかしながら、上がっちゃっているんだ。そういう意味で
もう私は女じゃなくなっているんだ」
「部長…でも…」
「君が私と一緒にいたい気持ちは分かる。というより、私の方が多分その気持ちは強い。
でも、私は多分嫉妬深い。いくら人類の為とはいえ、好きな人が他の女に子供を産ますの
は我慢できない。なら、それなら最初から」
「部長っ」
私は部長に懇願するように見上げた。
とたんに部長は顔をそむけた。
「だから、これが私にとって、最初で最後の恋のチャンスだった。現実世界ではもう叶え
られない。この世界でしか…」
熱かった。その想いは熱過ぎた。故に伝わった想いだった。
「夢…なんですね。これは。この、現実でない世界の」
「そうだ…な。夢だ。現実世界では2時間足らずの…」
私は思わず、顔を上げ、部長に迫った。
「なら、もう一度抱いて下さい。この夢が醒めるまで」
「そうだな。こっちの世界では、まだ14日ある。それまで夢を楽しむくらい、許される
だろう」
部長は再度私を引き寄せようとした。
が、その時、いきなり私の喉が、頭が、掻き毟られるように圧迫された。
「ぐっ、ぐぁ、がっ…あぐっ…あ・あうあ!」
「ど、どうしたんだ、高梨くん。」
部長が寄って介抱しようとしてくれている。
しかし、私は自分に何が起こっているのか分からなかった。
ただ、苦しかった。
首の奥、骨髄が、頚動脈が、ブチ切られるように痛かった。苦しかった。
「おぁ、ぐあ、ごっ・・・ぐぐ…」
「高梨くん。高梨くん!」
暴れてバタバタするのを、部長は取り押さえてくれている。心配そうに顔を覗き込んで
くれている。
しかし、それとは対照的に、意識は遠くなっていった。
目の前の部長の顔が、暗くなっていった。

ぐったりとした高梨真理を、どうしたらいいのか分からないまま、山崎はただうろたえ
ていた。静かになり、脈を、呼吸を確認した。
共に正常。死んではいない様だった。
しばらくして高梨真理は、「う〜ん」とうなって、目を覚ました。
「あれ?部長。何でこんな所で。それにあたし…」
高梨真理は、回りを見て、ぼやっとしながら山崎部長の方を向いた。
「いつの間にあたし。あ、部長。何か睡眠薬か何か使ったでしょう。そんな事しなくても
あたし、部長になら…」
高梨真理はシーツで胸を隠しながら山崎に迫った。
「お、おい。高梨くん。何の真似だ?」
「高梨?」
目の前の高梨真理は、わざとではない、本当に訳分からないといった表情を見せた。
「部長、私の名前くらい覚えて下さいよぉ。私は佐倉。佐倉真理ですよぉ」
「何ぃっ!!」
山崎は頭のメモリーを解放した。
佐倉・真理。高梨がダイブすることで、高梨真理になっていたが、本来の名前。
だから今、ここにいる真理は、AIの真理という事になる。
山崎の身体から何か凄く大切なものが抜け落ちた。
血の気が一気に引いた。
「じゃ、高梨くんは、高梨くんはどこだ」
叫びながら、山崎はベッドから飛び出た。全裸のままだった。
隣で真理が「キャッ」と言って目を隠した。
「おい、これもモニターしているんだろ。俺を帰してくれ。元に帰してくれ」
どこに向かって言えばいいのか分からないが、山崎は上に向かって叫んだ。
「高梨くんは、高梨くんはどうしたんだ。俺を、俺を帰してくれ」
ただひたすら、モニターしているであろう現実のバーチャル・ダイブの端末装置に向か
って、山崎は叫び続けていた。


あとがき2
言い訳です。
前回、のっけから差別用語を使用しておりました。
当然の事ながら、差別的意図でその言葉を使った訳ではありません。(まぁ、私は性格上か
なり過激なところがありますので、意図しない事で誰傷つけることもしていたでしょう)
とはいえ、今回の言葉で傷つかれた方、また騒動でこのポームページの事を心配されてい
た方、そしてこのページ主催者であるPOPOさんには、改めて謝罪いたします。
本当に申し訳ございませんでした。

もう一つ。これは作品に対する言い訳ですが、この作品はある意味私が、本格的に書いた
TSの直接的表現作です。
思いっきりジェンダー問題について考えてみました。
とはいえこのサイトで、肉体的ジェンダーでなく、社会的ジェンダーについて取り組んで
どうする?という話もありますが。
ストーリーのバランスが崩れやしないかと、意図的に萌えシーンを排除していましたが、
読み返してあまりにも色気がないので、これはいかんとリミッターを外した瞬間、逆に今
までの反動でそっち方面に突っ走ってしまいました。
再度読み返して、私にもこういった文章が書けるんだと逆に感心してしまいましたが。
いかがだったでしょうか。
お役に立てましたでしょうか(何の?)
次は第三章。
起・承・転・結で言うところの転ですので、刮目してお待ちください。