掛け軸の仕組み

  

      【掛け軸の形式】   【掛け軸の断面構造】   【掛け軸の名称】    

掛け軸の形式】 

 掛け軸には、真行草という格式があります。しかし、必ずしも格上の掛け軸がいいかといいますと、そんなことはありません。掛け軸は本紙(絵画や書)の内容によって、ふさわしい形に仕上げるのが最も美しいとされています。

【真の表具】
真の表具(ひょうほえ)は宗教画や題目・神号などに用いられる形式で、最も格式高い形である。神聖表具・仏表具・本尊表具・仏仕立てと呼ばれることもあります。

真の真という形はあまり用いられることがなく、仏表具等には真の行・真の草が用いられるのが一般的です。

真の草 真の行 真の真
【行の表具】
行の表具(どうほえ)は、最も広く見られる形で、真の表具(ひょうほえ)に次ぐ格式である。この行の表具は、古筆や墨跡・絵画などを中心に幅広く用いられ、本表具や三段表具・大和表具などと称されています。

文人画、南画以外にならどのような本紙にも用いられる、上品で華麗な形です。

行の草 行の行 行の真
【草の表具】
草の表具(りんぽえ)は行の表具(どうほえ)の柱の幅を狭くした形で、茶人の書画や禅僧の墨跡・大徳寺物など、主に茶掛けとして用いられます。現在は輪補と呼ばれています。

草の表具に真の形がないのは、『三百箇条』の草の表具には真がないという一説が今日まで主流となってきたからである。しかし織田有楽斎は、草の表具にも真を定義した人もいました。

個人的な考えでは、真の形がないのは、柱が細い為に一文字廻しを入れるのが困難であったからではないかと思います。

草の草 草の行
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掛け軸の断面構造】

掛け軸は、3回の裏打ち(本紙の肌裏・増裏、裂(キレ)の肌裏・増裏、本紙と裂を合わせてから打つ総裏)がなされています。表具師は、肌裏・増裏・総裏ごとに異なった紙を用いて掛け軸の調子を合わせます。

使用する紙について申し上げますと、本紙の肌裏には薄美濃紙・小判美栖紙・文化美栖等が使われます。次に増裏では美栖紙・文化美栖等を使用します。そして総裏は宇田紙・文化美栖で仕上げます。本紙や裂に応じた紙を用いることで掛かりのいい、掛け軸が仕上がるのです。
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掛け軸の名称】
【一文字】:本紙との取り合わせにおいて最も重要な部分で、中や上下よりも高級な裂でなければならない為、通常は金襴を用います。本紙の色や強さに応じて、裂の色や柄を決める必要があります。一文字は本紙を引き締め、掛け軸に風格を与えます。
【中】:本紙の周りを飾る裂で、上遠州や緞子を使うことが多い。仏掛けなどでは金襴を用いる事もあるが、一文字より質の低い裂を使います。
【上下】中の上下の部分のことで、天地とも言います。通常上下には、‘しけ’や‘ななこ’のような無地の裂を使います。
【風帯】風帯の裂は大体一文字と同じ物を用います。通常の上から下げる風帯を下げ風帯と言います。この他風帯を貼り付けた押し風帯や、紙表具で割り風帯というのもあります。
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