佐伯屋
SAEKIYA TALK
第3回:平成14年5月16日
日韓共催ワールドカップ直前企画・予選各グループ順位予想

グループC
良かったねセレソン、一人勝ち

ゲスト:らくさん

ゲスト略歴
 福岡県出身。仏教からNBA、大分トリニータまでを気軽に語るサイト「らくのSports CAFE」の管理人。大のプロレスのファンでもあり、レスラーフィギュアの収集をするにまで至っている。最近では同サイトでワールドカップリポートを始める予定で、その動向が注目される。

イスタンブールで全試合できれば・・・。
佐伯屋主人・丸木音二(以下、主人)
 第3回はC組です。この組の1、2位は、決勝トーナメント・ベスト16で、日本属するH組の1、2位と当たるだけに、日本にとってもその動向は決して無視できません。
 僕の順位予想は以下の通り。1位ブラジル・・・。あとは、ちょっと迷いましたが、対戦スケジュールを見て結論が出ました。2位コスタリカ、3位トルコ、4位支那。

らく
 う〜ん、2位が迷うね。この前、日本と対戦したコスタリカがいいサッカーをしていたにが、印象的だったし、それに、コスタリカは、最後にブラジルと当たる。その時点で、ブラジルは決勝トーナメント進出を決めてる可能性が高いからね。コスタリカは、楽な戦いができる点を考慮して、俺も、同じ予想をしたよ。


主人
 トルコも良いのですがね。最近の国際的知名度とか実績で考えればトルコの2位が順当だけど、ただ全員がW杯初体験のメンバーで、しかも初戦がブラジルというのはやっぱりキツイかと思う。チャンピオンズリーグのガラタサライが証明しているように、ホーム、イスタンブールで全試合できるなら2位どころか1位に推してもいいぐらい(笑)。

トルコは森島のような選手ばかり
らく
 トルコには、いいタレントがけっこういるよね。パルマのハカン・シュクールを始め、インテルのオカン・ブルクとエムレ・ベロゾグル、ミランのウミト・ダバラのようなビッククラブで活躍選手がゴロゴロいる。他にもイングランドやドイツ、スペインでプレーしている選手もいっぱいいるよね。トルコの選手個人個人が非常に俊敏で、プレッシングが速い!森島のような選手ばかりがいるのが、トルコであると言ってもいい

主人
 はいはい。やはり、そのトルコを象徴している選手と言えば、中盤の身長アンダー170センチトリオ、バストゥルク、エムレ・ベロゾグル、オカンですね。

トルコ予想布陣:3−5−2

          ●      ●
      ハサン・サス  ハカン

          ●      ●
       バストゥルク  オカン

   ●                    ●
  アブドゥラ            ウミト・ダバラ

              ●
            トゥガイ

      ●              ●
    ファティフ        エムレ・アシク

              ●
           ウミト・エザト

              ●
            ルストゥ
          

らく
 日本の中田英、中村、小野のトリオですら全員170センチ以上あるというのに(笑)


主人
 バストゥルクは今季のチャンピオンズリーグでのレファークーゼン躍進の立て役者の1人。小柄で、スピードとテクニックを備え、2列目から前線へのスペースへ飛び出していくプレーはまさに森島。相手DFにしてみれば捉えにくい選手です。エムレ・ベロゾグルは左足の正確なキックが持ち味のパッサー。そして、やはり運動量も豊富。だがフィジカルがまだ完成していない分、インテルでは本来のセンターハーフではなく、センターよりはプレッシャーの緩い左サイドでの起用が多かったですね。トルコ代表ではトップ下ですが、2トップの場合、バストゥルクとポジションがかぶってしまいベンチスタートとなることもあり、非常に惜しいところです。そしてオカンも無尽蔵のスタミナで中盤を駆け回り、ボールを持てば馬力のあるドリブル突破と正確なクロスでチャンスをつくる。一時期、強豪インテルでもレギュラーをつかんだ実力派です。

らく
 ただ懸念があるとすれば、トルコの「アンダー170センチ・トリオ」はクラブチームで常時出場している訳ではないということじゃないかな。バストゥルクのレファークーゼンでの今季の貢献度は高いけど、決してスタメンではなく、スーパーサブとして途中交代での出場が多かった。またエムレ・ベロゾグルとオカンは、インテルでセードルフ、ダルマ、セルジオ・コンセイソンといった有力選手とのレギュラー争いに敗北しベンチを温めた。バストゥルクはまだ毎試合のように出ていたから大丈夫だと思うが、エムレ・ベロゾグルとオカンは試合勘やフィジカルコンディションの面で少し不安がある。

主人
 一方、エムレ・ベロゾグルやオカンとは対照的に、トルコのファン・バステンことハカン・シュクルがインテルを脱出してパルマに移ったのは成功でした。高給は保証されているがインテルに残っていても、ビエリ、ロナウド、レコバ、カロンを押し退けてレギュラーを獲るのはどんなFWでも厳しいですよ。チーム状態の悪いパルマで大活躍というわけにはいきませんでしたが、出場機会を保証されたのはトルコ代表にとっては良かった。

コスタリカが90年と同じく旋風を巻き起こす?
らく
 トルコは良い選手は多いけど、やっぱり対戦スケジュールに恵まれなかったね。トルコはブラジルと初戦で当たってからのコスタリカ戦なので、初戦でブラジルにコテンパンにされてしまうことにでもなれば、選手のモチベーションの維持は難しいだろう。48年ぶりとは言え、実質初出場だ。初戦は、自分達のサッカーができず、ブラジルに翻弄される公算が高い。W杯は、経験がものを言う場なのだから。
 一方のコスタリカは、90年以来2回目の出場。初出場に近いが、初戦が、初出場の中国だ。中国に勝って、トルコの試合に望み、最低勝ち点1を取れば、御の字ではないだろうか。次戦がブラジル戦で、厳しいが、すでに、ブラジルは1位通過を決めている可能性が高い。そうなれば、決勝ト−ナメントを睨んで、レギュラー選手を温存したり、モチベーションが低下したりして、勝ち点1ぐらいはゲットできるとも考えられる。前回のノルウェーが、すでに1次リーグ突破を決めたブラジルに対し、勝利したのが、いい例だよね。

主人
 そうですね。ブラジルとまともに戦って競り勝てるとは思いませんが、日本戦を観た限りではコスタリカは好チームでした。ディフェンスラインを深くして攻撃は前線のフォンセカのような選手の個人技を生かしたカウンターが武器のリアクションサッカーのチームでしたが、日本はコスタリカの出足の速いプレッシングに苦しみました。

らく
 いや、俺はあのサッカーをW杯本大会でもできれば、ブラジルさえも苦戦すると思ったくらい。4月に来日した時は、まだ7割程度の出来と言うのだから、本番では、どうなるのか、とても怖い存在。さらに、エースストライカーのワンショぺが怪我から戻ってくるという情報もある。ダークホースとして、コスタリカが90年と同じく旋風を巻き起こすのではないかと思う。伊達に北米カリブ海をトップで通過していないね。

コスタリカ予想布陣:3−5−2

          ●      ●
         ゴメス   ワンショペ

              ●
            フォンセカ

   ●                    ●
 カストロ                 ウォレス

          ●      ●
         ソリス  センテーノ

          ●      ●
      マルティネス  パークス

              ●
             マリン

              ●
            ロンニス

セレソンの監督は勝つサッカーに徹することができない
らく
 1位通過は、断然ブラジルだね。南米予選では、よもやの苦戦で、予選落ちすら危惧されたくらいだったけど、フェリペ監督になって、ようやブラジルらしいサッカーができるようになったと思う。エヂウソンやデニウソンを代表に呼んでから、ブラジル独特のリズム、サンバのリズムと言ってもいいだろうか、ブラジル特有のトリッキーな動きで、相手を翻弄するブラジルサッカーが戻ったように思う。ザガロ前監督だったかな、マスコミの取材に対して、ブラジルはヨーロッパのサッカーいいところを取り入れる必要はない。自分達のサッカーをすればいい。過去4度優勝しているのだから、と。近年、ブラジルのトップ選手は、ヨーロッパでプレーをする。そこで、自然とヨーロッパのプレーに感化され、サンバのリズムを忘れてしまっているのではないだろうか。


主人
 そうですね。クライフもザガロと同じ様なことを言っていたと思う。でもブラジルというサッカー大国で代表選手を務めるのは難しいですよ。あの国ではテクニカルでファンタスティックなサッカーをやった上で優勝しないと評価されないんですよね。94アメリカW杯ではイタリアのような組織的守備を取り入れて優勝しましたが、ブラジル国民の間では、むしろ優勝できなかった82年W杯のジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾの「黄金のカルテット」の方が評価は今でも高いんです。セレソンの監督の難しさは勝つサッカーに徹することができないことですね。

らく
 でも今のフェリペ監督は、予選敗退かと言われていた中で就任したにもかかわらず、結構、攻撃志向なんじゃないかな。グレミオで監督やってた頃は守備を固めて攻撃は前線の選手の個人技頼みというサッカーをしていただけに意外なんだが。
 今のセレソンは、DFラインは日本と同じ3バックに変更されて、ロベルト・カルロス、カフーの両サイドは、より前がかりになり、攻撃的な布陣を敷く。毎年、欠点として指摘されているセンターバックには、アンデルソン・ポウガという選手が入るようだ。この選手は、今年に入って、全ての代表の試合でスタメン出場。かなりのディフェンス力を誇ると言われている。ディフェンスは、このA・ポウガが鍵を握るだろう。

主人
 アンデルソン・ポウガの台頭で、ここ数年セレソンDF陣の柱だったロッキ・ジュニオールがスタメン落ちしてしまいましたね。ロッキ・ジュニオールは、身体能力は素晴らしいものがありますが、好不調の並が激しすぎるのが仇になりました。それからDFではルッシオに注目すべきです。ドイツ・レファークーゼンの選手でレアル・マドリーが狙っていると言われています。迫力あるオーバーラップと長身を生かしたヘッドが武器です。しかし3バックでは攻撃参加は抑制されるかもしれません。

らく
 2ボランチには、ローマのエメルソンとこちらもまた新鋭のジウベルト・シルバが入ると言われている。G・シルバもボウガと同様、今年に入ってから、全ての代表の試合でスタメン出場を果たしている。そして、ボランチよりさらに前線には、リバウドとロナウジーニョがいる。3月ユーゴ戦で、ロナウジーニョの評価が良かった。本戦でもスタメン起用されると言われている。このロナウジーニョとリバウドが交互に司令塔の役目を担ったり、アタッカーとして、ロナウドとコンビを組んだりと縦横無尽だ。そして、サイドからロベカルとカフーが上がり、相手DFを撹乱する。相手としたら、ほんとやっかい。

主人
 ロナウド、リバウド、ロナウジーニョの「R3」は、個人技では、「黄金のカルテット」の面々にも負けず劣らずですよ。しかも3人全員が得点力を備えている。今大会で衝撃を与える可能性もありますね。

ブラジル代表予想布陣:3−4−1−2

          ●      ●
        リバウド   ロナウド

              ●
          ロナウジーニョ

   ●                    ●
 R・カルロス               カフー

          ●      ●
       エメルソン  G・シルバ

          ●      ●
       エジミウソン  ルッシオ

              ●
           A・ポウガ

              ●
            マルコス

誰がドゥンガの役割を引き受けるのか
らく
 ブラジルは、伝統の4−4−2システムを捨て、3バックにし、3−5−2または3−6−1のシステムになった。これが、今のブラジルにベストフィットであろうと思う。
これまで、全てのW杯で皆勤を果たしているブラジル。他の国は、過去に必ず停滞期を迎えている。イタリアしかりドイツしかり。しかし、このブラジルという国は、停滞期を予選中のわずかな時に迎えただけで、すぐに立て直してきた。まさにサッカー大国の名に恥じない国であることを証明したと言えよう。
 優勝は難しいと言われるが、若いボウガやシルバが大会中にさらなる成長をすれば、
決勝まで行く力は十分にある。

主人
 ブラジルにとってはC組は楽すぎると思いますね。しかも決勝トーナメントに入ってからもベスト16で対戦相手として考えられるのは日本、ベルギー、ロシア。実績や力関係を考えればベスト8までは順当にいくはずです。ブラジル国民も勝って当然と考えていることでしょう。しかし、それが一度思い通りの展開にならないだけで、逆に重圧になることもあります。例えば、かつてのアトランタ五輪の日本戦などそうでしょう。オーバーエイジ枠も使ってアウダイール、ロベルト・カルロス、ジュニーニョ・パウリスタ、リバウド、ロナウド、ベベートなどフル代表の主力を揃えながら、純粋なU−23の日本の前にこけたのだから。

らく
 「マイアミの奇跡」のことだね。


主人
 はい、その通りです。ブラジルは不利な局面になると個人技が突出しているせいか、各人の責任感が強すぎるためか、個人プレーに走る傾向があります。勿論、それで状況が打開できればいいのですが、失敗するとチーム内のムードが極めて悪くなってしまう。しかし、かつてはドゥンガのような強烈なリーダーシップを持つ選手が各選手が個人プレーに走らないよう抑圧していました。98年W杯で体力的には衰えつつあったけれどもドゥンガは、その役割を期待されてレギュラーを獲得しました。
 ところが、今大会はその役目を誰がするのか、ちょっと疑問です。日本のトルシエ監督は特定のキャプテンを決めなかったりと、自分こそがリーダーと思っているふしがありますが、いくら監督がピッチ外から大声で指示を出しても、大歓声に声をかき消されるだろうし、試合で熱くなっている選手側がどこまで素直に聞けるか非常に疑わしい。だからこそピッチ内にいる選手がリーダーシップを取らなければならない。

らく
 今のブラジルなら、誰がドゥンガの役割を引き受けられそう?


主人
 う〜ん、カリスマ性なら、度重なる大きな怪我から復活してきただけに発言に重みのあるロナウドですが、ただポジションが最前線なだけに、チーム全体に指示するということまで頭が回らないはずです。ポジション柄で言えば、ドゥンガと同じボランチのジウベルト・シルバかエメルソンですが、代表に定着してまだ日の浅いジウベルト・シルバにそういうリーダーシップを期待するのは酷ですし、エメルソンはドゥンガとは性格が違うと言いきってしまっている。資質ではファビオ・ロッケンバックがドゥンガに近いかと思いますが、未だ若く、しかも今大会はエントリーされていない。となると、やはりエメルソンが頑張ってリーダーシップを取らないといけないと思うんですね。彼のポジションが最も全体を見渡せるわけですし。
 ブラジルと言うと「R3」やカフー、ロベルト・カルロスのサイドアタックに注目が集まりがちですが、真のキーマンはエメルソンですよ。

「魔術師」ボラ・ミルティノビッチの采配
らく
 さて、中国はどうかな?86年のメキシコ、90年のコスタリカ、そして94年のアメリカと、無名のチームを決勝トーナメントに進出させたことで「魔術師」と言われているボラ・ミルティノビッチが監督ということぐらいしかわからないんだけど。


主人
 支那代表の身体能力は元々ものすごいものがあります。それは陸上、体操、水泳など他競技では実証済みですね。しかし、組織力や試合中に突如として切れる集中力に問題があって、これまでは「眠れる大国」と言われてきました。96年のアジアカップで支那と対戦した日本の加茂監督(当時)が「これに組織力を加えれば、とんでもないチームになる」と言ったぐらいです。その後、ミルティノビッチ監督就任し、更にGK江津、DF范志毅、MF馬明宇といったベテラン勢に、DF孫継海、MF李鉄など若い世代が加わり、組織サッカーを志向するようになった。

支那代表予想布陣:4−4−2

         ●       ●
        楊晨     郭海東

   ●                    ●
  馬明宇                 李明

          ●       ●
        祁宏       李鉄

   ●                    ●
  呉承瑛                孫継海

         ●        ●
       李偉俸      范志毅

              ●
             江津


らく
 それで、ついにW杯出場権を手に入れた、と。でも、日本と韓国がホスト国で予選を免除され、サウジアラビア、イランといったアジアの強豪とも別グループだった。それに2000年のアジアカップがそうだったように、アジア勢はどこも世代交代に苦しんでいる。監督交代が頻繁に起こり、継続的な強化ができていない。その中で数少ない成功組が日本と中国だったんだよね。つまり、中国の本大会の出場は、組み合わせという幸運に恵まれたと思う。

主人
 そうなんです。アジアレベルでならその身体能力に加え組織力で優位に立てたましたが、世界は支那と互角もしくはそれ以上の組織力で以て対戦してくる。それにヨーロッパ、南米の強豪との対戦経験が大きく欠けてる。
 結局、深いディフェンスラインを敷いて守備を固め、ドイツ・ブンデスリーガ2部フランクフルト所属のFW楊晨のスピードを生かしたカウンターに頼るしかないでしょう。実際、ミルティノビッチもそういうリアクション・サッカーで無名チームを決勝トーナメントへ進出させてきた訳ですし。
 まあ地の利という点では、ホスト国の日本、韓国に続いて有利ですね。それがあるからと言って、どこまでアドバンテージになるかはわかりませんが。

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