第11回・平成14年4月1日
Jリーグ開幕後(本当は開幕前にしたかった)2003年・第1ステージ順位予想企画・優勝本命対抗チーム編
ゲスト:らくさん

ゲスト略歴
福岡県出身。仏教からNBA、大分トリニータまでを気軽に語るサイト「寺子屋らく」(旧「らくのSports CAFE」)の管理人。大のプロレスのファンでもあり、レスラーフィギュアの収集をするにまで至っている。
らくの優勝本命対抗チーム予想
☆ジュビロ磐田、ガンバ大阪、横浜Fマリノス
佐伯屋主人・丸木音二の優勝本命対抗チーム予想
☆清水エスパルス

佐伯屋主人
その他、らくさんが対抗に推したのは、ガンバ大阪と横浜Fマリノスですね。ガンバ大阪はどう見ていますか?
らく
ガンバ大阪は、チキ・アルセとガレアーノが入り、ますます強くなった感がある。両者ともに、2002年W杯のブラジル代表監督ルイス・フェリペ監督が以前指揮していたパルメイラスに所属して、戦術に対する忠実さが評価されていた選手だ。西野監督のサッカーではこの点が重要だ。
佐伯屋主人
だから昨季のマルセリーニョ・カリオカは残念でした。キックやドリブルのテクニックはJ最高クラスで、昨季の開幕戦で、アウトサイドキックでシュート回転をかけたクロスを見て、今後の活躍は間違いなしと思いましたけど、守備では戦術理解度が低く、また攻撃でも右サイドに流れてプレーすることが多く、西野監督が思い描くトップ下のイメージ(ピッチの中央からスルーパスでお膳立てをしたり、前線へ飛び出して得点するという)とは違ったことが、マルセリーニョの1シーズンでの放出という結果になってしまったようです。それにトップ下の二川が代表入りしてもおかしくないぐらいに成長したのも大きかった。真面目にプレスディフェンスに参加した上、攻撃でも巧みなボール捌きで前線を操っていたから。
らく
その点、右サイドハーフに入るパラグアイ代表のチキ・アルセは攻守のバランスに優れ、しかも右足の強烈なFKを持っているし、ガレアーノは元センターバック出身のボランチで高い守備力を持ち、なおかつ、精度の高いロングパスを持っている。彼らが、去年とほとんど変わらないメンバーの中に入ってフィットできるかが、G大阪の優勝にとっては鍵になる。
佐伯屋主人
そうですね。僕が注目しているのはチキ・アルセが入ってサイドからの攻撃のバランスが改善されるのか、ということです。左サイドハーフの新井場は一昨季からの好調を持続して、持ち前のパワフルなドリブル突破で日本代表入りを噂されるまでに成長しました。一方、昨季、右サイドハーフを務めることが多かった橋本は、元々がボランチの選手で、サイドで1対1の勝負をする時に、マーカーを抜き去るスピードが無かったから、どうしても左サイドの新井場の突破に頼ることが多かった。
G大阪・予想布陣
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マグロン 吉原
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二川
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新井場 チキ・アルセ
(橋本)
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遠藤 ガレアーノ
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木場 宮本 山口
(実好)
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松代
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らく
だから、今季は攻守にバランスが取れているチキ・アルセを右サイドに入れて、左サイド依存の攻撃のバランスを是正した。
佐伯屋主人
そうです。しかし、チキ・アルセが助っ人外国人としての責任感ゆえに、自からボールを要求し、チームもまた彼にボールを預けすぎるなら、昨季と逆のことが起こってしまって、本末転倒になってしまいます。その点は、二川や遠藤といったパッサーが自覚を持って、パスを左右に振り分けることをしないといけない。
らく
しかし、俺としては、ガレアーノの出来の方がガンバにとっては鍵となると思う。ブラジルでは、鉄壁のボランチと評されていたが、実際日本で試合を見ると、まだ調整不足のようだ。体が大きいから当たりの強さや空中戦での高さはありそうだけど、ボランチだったら運動量や行動範囲の広さも必要になってくる。でも、それは実際に試合で見てみないとわからない。
佐伯屋主人
ガレアーノが運動量の少ないタイプだと、彼とボランチコンビを組む遠藤の守備の負担が大きくなって、前線へ飛び出せなくなり、攻撃に厚みが無くなってしまいますね。
らく
ガンバは、チーム全体で意思統一された真面目なプレスディフェンスに、攻撃ではサイドを突破して、中央で待ち構える「空の王者」マグロンの頭を目掛けてクロスを放り込み、こぼれ球をFWの吉原あるいはトップ下の二川が支配するというチームコンセプトはすでに固まっているから、後は新外国人の出来次第で優勝も可能になるはずだね。
佐伯屋主人
次に横浜Fマリノスですが、このチームは元日本代表の岡田監督を招聘して、J2降格したサンフレッチェ広島からFW久保、昨年の高校ナンバー1ストライカー阿部、FC東京の「プリンス」佐藤由起彦を、アテネ五輪代表候補の石川と結果的にはトレードという形で手に入れ、そして7月にはセリエAのローマから2002年W杯のブラジル代表キャプテン、カフーがやって来るというように、移籍市場では随分と頑張りました。
横浜・予想布陣
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久保 マルキーニョス
(安永)
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遠藤 佐藤由
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奥 那須
(上野)
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ドゥトラ 波戸
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松田 中澤
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榎本哲
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らく
やっぱり、久保と佐藤由の二人が、マリノスの今後を左右するだろうね。久保は、ボールを受けてポスト役も、ボールを自らドリブルで切り込み役も、どちらもできる万能プレイヤーだ。高原にプレースタイルがよく似ていて、その素質はJリーグの各チームの監督が高く評価しているけれども、高原に比べて目立った活躍はなかった。でもマリノスでは、広島よりはアシストが増えるはずだから、才能が花開く可能性がある。
その久保にアシストを数多く供給できると考えられるのが、佐藤由だ。彼は右サイドからの精度の高いアーリークロスに、抜群の跳躍力を持つ久保が合わせるというパターンの他に、センタリングを久保が競って落として他の選手に決めさせる、昨季のマリノスにはなかった高さという武器ができた。
佐伯屋主人
ただし、味方陣地深くで守ってからカウンターというサッカーをしていた広島では、久保は攻める時には前線の広大なスペースを使わせてもらっていたけど、横浜は敵陣地でボールを支配して自ら攻めるチームだから、そういうチーム・コンセプトの違いにいかに馴れるかが久保の活躍を左右しますね。
らく
確かに。マリノスでは久保の背後には当然厳しいマークが付くだろうから。日本屈指のストライカーの加入も、そういう点で不確定要素は大きいから、優勝の対抗とした。
らく
それと、もう一つ気になるのが、本来はトップ下の奥のボランチ起用なんだが。
佐伯屋主人
岡田監督もそれは気にしているようです。でも、奥自身の能力は問題無いと思います。磐田時代にボランチをしていたこともありますから。ただ、奥の本領はゴールに近い位置でのドリブル突破やミドルシュートだから、中盤の底から前線へ飛び出していく、例えば日本代表の稲本やドイツ代表のバラックのような、攻撃的なボランチになるはずです。むしろ問題としては、ダブルボランチを組む相手を誰にするかということです。
らく
つまり、奥とボランチを組む相手には、奥が攻撃参加した後ろのスペースを埋めるような守備的な動きが求められるということだな。しかし、昨季レギュラーだった上野や遠藤もまた、奥と同様、守備よりは攻撃参加を持ち味にしているボランチだし、トルシエ・ジャパンの戸田のような守備に専念できる選手がほしいところだけど。
佐伯屋主人
その通りです。ナビスコカップで元々センターバックの那須を起用していたのは、守備面での役割を期待してのことでしょう。
らく
ただ、最終的には奥のボランチ起用はあまり長く続かないんじゃないかな。後々カフーが加入すると、今の横浜の4−4−2システムに当てはめれば、波戸に代わって右サイドバックに入るだろうから、ボランチの選手にはカフーが攻撃参加した後ろのスペースのカバーも求められるはず。そうなると、奥の攻撃面での能力が発揮しにくくなるから、カフー加入後には、奥はおそらく左サイドハーフか、久保の周囲を自由に動く下がり目のFWとして起用されることになると思う。
久保にせよ、奥にせよ、那須にせよ、新しい役割に馴染めるかが横浜の躍進の鍵になってくるわけだ。そのまま波戸の位置に入るだろうカフーの加入によって、チームのバランスをどうするのかというのも見物だ。

らく
ところで一方、主人は清水エスパルスを本命の対抗馬に挙げているけど、どういう訳かな?
佐伯屋主人
無難な予想をしてくれているので(笑)、あえて奇をてらうことにしました。
らく
森岡、市川、伊東、三都主ら日本代表クラスを揃えているし、アン・ジョンファン、トゥットといった外国人選手のクオリティも高いが、如何せん選手層が薄すぎると思うが。
佐伯屋主人
だから、彼ら主力が常時出場できればという条件付きです。このチームに期待しているのは、大木監督が4−2−3−1システムを導入したことで、三都主や市川といったサイドアタッカーがより攻撃しやすくなったことです。昨季のペリマン、ゼムノビッチ監督と続いてきた3−5−2だと、中盤で数的優位を作りやすい反面、「5」の両サイドの選手はどうしても後ろのスペースを気にしながら攻撃しないといけなかった。しかし、4−2−3−1になって、「3」の左サイドで起用されるであろう三都主の場合は、後方を左サイドバックに固めてもらうことで、より攻撃に専念できます。それに市川も元々は右サイドバックだし、ポジションの性格上、守備重視でプレーしないといけないけれど、攻撃時には豪快なオーバーラップが見られるはずです。
清水・予想布陣
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トゥット
(北嶋)
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三都主 アン・ジョンファン 平松
(澤登)
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鶴見 伊東
(吉田)
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村松 市川
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ロペス 森岡
(斎藤)
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羽田
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らく
しかし、ボランチの戸田のトッテナム移籍の穴がある。戸田を失ったことは中盤のディフェンス力だけでなく、誰が相手だろうと臆せずにハードタックルをかますという精神面でも失ったものは大きい。
佐伯屋主人
それは認めます。しかし戸田の後継者は、大木監督がJ2のヴァンフォーレ甲府から連れてきた鶴見で埋まりそう。「小野・稲本世代」の一人としてアジアユースに出場した、戸田と同様センターバック出身の大型ボランチです。今季の清水はサイドアタックに重きを置く分、中盤の底の選手にクリエティブなパスは求めていないのだから、前任者と同様に、中盤の壊し屋、相手の指令塔を抑えるマーカーとして機能すれば面白い。
もし鶴見がチームに馴染めなかったとしても、かつてジーコが才能を認めたベテランの吉田や、若手の旗手として期待される杉山も、戸田や鶴見とはタイプは違いますが、控えていて今季はそれほど選手層は薄くないと思います。
体調が万全であればトゥットという個人技で局面を打開できる切り札がいますし、左右の攻撃のバランスもいい。新システムが馴染めば一躍優勝候補に踊り出てもおかしくないでしょう。
(ダークホースおよび贔屓のチーム編に続く)

