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あの電化製品がない日々<発覚編> もう9月も半ばに入り、秋の気配を感じつつもまだまだ残暑に悩まされていたあの日、突然事件は起こった。 その日、案内人は母と共にスーパーに買い物に行っていた。 セールの日だったので車に多くの(といってもたかが知れているが)食品を積んで帰ってきた。 買ってきた生鮮食品を冷蔵庫に入れる。この時は何も気が付かなかった。あとになって思えばこの時異常に気が付いていれば良かったのだが。 事件が発覚したのはその日の夕食の支度をはじめた時である。 何気なく冷凍庫を開けると謎の液体が垂れ落ちてくる。薄い緑白色。 見ると、冷凍庫のポケット部分のアイスクリーム(宇治金時)が半分以下の長さになっている。袋からにじみ出たアイス(であった液体)がポケットにこぼれ出てき、それが冷凍庫を開けた瞬間落ちてきた、そういうことである。 冷凍庫が壊れた。 と、言うことは冷蔵庫は・・・? あわてて冷蔵庫を開けてみると気のせいか温度が低いような気がする。 間違いない。冷蔵庫全体が壊れたのだ。 焦りまくる案内人にたいして母はのんきなものである。 「冷凍庫の中のものだけでも近所に預けた方が」 「そんなにあせらなくってもいいじゃないの。別に何が入ってるわけでも無し」 「アイスが入ってるじゃないかぁあ!」 「なんでそんなにあせってるの?」 あせらない方がおかしい。そう思うのは案内人だけなのであろうか。 「明日朝一番に電器屋に行かなきゃ」 「明日は体操の日だから・・・」←母は健康体操に毎週通っている 「そんな場合かっ!」 すっかり漫才の様相を期している。 とりあえず、その日はすでに夜遅かったこともあり、冷蔵庫の中のものでも特にやばそうな食肉等は冷凍庫(すでに冷蔵庫並の温度)にたたき込み、寝た。 以下次号!(笑) 目次に戻る あの電化製品がない日々<対策編> 朝が来た。 多少びくびくしながら冷蔵庫を開ける。すでに冷蔵部分はただのクーラーボックス。 昨晩冷凍庫の中に入れてあった牛乳を飲む。別に酸っぱくはない。 おそらく冷凍庫内の温度保持を担ってくれていたのはボックスのアイスであろう。おそるおそる開けてみたがそれほどでろでろではなかった。すごいぞアイスクリーム。 ここの時点に来てようやく危機感が出てきたのか母も体操を休んで電器屋に行くことに。 近所の方々に食肉や牛乳、アイスを預かってもらい、代わりにあちこちで氷や保冷剤を借り受け、冷凍庫に押し込む。 これらの応急処置を施した上で即日配達の電器屋へ。 電器屋に行くと数々の型の冷蔵庫が並んでいる。 CMやらなんやらで宣伝している型も見受けられる。さて、どれにしようか。 しかし、ここで一つ重大な問題が発生。 わが家のキッチンスペースは一種異様なほどに狭く、冷蔵庫のはいる空間は奥行き幅共に60cmほどしかない。が、今現在一般に出回っている冷蔵庫の型はほとんどが奥行き70cm以上なのだ。 たくさん展示してある冷蔵庫だが、わが家にはいる、という条件を設けただけで2,3に減ってしまう。さすがに2ドアはこころもとない。冷凍庫、冷蔵庫、野菜室の3ドア型が望ましい。 値段、容量共に検討した結果、一つの冷蔵庫が選ばれた。 早速店員のお兄ちゃんに配達を頼む。が、帰ってきた言葉は・・・。 「すいません、この型今在庫が無くって配達に1週間ほどかかるんですけど」 冗談ではない。1週間もかかっては冷蔵庫の中のものはすべて腐ってしまう。 涙をのんで別の店へ。が、即日配達の店でわが家が会員カードを所有している店はその一軒のみ。つまり、即日配達はこの時点で絶望的になったというわけだ。 そしてもう一軒の別の店へ。 幸い先ほどと同じ型のものを発見。 店員のおじさんに配達までどれくらいかかるか尋ねてみる。 「普通だったら翌日なんですが、実は祝日で配送センターの方が休みなんですよ。だから2日後に・・・」 運が悪すぎるぞ案内人! この店員のおじさんは親切にも「隣の電器屋は即日配達ですよ」と教えてくれたが、そこは先ほど出てきたところである。 また流浪が始まった。 三軒目の電器屋。 ここで先ほどの型の冷蔵庫とまた違う冷蔵庫を発見。安い。大きさもちょうど良い。で、配達は・・・? 「明日になります」 ビンゴ! ついに冷蔵庫の購入が出来た。しかし明日まで冷蔵庫のない生活は続く。 次回最終回っ! 目次に戻る あの電化製品がない日々<完結編> その日の夕食は豪華であった。 冷凍してあったカツ、冷蔵してあった肉を消費するためである。 牛乳は開封していないものは隣家に預け、開封したものはすでに飲み干している。 しかし、明日のいつ冷蔵庫が来るかは分からない。それまで中の食品はもつのだろうか。妙に静かな冷蔵庫が寂しい。 翌日。ついに最後の朝がやってきた。 やはり先日と同じようにご近所の皆様に氷をいただいて保冷剤にする。 ウン十年前の冷蔵庫の原理はそういえばこれだったと思い出す。そうか、原点に戻っただけなのだ。 新しい冷蔵庫が来るのはどうも3時頃らしい。母はその時間に会わせて冷蔵庫の掃除を始めた。長い間世話になったからと。 ちなみにこの壊れた冷蔵庫、なんと16年間わが家の一員として活躍していた。そりゃ壊れもするだろうという長さである。 ついに新しい冷蔵庫がわが家に到着。今までの冷蔵庫より若干横幅が大きい。 安かっただけはあって少々難有りの品だがまあそれも良し。 説明書きには食品を入れるのは電源を入れてから3時間後、と書いてあるがそこまで待ちきれず電源を入れて20分後には食品を詰め始める。 ご近所の方に預かっていただいていたアイス等も回収。持つべきものは親切なご近所さんだ。 数分後、すべての食品を納入完了。妙にスカスカだがそれはいつものことなので気にしない。 冷蔵庫のブーン、という機械音がこれほど頼もしいと思えたこともない。 今回の事件で誇るべきは夏の終わり(または秋のはじめ)の悪条件であったにもかかわらずほとんどの食品を廃棄せずに済ませたことだ(二日もほったらかしだったのに)。 捨てた食品は例の抹茶小豆アイス2本、微量に残っていた冷凍ネギ、父のミスにより冷蔵庫に放置されていた栗ご飯の残り、これぐらいである。 しかし、事件はいつ何時起こるか分からない。 今回のことを教訓として案内人は「冷蔵庫は10年たったら問答無用で買い換える」事を決心するのであった。 もっとも、10年後にそれを覚えていれば、の話であるが・・・・・・。 戯れ言帳・目次に戻る |