柏葉 幸子


日本が舞台にも関わらず日本を余り感じさせない微妙に不思議なファンタジーです。

大おばさんの不思議なレシピ
隠れ家は空の上
霧の向こうの不思議な街
地下室からの不思議な旅
飛び丸竜の案内人
りんご畑の特別列車


「大おばさんの不思議なレシピ」

顔も見たことのない大おばさんの遺品。
一つ一つに楽しい名前が載っている面白いレシピ。
それでものを作ったら・・・?

レシピから異世界というちょっと予想しない展開の話。
しかし何よりこの話で際だつのは主人公のお節介ぶりでしょうか。
ちなみに私子の本を読んではじめて「眠れる森の美女」の名前がオーロラ姫であることを知りました。・・・変?


「隠れ家は空の上」

ひょんな事から一緒に暮らす頃になった小さな姿の魔女。
鼻が曲がりそうに臭い上に記憶喪失で自分の名前が分からない。
しかもこの街ではどうも座敷わらしや幽霊などの異世界の住人が誘拐される事件が起きているようで・・・。

想像上の妖精やら何やらがてんこもり。
しかし……それを誘拐というのがなんとも……(^^;)。
主人公のクラスメイトのイガグリがなかなかいい味だしています。


「霧の向こうの不思議な街」

毎年夏休みにはおばあちゃんの家に遊びに行くのだけれど今年はお父さんの強い薦めがあって行ったこともない銀山村と言うところへ。
山の中で霧とピエロのかさに導かれて付いたのは煉瓦づくりの商店街・・・。

原題「きちがい通りのリナ」。
柏葉氏の作品の中でも最も好きな話のひとつです。
数日事に各店にアルバイトをしに行くところとかきちがい通りの住人とか和製ファンタジーとは思えない作り。
特に好きな話は瀬戸物屋さんでのアルバイトの話「王子様というものは」でしょうか。
わがまま王子をやりこめるリナが爽快。
心残りといえばお菓子屋さん「トケの店」でのアルバイトの話がなかったこと。・・・ああ見たかった。


「地下室からの不思議な旅」

アカネの親類の変わり者のチィおばさんの家にある地下室はお隣の世界とつながっているらしい。
つながった部分の土地を借りる契約を結ぶために向かった先は…。

「ぼーっとしているんだかいないんだかわからない」ため前編とおしてアカネではなくカスミと呼ばれている主人公(笑)。
魔法使いやこびとが暮らす世界とつながっている地下室の土地を「借りて」地下室としていたというのだからすごい。
序盤のケイトウの街の話が好き。
それにしても私小学校で「ベン図」なる物を習った覚えがないんですが・・・。


「飛び丸竜の案内人」

季節はずれのマルメロを食べたために竜の案内人として竜の世界の失われた秋の太陽を探しに行くことに。

文句無しに楽しんで読める作品。
登場人物のほとんどすべてがやたらと食い意地が張っているのがまた良い(笑)。
竜の世界は月がホットケーキ、星が金平糖でできていて空の天井からつり下げているそうな。
それにしてもどうして太陽だけが使い捨てじゃないのかしら(しかし四季で太陽が分かれていてそれぞれの季節の果物のシロップで煮詰めて保存というのも笑える)。
これを読むとマルメロを食べてみたくてしょうがなくなります(しかし未だに見たことも食べたこともない)。


「りんご畑の特別列車」

いつもの電車の帰り道、ふと気が付くと車内の人が自分以外すべてりんごの皮をむいていた・・・。

これ、想像するとちょっとこわいですね。
車内全員一目散にりんごの皮を・・・。
これは全くの序盤なんですがこの話は後の方が当然面白い。
遠い昔に魔女によって強大な魔力はすべて奪われてしまった世界。
その国の王子は成人の儀式として魔女からひとつ魔力を奪い返してこなければいけない。
まあこの王子がまたわがままなガキで。
自称引っ込み思案の主人公のあばれっぷりもステキです。


その他の作品
「天井裏の不思議な友達」
「不思議なおばあちゃんがいっぱい」
 他



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