

まず私なりのBarとは
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前書
まず私、ボストンシェーカーなりのBARについての考えを述べさせてもらう。
私なりに解釈させて貰うと、酒ありき店ありきはもちろんの事だが、まず人間ありき
なのである。 高価なシャンパン 、年代物ブランディ、高級ワイン、等
いいお酒が豊富に揃っているそれらはもちろんいいBARには大切な条件だし
、必要な要素だ。経営者にとっても悦びの壱つでもある
ていねいに造られたエッジの利いたカクテル、大人のサービスを心得ている
バーテンダーが心地よく迎えてくれて、それとなく流れている音楽も心地よく
よく手入れされ磨かれたカウンターでの適度な緊張と和みのバイオリズム。
所帯くさいものは一切なく、非日常の中に日常への何かのヒントを潜ませている
る空間。 良いBAR空間はどれをとっても必要不可欠だ。
しかし、どれをとっても何をさしひいてもまず人間ありきなのである。
おのおのの人間の 心 ・感情・ それらがBAR空間でのドラマ、ほとんどだと
考えていい。
世間に出てまだ間もなく何もかもが未熟で色々な事がおぼつかない新米の頃、
めんどう見のいい先輩に連れられハッパをかけられながらおごってもらった
ワイルドなバーボンでの日々。
困難な商談をまとめ、なんとかいい方向に漕ぎつけ 先の見通しが立ち
ホッ
とくつろいだ気分で自分自身へのねぎらいに傾ける円熟された大人の
ブランディのひととき。
ウマが合った仲間達と共通の価値観を見い出し我を忘れる程笑いころげ、
何がおかしいかもわからなくなり、決して自分ひとりじゃないんだと分かちあった
愉快なワインの夜。
又、いい時ばかりでもない。
何一つ思い通りにならぬまま、失意に打ちひしがれ苦い酒が一層苦く感じるくせ
に、どうしょうもなく気がつくとそれにすがりついてしまう苦い夜のモルトウィスキー。
人生の岐路に、自分の意思とは関係なく、気がつくと思いもがけず
立たされてしまい 悩むな・迷うなと 自分自身にいくら言い聞かせても
心の中の振り子が大きく振れてしまい、結局たどりついてしまうドライジン。
空気の如くに捉えていたかけがえのない愛を、予期なく突然失ってしまい、
自分一人ではその重圧に耐え切れず、酔った頭でどうなるものでもないのは
判っていても、いつの間にか浸ってしまっていた、きつく鋭いドライマティーニ。
やはり、BAR空間にはそれぞれの個人のドラマが大きな要因を占める。
私は非力ながら、その人となり その場面、劇中で、瞬時に黒子、カメレオンに
ならねばならない。 まるで 町医者か 易者、役者か ペテン師の様でもある。
それが又、楽しくも有りこの仕事をあきもせず続けられる要因かもしれない。
町の名医を目指すボストンシェーカー
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