雨のきらいな かさのおはなし
しょうてんがいのなかに、くつやさんがありました。
そのくつやさんの店のおくにピンク色の小さなかさがありました。
お店にはくつのほかにかさも売っているのです。くつやさんの前に
はピンク色のチューリップがたくさんさいていました。
ピンク色のかさはチューリップをながめながら思いました。
(チューリップさんたちはいいなあ。お日さまの光を受けてあんな
にかがやいているんだもの。はやくだれかわたしをお店から外に出してくれないかな。)
ある日、小さな女の子とお母さんがくつやさんに入ってきました。
「お母さん、このピンク色のかさ、かわいいね。」
ピンク色のかさはその女の子のかさになりました。ピンク色のかさは、やっとお店の外に出ることができました。
つぎの日の朝、ピンク色のかさは、ピチャン、ピチャンという音で目をさましました。雨だれの音です。
「うわーい。雨だ。」
女の子の声がしました。女の子も雨の音に気がついて起きたようです。女の子は、いそいできがえをしたのか、
すぐにげんかんに走ってきたかと思うと、ピンク色のかさをもって外にとび出しました。
女の子はかさをぽんと開きました。
ラララン、ラン。
ラララン、ラン。
女の子はおうちの前で歩き回ったり、かさをくるくる回してみたりし
て、とても楽しそうです。
でも、ピンク色のかさはすぐにつめたい雨でびしょぬれになりまし
た。
女の子がおうちの中に入ったあと、ピンク色のかさは、かさ立て
の中でしょんぼりしていました。
(わたしが外に出られるのは雨がふっているときだけなんだ。お店の前のチューリップさんたちのようにお日さま
には会えないんだわ。)
びしょぬれで、さむくて、こんなことだったらお店にいた時のほうがずっとよかったとピンク色のかさは思いまし
た。
(雨なんてだいきらい。)
そのつぎの日はとてもいいお天気でした。
外にはお日さまの光がふりそそいでいるのがピンク色のかさにも見えました。
(あんなにお日さまがかがやいているのにわたしはお日さまには会えない。そして、きょうもぬれたまま。)
ピンク色のかさがそう思った時です。女の子がげんかんに走ってきて、かさを手にとりました。
(きょうはいいお天気なのにどうしたのかな。)
ピンク色のかさは思いました。
女の子はかさをもって、おにわに出ました。
「かささん、ありがとう。」
女の子はそう言うと、ピンク色かさをぽんと開いて、みどりのしばふの上にそっとおきました。
お日さまの光がピンク色のかさにきらきらとふりそそいできました。
ピンク色のかさはお日さまに会えたのです。きのうの雨でぬれた
からだがどんどんかわいていきます。
そして、チューリップと同じようにかがやきはじめました。
ピンク色のかさはうれしさでいっぱいでした。
ピンク色のかさはこれからもつめたい雨から女の子を守ってあ
げようと思ったのでした。
おしまい