りてん堂

りてん堂コラムcolumn

りてん堂の印刷機「チャンドラー」

りてん堂の活版印刷機チャンドラー。この機械を譲り受けたのが2012年の4月16日です。この頃は本当にちゃんと動くか分からない状態で、運搬して、電気工事してようやく動いてくれました。今考えると“よくやったなぁ…”と思ってしまいます。
さて、この印刷機、かなり古いモノで戦後間もないころのものだと聞いていますが詳細はわかりません。作られたのは中馬鐵工所。当時は活版印刷機のトップメーカーの一つでした。モデルはアメリカの「Chandler and Price」社で製造されていたものと同タイプです。なぜ中馬鐵工所がこのタイプの印刷機を作ったのか、どれほど生産されていたのかは資料が見つからず分かっていません。日本製のチャンドラーが動いているのはもしかしたらうちだけ?……と思ってしまうほどレアな印刷機かもしれません。ぜひ一度会いに来てください。
紙は手差しで、印圧の調整も難しいので、なかなかうまくいかないこともありますが、こんな未熟な自分によく付き合ってくれている、温かいおじいさんのような存在です。
これからも一緒に印刷を続けてほしいと切に願っています。

通りに面している大きな窓からも見える「チャンドラー」。りてん堂の看板“機”です。

日本絵画の間

日本絵画に関しては、安土桃山~江戸時代のものを好んでよく観にいきます。貴族だけのものであった文化が、武士から町人、庶民へと広がり、いろんな人の感性が入り交じり表現が豊かになっていった時代です。
このころの絵画には、日本独特の構図の美しさがあります。絵師が一つの物を表現するときに、様々なモチーフを一度自分の世界に落とし込み、限られた空間の中に再構成していく、そうして描かれた絵は、普段目にする自然の風景でさえも、一つの物語のように表現されています。
その構成の中で最も重要なところは、メインで描かれている大きく曲がりくねった川の流れや、画面いっぱいにはり出した樹木の枝のしなりなどとは対称的につくられた、何も描かれていない部分です。この「間」があるからこそ、メインのモチーフが強調され、また、見る人が「間」感じとることで、その絵の中にあるストーリーを読み取ることができるのです。


日本人にとって「間」とは、コミュニケーションをとる上でとても重要な部分です。人に何かを伝えるとき、表現する部分と「間」を読み取ることで本質を伝えることができるのではないかと思います。
この時代によく描かれていた襖絵や屏風絵は、空間を仕切る壁であるとともに、その部屋の世界を作り出すという役割も担っていいました。ある部屋は静寂であったり、またある部屋は家の主の威厳であったのではないかと思うのです。そういった空間を創りだすには、その何も描かれていない空気の部分がとても重要な役割を果たしていたのではないかと思います。

2013年 特別展覧会『狩野山楽・山雪』京都国立博物館

白ヲ読ム、

白ヲ読ム、(しろをよむてん)
─活字を読む、眺める、感じる─


活版印刷を知ってる人もそうでない人も
文字が好きな人
本が好きな人
紙モノ雑貨が好きな人
タイポグラフィーに興味のある人
などなど
活版印刷の新しい可能性を追求しつつより多くの方に読み、眺めて、感じていただけるような展示を行いました。


2016年4月5日(火)~10日(日)
12時~19時(最終日は17時まで)
ギャラリーh2O

明ヲ読ム、

明ヲ読ム、(あかりをよむてん)


今回は「明かり」をテーマに前回とは違ったコンセプトで展示。
活版印刷を使って作り出せる作品の可能性を探るため、様々なモチーフの作品を作ってみました。
いくつもの紙を重ね合わせて作った大判の作品や行燈、来場者の皆さんでつくる「言葉の星座」など、バラエティ豊かな作品を作りました。


2017年5月9日(火)~14日(日)
12時~19時(最終日は17時まで)
ギャラリーh2O

活版印刷の年賀状

2012年の年賀状。

この年賀状がきっかけで、りてん堂ができました。

私が構成・デザインを考え、妻に詩を書いてもらい、
文選・組版は山田信雄さん、印刷は加藤博さん。(お二人とも加藤第一印刷〈当時〉)
私の中では、それぞれのパーツがカチッと音を立てて組み合わさった感じがしました。何か特別に優れているとかそういうのではなく、ハガキの紙面にキレイにおさまった心地よさを感じる作品です。

これができた時は、半年も経たないうちに会社を辞め、独立するなんて考えもしていませんでした。しかし、この年賀状がその年の出来事を象徴しているようで、とても不思議な気持ちにもなります。