ある青年が雪の降る町を走る、息を切らせながらも走り続ける。
そして、その青年の思考はこんな感じ。
(やあ、みんなの心の兄弟の渡口 秀信お兄さんだよ。)
歯が光るというオプション付きの笑顔を見せる。思考の中で。
(さて、何故お兄さんが走っているかと言うと、実は今、お国の犬に追われいるのさ。
え?何故追われているかって?さあ?何故追われているんだろうね?
まあ、追われ始めたのはもう結構前の話なんだけどね。
そう、それは今日の様な雪の降っている日…。
そりゃ今日だから当たり前なんだけど。)
そのまま回送に強制移行。
あるアパートの二階の朝六時ごろ。
時計の起床を知らせる音。
それは彼の起きる時間である。
「なにっ!?敵襲か!?」
いつも手元の近くにガスガンを手に取り、いつも寝ているベットを立てて姿勢を低くして回りを警戒する。
冒頭で述べてはいないが、ここは日本である。そんな事はまず無い。というか一民間人にそんな事絶対に無い。
ともかく、これが毎回の彼の起床である。
「騙しやがったな!?この糞目覚ましがぁぁぁ!!」
ガスガンで撃ちまくり、いつの間にか手元にあるサバイバルナイフを投げて串刺し。
これも毎回の事。
勘違いと分かると目覚ましに理不尽な八つ当たりと同時に目覚ましの絶命。
ちなみに壁には串刺し目覚ましのオブジェが大量にある。
「くっ!糞目覚ましの誤作動の所為でまたナイフと無駄弾撃ってしまったではないか!」
彼には学習機能は無いようだ。
というか彼にとって目覚ましとは警報装置か何かの一種の様だ。
上記に書いてあるから分かると思うが、使ったナイフと目覚ましはそのままだ。
つまり、弾とナイフと目覚ましを毎回買っている。しかも、こんな状態で経済状況が安定しているのが怖い所である。
「こんな事で時間を食っている場合ではない!装備の装着と栄養摂取せねば!」
ようは身支度と食事である。
ここで彼についての説明。
彼の名前は渡口 秀信(とぐち ひでのぶ)、一人暮らしの高校生。
一応、親からの仕送りはあるが、学費と必要最低限の生活費が送られて来ているだけある。
アルバイトもしているにはしているが、そこそこにやっているだけである。
だが、毎回弾とナイフと目覚まし買って、よく安定した経済状況である。
ガスガンとナイフについては本人はただ何と無く持っている程度だ。
ちなみにアパートの住人からは微妙に社会的抹殺を受けている。あくまで微妙に。
「よし、準備完了」
そんなうちに支度が完了。
なんだかんだで起床からここまでで、約一時間浪費している。
「それじゃ、登校開始しますか」
彼は勢いよく扉を開けて外に出て鍵を閉める。
そして無意味に廊下を走って助走をつけて飛び降りる、鳳凰天舞脚しながら。
見事に通行人Aと衝突、鳳凰天舞脚を喰らう通行人A、それがまた綺麗に決まる。
秀信の方はまるで良い汗を掻いたと言わんばかりだが、通行人は瀕死。
「さて、行くか」
秀信は自分が倒した通行人の事など無視して登校を続行。
「またかぁぁぁ!!」
勢いよく飛び起きる通行人。
「なんだよ橋沢、五月蝿いぞ」
秀信は面倒くさそう通行人もとい橋沢に答える。
「てめぇぇぇ!!分かってるならやるなぁぁぁ!!」
今、激怒真っ最中の彼は橋沢 翔輝(はしざわ しょうき)。
秀信のクラスメートで、仕方なしに秀信と友達やっている人。
いつも秀信ともう一人の友達に振り回される大変な人でもある。
「何を言う!?葛島はカウンターに神龍拳を返して来たぞ」
「てめぇらと一緒にするな!!」
「当たり前だ!!俺らニュータイプとお前らオールドタイプと一緒にするな!!」
「お前らいつから宇宙世紀の人間になった!!」
と橋沢が言い終わると同時に橋沢が羽交い絞めにされた。
「て、てめぇ葛島か!?何しやがる!?」
「さあ、今の内だ渡口」
彼の名前は葛島 和志(くずじま かずし)。
秀信の友達で、秀信とは違ってまともだが、秀信と一緒になってふざけたりする人(秀信は結構マジだけど)。
言い方を替えると、ノリの良い人。
位置的に秀信の相方。
「さよならだ、橋沢」
またもや、いつの間にかサバイバルナイフを手に持って羽交い絞めされている橋沢に向かって構えている。
当の橋沢はナイフを向けられたと同時に顔を俯けて体が震えていた。
「お前ら…いい加減にしろ…」
「や、やだなぁ、ちょっとしたいつもの悪ふざけじゃないか」
葛島は橋沢から離れて慌てて弁解する。
橋沢がマジギレモードに突入したからである。
「そうだぞ、好きな子に意地悪するようなものじゃないか」
そして、弁解になっていない弁解をする秀信。
「余計嫌じゃ!!ボケ!!」
その一言と同時に二人にとっての恐怖の宴が始まった。
二十分後……。
「てめぇらの所為で遅刻決定じゃねぇか!!」
「俺らの所為なのか?俺らの…」
少し涙を流しながらの葛島の訴え。
「そうだぞ!!俺なんか時の涙が見えたぞ!!」
半ば逆ギレに近い怒りを浮かべながらの秀信の発言。
「俺は戦乙女を見たような気がする…」
まだ涙を流しながら葛島が続けて言う。
「そんな事関係ない!!ともかく、お前らの所為だ!!」
橋沢は二人に向かって指を差し、ちょっと理不尽な怒りの声を上げる。
「というか、このままだと遅刻だぁぁぁ!!」
「馬鹿者!!うろたえるな!!アレを出すからには間に合うに決まっているだろ!!」
どこその軍人の様な喋りで、意味不明な程に強気な秀信。
そして、アレという言葉に敏感に反応する葛島。
「た、大佐、ま、まさかアレが完成していたんですか?」
「そうだ少佐、我々の正義の結晶がついに完成したのだ」
「す、素晴らしいです大佐!!流石です!!」
「はいはい、それは結構な事で良いんだが、ところでアレって何だ?」
橋沢は自分を置いて二人の世界に入っている秀信と葛島に呆れながら話の間に無理やり入る。
遅刻決定なので逆に一応話は聞いてやるといった感じである。
「そうだな、こっちに来い」
そう言って二人を先導する秀信。
秀信の住んでいるアパートの敷地に入った。
そのままアパートの裏側に歩いていった。
そしてそこには小さい物置小屋がポツンとあった。
「ココだ」
橋沢と葛島のこの物置小屋を見た感想は。
「なんか、見た目がレトロチックなハイテク機器がありそうだな…」
「コロッケ中毒のロボットとの関係品がありそうだな…」
という感想。
どうやら葛島も物置小屋は見た事が無い様だ。
「よし、ご対面と行こうか」
そんな二人を置いて、秀信はどんどん話を進めている。
そしてそのまま物置小屋の戸を開けて中に入った。
そこには大体人間と同じサイズの黒いロボットらしきものが寝かされてあった。
「見よ!!これぞコロ助Mk−U六頭身タイプ、ティターンズカラーだ!!」
二人の方を向いて自慢げに言う秀信。
「「おお!!(いろんな意味で)」」
それを見て無駄に驚く二人。
「しかし…、試作段階のため使える機能まだ少ないのだが、君たちには特別にその機能を見せよう!!」
コロ助Mk−Uの向く秀信、そして。
「コイツ、動く!?(アムロ似で)」
コロ助Mk−Uが目を光らせ立ち上がる。
それと同時に歓声を上げるのが一名、こけるのが一名。
だが、まだ続くコロ助Mk−Uの機能。
ここからは連続してコロ助Mk−Uの台詞が続きます。
「コロ助とは違うナリよ!!コロ助とは!!(コロ助ボイス)」
「見せてもらうナリ!!日本政府の力とやらを!!(コロ助ボイス)」
「コロ助なら人間じゃないナリ!!我輩だって!!(コロ助ボイス)」
「葛島!!橋沢!!ヤツにジェットストリームアタックをかけるナリ!!(コロ助ボイス)」
「我輩の歌を聞くナリ!!(コロ助ボイス)」
その台詞と同時に歌いだすコロ助Mk−U。
「しまった!!故障か!?」
「何だ?歌うと故障なのか?」
冗談半分で聞く橋沢。
「そうだ!!故障してんだかしてないんだか分かりにくいのは自覚しているが、そうだ!!故障するとこうなる!!」
「それじゃ作るなよ!!」
「だが、それじゃ「グオォォォォォ!!(コロ助ボイス)」……」
突然、コロ助Mk−Uが某初号機の暴走の如く叫びだした。
「く、暴走か!!それならば!!」
そう言って橋沢をコロ助Mk−Uの前に押し出す秀信と葛島。
橋沢が姿勢を崩しているうちに小屋から逃げ出すコンビネーションプレイ。
「あとは頼んだぞ!!橋沢!!」
「大丈夫!!お前なら出来る!!」
二人とも爽やかにセリフを吐いて扉を勢い良く閉める。
「て、おい!!閉め「グオォォォォォ!!」……」
コロ助Mk−Uが橋沢に襲い掛かって来た。
「邪魔なんじゃ!!ボケ!!」
カウンター気味にパンチをかまし、コロ助Mk−Uを吹き飛ばす橋沢。
「グオォォォォォ!!」
だが、再び立ち上がり、また橋沢に急接近し襲い掛かる。
「ええい!!これで終わりだ!!」
右手を大きく振りかぶった。
「衝撃のファーストブリッドォォ!!」
とてつもない衝撃に飛ばされてコロ助Mk−Uは物置小屋の壁をぶち抜いて、隣の家の塀にぶつかって止まった。
「何しとんじゃぁぁ!!おのれはぁぁ!!」
いつの間にかすぐ近くに居る秀信&葛島。
そしてその片割れの秀信が叫んでいる。
「ワシの汗水垂れ流さないで丹精込めて一週間で作ったコロ助Mk−Uをぉぉぉ!!」
「こんな狂気の作品を一週間で作んな!!というか俺が死にそうだったわ!!」
すかさず跳ぶ葛島の鉄拳。
そして収集が着かなくなるので一気に飛ぶ…。
結局そこには、角付き赤バイクがあった。
「おお!!素晴らしい出来です!!大佐!!」
「ふっ、そうだろ、少佐」
橋沢は呆れ気味に聞いた。
「……シャア専用バイク?」
「橋沢、少し違う、これはバイクではない、自転車だ」
「はあ!?これが自転車!?」
当たり前だがとてつもなく驚く橋沢。
「そうだ、自転車だ、ちゃんと足漕ぎペダルもあるだろ、だいたい免許も無しにバイクを作ってどうする」
さも当然だとばかりに言う秀信。
「た、確かに免許も無しにバイクを作っても仕方ないが…、これ、以上にゴツくないか?」
珍しくまともな事を言っていると内心驚きながら言う。
自転車については、橋沢の指摘どうり、バイクに見えるほど以上にゴツい。
某ライダーバイクに某シャア専用を足して2で割った様な外見の上に自転車の頭の部分には角が付いていて全体は赤い色をしている。
チェーンの部分も見事に隠れてバイクにとても見える、ペダル以外は…。
「ちなみにこれが武装一覧表だ」
秀信はそう言って紙を差し出す。
「って、おい!!武装付きかい!?」
などと、言いながら紙を受け取っている橋沢。
紙にはこう書いてあった。
○固定装備
ヒートホーン・・・高熱でセラミック装甲をも突き貫く、縦20p、横40cm。
ビームシールド・・・前輪と後輪に付いているホイールと同じ大きさのビームシールド、バイク乗りの必需品。
イクシードオービット×2・・・車体の真上に自立型の小型兵器を飛ばして連射力のあるビームを飛ばす。
オーバードブースト・・・ブースター一気に点火して一時的に驚異的な速度を出す。
○追加装備
スーパーパック・・・追加ブースターやビームガン、反応弾が装備できる追加パーツ。
チョバムアーマー・・・装甲の中に火薬が仕掛けてあり、それによって攻撃の時などの衝撃を和らげる追加装甲。
アサルトパーツ・・・中距離の武装に長けた追加パーツ。バスターパーツを着けた状態での装着も可能、装甲に対ビームコーティングが施してある。
バスターパーツ・・・遠距離の武装に長けた追加パーツ。アサルトパーツを着けた状態での装着も可能。
その他続々開発中……。
「全部パクリじゃん!!」
橋沢の見事なツッコミ。
その他にもいろいろとツッコミ所があるが無視した様だ。
「量産!?つーか市場で売り出すのか!?(コロ助Mk−Uを含めて)」
「そのつもりだが?ちなみにこれが名刺だ」
と言って何枚かの名刺を差し出す秀信。
「………」
「どうした?」
橋沢は名刺を受け取ってある一点を見たまま固まったままである。
「おい…」
「なんだ?」
「何故俺の名刺がある」
「おいおい、なに言ってんだよ、社長」
「そこだてめぇ!!何故俺が社長なんだ!?」
そう、何故か橋沢が社長、何故か…。
ちなみに名刺のある無いについては微妙に諦めている。
「何だ、不服か?しかし、これは譲れないぞ橋沢社長」
「その社長とか言うのやめろ!!」
「それは無理だぞ社長〜」
半ばお決まりの様に乗ってくる葛島。
「大体、何故俺が社長なんだ!?」
葛島は無視もとい存在を抹殺して進める。
「ふっ、それはな……」
何故か歯をキランと輝かせながら言葉を続ける秀信。
「不祥事などのその他いろいろをすべてお前に押し付けられるからだ!!」
「うらぁぁぁ!!」
グシャ、と音がしそうなくらい見事に顔面に決まる橋沢の右ストレート。問答無用に…。
そして派手に吹っ飛ぶ秀信。
「げほっ…殴ったね!!ヤーさんにもぶたれた事あるのに!!」
何とも無いように顔に傷一つすらないが見た目以上にダメージがある秀信。
「殴って何が悪い!!つうか俺の怒り+αその他いろいろだ!!」
「まあ、その他いろいろは置いといて、何だ?その+αって」
さっきから傍観を決め込んでいた葛島からの問いかけ。
「遅刻だ!!遅刻!!俺たち遅刻してんだろが!!」
そんな橋沢の叫びに対して、秀信は遠い目をしている。
「そういえば…そんなこともあったな…」
それに合わせて葛島も。
「そうだな…だが、あの時俺が足を引っ張らなければ…あいつも一緒に…」
と、過去を悔むような格好の葛島。
「違う!!あいつは俺の作った自爆装置0083式(ハンドガン型)を使っちまったからだ!!」
「それは違う!!あの時俺がちゃんと銃型ライターをあいつに渡せなかったいけなかったんだ!!」
二人はひたすらオーバーアクションな三文芝居を続ける。
そして、横から恒例の暴走を止める橋沢のツッコミ=容赦無く殴る。
だが、その容赦無いツッコミに耐えて抗議の叫びを上げる。
「痛いじゃないか!!これだから地球の俗物は…」
と、これはもちろん秀信。
「そうだぞ!!これから『急展開!?あいつは俺で俺はあいつで、地獄のサイボーグ極楽往生、再開激突編リターンズ』が展開されるところだったんだぞ」
「違う違う、葛島そこは『ついに戦いは最終章!?マスオ、念願の連続保険金殺人!!・我が名はキテレツサイ正義を断つ剣なり!!・ドラえもん、ファイナルフュージョン承認!!の三本にレディーゴー!!』だろ」
「うっさい!!そんな事どうでも良いんじゃ!!」
そんなこんなで学校に三人が着いたのは丁度12時だったそうな。
その時の秀信と葛島はそろって
秀信「視聴覚室をジャックしてもいいかな?」
葛島「いいとも!!」
と言って昼ごはんを持ちながら視聴覚室に突撃して行ったそうな…。
こうして、ある高校生の非常識な日常の1ページが終わったのだった…。