BLUE
ソフトハウス“キャラメルBOX”の処女作である本作「BLUE」
ジャンルは青空恋愛ADVなる“?”モノだが、ハイスピード・ドライヴィングRPGや暗黒ギャルゲーシューティングなどの不思議ジャンルとは比べるまでもない普通の学園モノADV。
これとタメ張るのは口笛と荒野のRPGクラスか?
まあ、そんなことはどうだっていい。
このソフトは黒南風が購入したエロゲー第3号(1号はスタジオおみりすの『SinsAbell』,2号はBasiLの『それは舞い散る桜のように』)
3作とも発売日が近いのは、店まで赴いてレジに持っていく度胸のなかった黒南風は通販を利用したので新製品に目がいったわけで。今考えると、コンシューマオンリーでやってきてPCゲームのメーカーなんぞ光栄ぐらいしか思い浮かばんだのに、何処の馬の骨とも知れんソフトを立て続けに3本、全て定価+送料もろもろ出費したなんて病んでいたとしか言えませんな。
しかし後悔しているのかと聞かれれば答えは否。
『それ散る』は決してコンシューマでは決して味わえなかったであろう抱腹絶倒テキストを、
『SinsAbell』で自分に向かない作風を知る高い教材となった。
上記2作は、非常にクセのある出来でこそあったが、実績のあるメーカーの作品らしく安定したものだった。
ではキャラメルBOXの処女作『BLUE』は?
恥ずかしい話だが当時高校3年、進む道の見えんかった黒南風には眩しい物語だったよ。
ストーリーは、冒頭でいきなり青空の下、ラムネ水を世界に例えるなど行く先を不安にさせるが、怪我で長年続けてきたバスケを諦めざるをえなかった主人公のお話。
この『BLUE』のシナリオの良さのなかに光るのは、重複がほとんどないこと。そりゃ、攻略ルートが途中まで同じというヒロインも存在しますよ。しかしヒロインひとりひとりのシナリオのクオリティは高いので問題なし。
そしてヒロインひとりひとりのシナリオを攻略していくことで明かされる主人公のバスケへの真摯な姿勢、彼の周りにいた人々の気持ちなど興味を失わせない趣向がありがたい。
話をストーリーに戻すと、彼は半年間のリハビリによって日常生活を送るうえでは怪我を意識することはなくなったが、バスケは、もうかつての様な激しいプレイは出来ない。お遊び程度なら出来ないことはないだろう、だが彼は好きなバスケで加減や誤魔化しはしたくない……
そんな主人公がカッコエエのよホンマ! シナリオライターさんも主人公にプレイヤーを裏切らせないあたりよく考えてらっしゃる。
具体的にどのへんがというと、このゲームのシナリオ分岐は選択肢を選ぶ他に場所移動がある。このおかげで目当てのシナリオへのフラグ立てのためにそれ以外のヒロインを冷たくあしらうことをしなくていい。選択肢の二択のどれを選んでも、積極的に接するか否かであって悪意はない。慈愛のキャラを突き通してくれる。
ゆえに黒南風がこのゲームで一番好きなキャラは主人公。公式HPの人気投票では散々だったがオレはコイツに一票。
別に彼は腕っ節がいいわけではない、奇跡を起こすわけでもない、素敵なポエムを披露してくれるわけでもない。
ただ好きなことに一途。
そんな素敵主人公なので、次のシナリオへ進むたびに主人公が好きになっていく。
メモオフ2ndのヘタレ鬼畜主人公、伊波健に爪の垢煎じて飲ませたいぐらい。
それにこのゲームは足の怪我が奇跡で完治したりしない。
物語の中だけでも奇跡があってもいいじゃないかという意見があるかもしれないが、それは学園モノとしての、『BLUE』のストーリーを破綻させるもの意外なにものでもない。
先ほども語ったがこの主人公はカッコイイ。しかしヒーローではない。現実でこんなヤツがいてもおかしない。いないと考えるのはあまりに虚しいというぐらい現実的な良いひとである。
それに、EDを迎えたとき、彼は、バスケとの決別によって立ち上がっていくのではなく、隣で喜びを共有できる人と今までよりいろんなものをずっと好きになっていく。
『BLUE』は秀作ではなかったかもしれない。
事実、システム面で未読スキップが使いづらいところにあり、既読スキップに頼ることが多い。
未読をぶっ飛ばしちまたったことも多々ある。
しかし、処女作でこれだけのレベルのシナリオ。
CGも綺麗でBGMも悪くない。声も付いてるしOP・EDに歌もある。
CGモード、BGM鑑賞モードはもちろん回想モードもあって不便はない。
03年9月26日に発売される次回作「めぐり、ひとひら。」の出来も期待したくなる。
『BLUE』も廉価版が発売されてるので、両作とも是非、未チェックの方はお試しあれ。